封をした報告
御園の机には、病院から届いた資料が積まれた。法的に提供できる範囲に限られ、治療の内容も必要最小限だった。捜査一課は過去の事件との照合を続け、同じ術者の手術を受けた人々が被害者になっていることを再確認した。資料が増えても、犯人の名前に近づいた実感はなかった。
榊は被害者の一人が療養中に住んでいた施設を訪ねた。施設長は、手術後に退所した日のことをよく覚えていた。車椅子を必要とした男性が、玄関まで自分で歩いてきた。職員たちは拍手をせず、静かに送り出したという。男性は荷物を受け取り、「自宅の庭を見たい」と話した。記録に残っている最後の希望だった。
御園は新しい資料の端に、被害者が事件前に診察を受けていたかどうかも確認するよう印をつけた。病状の再発は報告されていないが、捜査に必要な事実は一件ごとに確かめる。榊は病院から提供された検査記録を照合し、対象者の症状が確かに消えていたと報告した。治ったことと殺されたことが、同じ紙の両端にある。その間の時間だけが、まだ薄いままだった。
現場の写真を調べても、犯人の意図は浮かばない。被害者の身元や健康状態がどう違っても、心臓に杭を打つ方法だけが変わらなかった。ほかの外傷はない。御園は分類表の余白に、犯行後の遺体の状態を示す項目を追加した。特異な手口の意味を決めつけず、確認できる事実だけで欄を埋めていった。
夜、御園は捜査会議を終えて建物の外へ出た。駅前では花束を抱えた人が待ち合わせをしている。御園は自分の携帯電話に残る家族からの連絡を見て、短く返事を書いた。犯人を捕まえるまで日常を止めるつもりはなかった。むしろ、日常を奪われた人々のために、明日も同じ資料を開く必要があった。




