受付の名簿
病院の受付では、患者名が書かれた紙の扱いについて見直しが進んでいた。外来が混み合う時間には、声に出して呼ぶ名前が廊下へ響く。担当者は番号呼び出しの範囲を広げ、案内の必要な人には個別に声をかけることにした。便利さだけでなく、診療を受けること自体が人目に触れないよう配慮するためだった。
広報担当は、患者情報を求める電話が増えていると報告した。家族だと名乗る相手でも、電話口だけで本人確認ができなければ答えられない。職員は断り方を練習し、威圧的な相手への対応も共有した。治療の異様さに関心が集まるほど、病院へ通う普通の患者が不安を抱くようになっていた。
井沢は病棟の案内表示を確認し、術後の患者が相談室へ行きやすい経路を考えた。心配事を話すために、受付で事情を細かく説明しなければならないのは負担が大きい。看護師長の木場は職員同士の連絡方法を整理し、必要な情報だけを引き継ぐよう求めた。
番号で呼ばれた患者が席を立つと、受付の職員は診察券の取り違えがないか確かめた。小さな確認を一つ増やしただけでも、長い待ち時間の中では注意が要った。
午後、外来の待合室で年配の男性が番号札を見失った。職員が落ち着いて説明すると、男性は礼を言って席へ戻った。周囲の人々も自分の順番を待っている。病院が扱うのは久世の患者だけではない。診療科ごとに異なる事情があり、誰にとっても受付は治療への入口だった。
閉院前、広報担当は不確かな情報の訂正を求める文書を確認した。患者の住所や手術日を推測した書き込みが、また広まっていた。必要なところへ手続きを進め、翌朝の申し送りに添える。待合室の照明が半分落ちても、病院の仕事はまだ終わっていなかった。




