園芸会の午後
公民館の庭では、澄江たちが植えた花の苗が小さく根を張り始めていた。代表の女性は水やり当番の表を持ち、来られる日に名前を書いてほしいと伝えた。澄江は自分の予定を確かめ、無理のない一日を選んだ。以前は約束そのものが怖かった。今は当番の日を覚えていられることが嬉しかった。
作業の後、参加者たちは庭の椅子へ座って茶を飲んだ。ある女性が亡くなった夫との思い出を話し、別の人が孫の運動会について笑った。澄江は聞き役になり、ときどき自分の経験を話した。誰の人生にも嬉しいこととつらいことがある。自分だけの事情で会話を止める必要はなかった。
一人の参加者が「怖くないんですか」とそっと尋ねた。澄江は少し考え、怖いと答えた。だが花を育てる時間まで手放したくないとも伝えた。相手はそれ以上質問せず、土の乾き方の話を始めた。澄江はその配慮をありがたく思い、作業の手順を手帳へ書きつけた。
澄江は当番の帰りに、道沿いの花壇へ目を向けた。以前なら花の名前を聞いても次の日には忘れたかもしれない。今日は家へ戻ってからも、代表に教わった名を言えた。
帰り道、代表は澄江に歩く速さを合わせた。若いころは遠足の引率をしていたという代表は、花の育て方以外にも町の変化をよく知っていた。澄江は初めて聞く話に驚き、次は古い写真を見せてほしいと頼んだ。次の約束が自然にできることに、胸が少し熱くなった。
夕方、春菜が帰ると、澄江は作業をした庭の写真を見せた。母が何人かの人と並んで笑っている。春菜は一人ずつ名前を尋ね、母が迷わず答えるのを聞いた。テーブルには新しい水やり当番の表がある。春菜はそれを冷蔵庫へ貼り、二人で夕飯の準備を始めた。




