青い鳥の行方
小児病棟で蒼は、折り紙の青い鳥を病室の窓へ並べていた。千尋は見舞いに持ってきた新しい紙を渡し、今日の気分を尋ねた。蒼は笑って頷いたが、何をしたいかと問われると答えに詰まった。言葉を作ろうとしても、途中で音が消えてしまう。千尋は急いで選択肢を並べるのをやめた。
療法士は蒼に絵を描いてもらい、そこから話す練習を続けた。学校の校庭、黄色い帽子、友人の顔。蒼は描いた順番に指を置き、短い音を出す。ほんの一語が通じると本人は嬉しそうだった。担当者は小さな変化を記録し、できなかったことだけではなく、今日伝えられたことも残した。
千尋は相談室で、久世の治療についてもう一度説明を聞いた。病気が治れば息子の言葉は戻る。しかし一年以内の殺害という事実は、これまでと変わらない。担当者は決断を急がせず、本人にどこまで説明するかを年齢に応じて考えようと提案した。母の意思だけで埋められない部分が残っていた。
紙飛行機が床に落ちると、蒼は自分で拾いに行こうとした。千尋が手を伸ばしかけると、看護師はそっと見守った。蒼は屈んで拾い、翼を直してもう一度飛ばした。
病室へ戻ると、蒼が看護師と一緒に紙飛行機を折っていた。鳥を飛ばしたいのだと、身振りで伝えたらしい。千尋は窓を開けて飛ばすことはできないと説明し、廊下の広い場所で試すことにした。蒼は歩幅を合わせて歩き、角を曲がるたびに紙飛行機を大事そうに抱えた。
廊下の端で蒼が飛行機を投げると、思いがけず遠くまで滑った。看護師が拾いに行き、千尋は息子の笑い声を聞いた。言葉が少なくても、ここには確かな喜びがある。その喜びを守りたいと思うほど、千尋には答えが難しくなった。青い紙飛行機は曲がった翼のまま、蒼の手へ戻された。




