↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
治せます。ただし、あなたは一年以内に殺されます。――脳外科医・久世朔の診察室  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
51/180

机上の予定表

市役所の田宮は、久世の患者の家族から受けた相談記録を見直した。防犯、生活費、介護、仕事。相談の内容はばらばらだが、制度の担当先が複数に分かれると、家族は何度も同じ説明をすることになる。田宮は部署を横断して使える案内票を作り、窓口職員へ相談した。


同僚は、特別な事情だけに対応する書式を増やすことに慎重だった。別の病気や犯罪被害に悩む家族にも支援が必要だからだ。田宮は頷き、すべての相談者が使える形に直すことを提案した。担当先の連絡先を整理し、本人の同意があれば説明を引き継げるようにする。小さな事務改善でしかないが、窓口へ来る人の負担は減らせる。


田宮の案内票には、電話の受付時間と必要な書類も書き加えられた。相談者が仕事を休んで窓口へ来たのに、書類が足りず帰ることになるのを避けたかった。上司は書式の細かさを指摘したが、田宮が例を示すと納得した。使う人が迷わないことが一番だ。完成した書類は試験的に数か所へ置かれることになり、田宮は印刷した紙を一枚ずつ整えた。


午後、春菜が再び相談に訪れた。母と出かける日が増え、仕事との両立が難しくなっているという。田宮は利用可能な制度を確認し、地域の相談先を紹介した。「何を選んでも不安は残りますね」と春菜が言った。田宮は「それでも、負担を少し減らす方法はあります」と答えた。春菜は資料を受け取り、帰り際に小さく礼を言った。


夕方、田宮は改訂した案内票を上司へ渡した。承認されるまで時間はかかるだろう。それでも机の上に積まれた相談記録を見て、何も変えないままでよいとは思えなかった。庁舎の閉庁を知らせる音楽が流れ、待合室の椅子が一つずつ空になっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。