屋台の並ぶ通り
秋の催しの朝、商店街には色とりどりの旗が並んだ。三橋は妻と早く店へ来て、弁当の容器を台車へ積んだ。会場までは近いが、温度管理を確かめながら運ぶ必要がある。隣の店主が搬入を手伝い、二人は礼を言った。通りにはまだ客が少なく、準備する人の足音だけが響いていた。
店を開く時刻になると、家族連れが少しずつ集まり始めた。三橋は前もって決めた数だけ料理を並べ、妻が会計を担当した。顔なじみの客が「久しぶりだね」と声をかけ、初めて来た人は味を尋ねた。三橋は一人ずつ応じ、病気のことではなく料理の説明をした。そのやりとりが楽しかった。
昼を過ぎ、弁当が予想より早く売れた。追加で作るか迷ったが、材料と管理の都合を考え、その日は予定どおり終えることにした。常連が残念そうな顔をすると、三橋は次は食堂へ来てほしいと伝えた。無理をして数を増やすより、明日も店を開ける方が大切だった。
途中で箸が足りなくなり、妻は予備の箱を取り出した。三橋は手を止めず、客が待つ間に次の弁当を並べた。二人が事前に確認した小さな準備が役に立った。
隣では小さな子どもが輪投げに挑戦し、景品を取って喜んでいた。三橋は休憩の合間に眺め、昔自分も息子を連れて来たことを思い出した。病気の間はこうした賑わいから遠ざかっていた。今日ここに立てたことが嬉しい。同時に来年も同じ場所に立てるかという不安は、胸の奥から消えなかった。
片づけが終わるころ、妻は売上げを数え、三橋へ結果を見せた。大きな利益ではないが、二人で立てた計画どおりだった。三橋は笑い、余った袋を折り畳んだ。商店街の灯がつき始め、客の声が遠くなる。明日のために食堂の鍵を確かめ、二人は台車を押して帰った。




