黄色い舟
病棟の窓際に、黄色い紙の舟が並んでいた。蒼は一つずつ折っては、窓の外へ向けた。千尋はどこへ行く舟なのか尋ねたが、蒼はうまく答えられない。療法士が日本地図の絵を見せると、蒼は海を指し、次に青い鳥を手に取った。意味が全部分からなくても、本人が何かを考えていることは伝わった。
千尋は絵本から港の写真を選び、蒼に見せた。蒼は船を指し、笑顔になった。父は次の休みに港へ行けるか病棟へ相談することにした。健康状態と移動の負担を確かめなければならないが、病院の外へ出たいという気持ちを大切にしたかった。
午後、担当医は外出の可否について話した。まだ長い時間の外出は難しいが、病院の敷地内で体調を見ながら過ごすことはできるという。父は少し残念そうだったが、まず庭で紙の舟を浮かべる方法を考えた。実際に水を使うかは病棟の規則も確かめる必要がある。千尋は小さな計画を手帳へ書いた。
小さな箱には、蒼が最初に折った青い鳥も一緒に入れられていた。千尋は舟とは別にしておこうか尋ねたが、蒼は首を振った。並べて置きたいという気持ちは、はっきり伝わった。
病室へ戻ると蒼が黄色い舟を増やしていた。隣の子どもも一つ欲しいと言い、蒼は紙を渡した。二人は言葉をほとんど交わさず、折り目を真似しながら作り続けた。千尋はその様子を見て、息子が誰かと一緒に何かをする力を失っていないと感じた。
夕方、父は舟を入れる小さな箱を買ってきた。蒼は箱の蓋へ青い鳥を描き、完成した舟を丁寧に収めた。病気が治るかどうかの答えはまだ出ていない。それでも明日は病院の庭へ行く予定ができた。千尋は箱を棚へ置き、蒼と一緒に窓の外を眺めた。




