↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
治せます。ただし、あなたは一年以内に殺されます。――脳外科医・久世朔の診察室  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
144/240

母と娘の門限

澄江が園芸会から戻ると、娘の春菜が玄関で時計を見ていた。「遅かったね」。澄江は会のあと喫茶店へ寄ったと答え、友人と食べた菓子の話をした。春菜は予定の時刻を越えたことに苛立ったが、母が自分で電車に乗り、会話を楽しんで来たことも嬉しかった。怒る理由と喜ぶ理由が同時にあるのを、どう伝えればよいか分からなかった。


夕食の支度をしながら、春菜は帰宅予定を連絡してほしいと頼んだ。澄江は了承したが、以前のように一人で行動できるようになった以上、すべての外出を許可制にはしたくないと言った。春菜は反論しかけ、台所の水を止めた。母の病気のころは、安心して外出できる日を望んでいた。その日が来た今、自分が行動を制限しようとしている。


二人は食卓へ紙を置き、約束を三つだけ書いた。予定が大きく変われば連絡する。電話に出られなかったときは慌てて責めない。帰宅が遅くなる日は、一緒に夕食を食べる約束を改める。澄江は最後の一行を気に入り、「それなら守れる」と言った。


澄江は買い物袋から小さな鉢を取り出した。園芸会の友人が挿し木から育てたものだという。春菜は窓際の置き場所を探し、日差しの向きを確かめた。母が自分の暮らしを取り戻すほど、家の中には新しいものが増えていく。春菜は鉢の下に敷く皿を洗い、食卓へ戻った。


夜、春菜は玄関に置かれた園芸会の花を見つめた。枝には小さな蕾がついている。澄江は水を替えながら、次の会で苗を交換すると教えた。春菜は作業台の高さを直し、母が使いやすい位置へ置いた。明日のことを全部保証する方法はない。それでも二人は、同じ家で暮らすための約束を自分たちの言葉で作り直せた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。