畳まれた白い紙
図書館の折り紙の会には、亡くなった女性が教えていた子どもたちが集まった。机には色紙と、予備の白いコピー用紙が置かれている。新しく世話を引き継いだ男性は、最初に何を作ろうか迷っていた。講師だった女性はいつも難しいものを先に教えず、できた形を本人の目で確かめさせていたという。
小学四年生の芽衣が「今日は舟がいい」と言った。皆が賛成し、紙を半分に折った。男性が手順を間違えると、芽衣が昨年の手帳を開いて教えた。女性から聞いた説明が、鉛筆で丁寧に書き留められていた。男性は一度頭を下げ、机の端で折り直した。教える側と教わる側が入れ替わることを、誰もおかしいとは思わなかった。
途中、女性の死について話し始めた子がいた。家の大人から聞いた噂が、本当なのか知りたいという。男性は分からないことを分からないと言い、怖い話を無理に続けなくてよいと伝えた。子どもたちは少し黙り、また折り目を指でなぞり始めた。白い紙には折り損じの線が残ったが、芽衣は捨てずに使った。
一つの舟が倒れると、芽衣は慌てて立て直そうとした。紙が柔らかくなり、角が合わない。男性は新しい紙を渡そうとしたが、芽衣はそのままでいいと言った。「先生も、できないときは裏側から折ればいいって」。男性は舟を見つめ、裏から折った部分をそっと押さえた。
会が終わると舟が窓辺に並んだ。図書館員は片づけを手伝い、次回の会場予約を確認した。亡くなった女性の名前を書いた小さな札は、掲示板の端へ移された。男性は帰る前、今日作った白い舟を一つ持ち帰った。家へ着けば晩御飯の準備が待っている。紙の舟を濡らさないよう、鞄の上へそっと載せた。




