折り紙の教室
公民館では、亡くなった女性が教えていた折り紙の会を続けるか話し合いが行われた。世話役の男性は、参加者が顔を合わせる機会を失いたくないと考えていた。一方で、部屋へ入るだけで事件を思い出す人もいる。会議はなかなか結論に至らず、机の真ん中に色紙の束が置かれた。
長年の参加者が、一枚の紙を取って花を折り始めた。角を合わせる順番を教わったのは、亡くなった女性からだった。ほかの人も手を動かし、忘れた部分を互いに尋ねた。完成した花は少し形が違ったが、机へ並べると不思議にまとまって見えた。誰かが小さく笑い、空気が和らいだ。
会を続けることに決めても、新しい講師がすぐに見つかるわけではない。参加者は当面、覚えている折り方を交代で教えることにした。会場の予約や材料の購入も分担する。世話役は名簿を更新し、無理のない範囲で協力してほしいと伝えた。亡くなった人の代わりを一人で務める必要はなかった。
机には折り方を教える手書きの図も残されていた。亡くなった女性が線を引いたもので、端に小さな花の絵がある。参加者は図を複写し、次の会で皆が使えるようにした。
集まりの終わり、遺族の娘が顔を出した。母の道具を使ってほしいと、色紙と折り目のついた見本を持ってきた。娘は泣くことなく、棚へ箱を置いた。参加者たちは礼を言い、急に思い出話を始めたりしなかった。娘が帰ろうとしたとき、昔からの仲間が「また来てね」と声をかけた。
公民館の扉を閉めるころ、窓辺には新しい花が五つ並んでいた。どれも不格好で、茎の長さも違う。それでも世話役は片づけず、次の会までそこへ置くことにした。町の時間は事件以前へ戻らない。だが、教わった手つきは別の人の指に残っていた。




