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治せます。ただし、あなたは一年以内に殺されます。――脳外科医・久世朔の診察室  作者: 竜太郎


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止まった店先

時計店の前には、開店を待っていた客が集まった。修理を頼んだ時計を取りに来た人、いつも正午に店の柱時計を見ていた人、店主へ挨拶するだけの近所の人。警察が立ち入りを制限すると、皆少し離れた場所で事情を尋ね合った。河井の死が分かったあとも、店の看板はそのまま揺れていた。


河井の娘、沙織は遠方から来て、警察の説明を受けた。父が久世の治療を受けて病気を克服したことは知っていた。その後に起きる殺人も聞かされていた。沙織は何度も帰省を提案したが、河井は店を開けていたいと答え続けた。「預かったものを返さなくちゃ」と電話で言ったのが最後の会話だった。


店内の時計は幾つもの時刻を指していた。止まった時計もあれば、電池が生きているものもある。沙織は父の仕事机を見て、修理票が日付順に揃っていることに気づいた。警察の確認が済むまでは触れない。客へ返す方法も今は分からない。それでも預かり品を捨てることはできなかった。


花屋の店主は沙織が幼かったころ、河井の店先で宿題をしていたのを覚えていた。シャッターの前へ立つ娘の横顔が父によく似ていると思っても、今は口にしなかった。代わりに店へ来る客へ事情を説明するのを手伝い、通路に人が溜まりすぎないよう声をかけた。


夕方、隣の花屋の店主が沙織へ温かい茶を渡した。沙織は礼を言い、店を閉めるかどうか尋ねられても答えられなかった。父は最期の日まで修理を続けていた。店を守ることと父の代わりになることは違う。花屋は無理に返事を求めず、自分の店へ戻った。時計店のガラスに映る街灯が一つ点き、閉まった扉の向こうで、壁時計の針だけが静かに進んだ。

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