映らない通路
捜査本部では、事件現場の周辺に残る映像の再確認が続いていた。御園は別の班が整理した時刻表を受け取り、駅と商店の記録を照らし合わせた。画面には通勤客や配達員が映り、誰もが自分の用事を抱えて通り過ぎる。特定の人物へ最初から印を付けてしまえば、関係のない行動まで疑わしく見える。榊は服装ではなく、確認できる時刻を先に並べた。
一つの防犯カメラには、設備の点検で録画されなかった時間があった。警察官の一人が悔しそうに机を叩いたが、御園は止めた。映像の欠けた時間へ、都合のよい犯人像を置くわけにはいかない。隣接する店の記録を求める手続きを進め、欠落として報告書へ残した。空白も、空白であると確定させなければならなかった。
午後には、別の県警から誤った目撃情報の訂正が届いた。申し出た人は時間を一日取り違えていた。榊は謝罪の言葉を電話で受け、記録を修正した。捜査への協力を後悔させないよう、誤りを責める口調は避けた。二度目の連絡をためらえば、次の確かな情報まで届かなくなるかもしれない。
別の係員が録画機器の故障報告を持って来た。機械の交換には予算と時間がかかり、店側も困っていたという。榊は責めるより、点検した日時を確認した。隠れた犯人のために故障したわけではない。町には町の事情があり、設備はそこで働く人の手によって維持されていた。
夕方、御園は地図の上の印を数えず、各事件の資料をファイルへ戻した。被害者の傷は同じで、治療歴にも共通点がある。だが移動の方法も犯行前後の姿も、確かな証拠にはなっていない。廊下の自動販売機から缶茶を買い、榊へ一本渡した。二人は黙って飲んだ。夜勤の班が来るまで、まだ時間があった。




