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治せます。ただし、あなたは一年以内に殺されます。――脳外科医・久世朔の診察室  作者: 竜太郎


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待合室の三人

久世の外来には、別々の理由で三人が来ていた。記憶障害に苦しむ大学生、発作に悩む料理人、長く言葉を失っている児童の母親。それぞれ紹介元の病院が違い、症状の現れ方も違う。受付で並んでいる間、互いに事情を尋ねる者はいなかった。ただ、同じ白い扉を何度も見ていた。


大学生の綾瀬夏歩は、講義で聞いた内容が翌朝になると抜け落ちる。ノートを増やしても埋まらない空白があった。久世は検査を終え、治療が可能であると告げた。夏歩は思わず笑い、それから説明用紙を読んで顔をこわばらせた。隣室では料理人が同じ紙を渡され、別の部屋では児童の母親が看護師に何度も質問していた。


受付職員は診察が終わるたび、待合室に残った忘れ物を確かめた。その日も傘一本と、病院の案内図が残っていた。案内図には相談室の場所へ丸がつけられている。誰が置いたのかは分からず、落とし物の棚へ入れた。廊下には杖をつく人と車椅子を押す人が行き交った。重大な決断を抱えていても、出口を間違えたり、傘を忘れたりすることはある。


夏歩は待合室へ戻って母親に電話した。相手が出ると「治せるって」と言い、しばらく先を続けられなかった。電話越しに母親が喜ぶ声が聞こえた。その声を遮るように、夏歩はもう一つの説明を始めた。母親は最後まで聞き、駅まで迎えに行くと答えた。夏歩は「一人で帰れる」と言ったが、母親は予定を変えなかった。


閉院間際、受付職員は三人の書類をそれぞれ異なる封筒に入れた。予約はまだ確定していない。廊下では掃除機の音が響き、窓の外では帰宅する人々が横断歩道を渡っていた。誰かの選択が別の人の正解になることはない。同じ診察室から出た三人も、帰り道だけは誰とも重ならなかった。

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