空いた机
蒼の小学校では、担任が教室の机の配置を少し変えた。長く使われていない蒼の机は、窓際に置かれたままだった。クラスの子どもから席を変えた方がいいのではと質問され、担任は本人が戻れる方法を皆で考えたいと話した。戻る時期は決まっていないが、学校とのつながりは続けられる。
授業の後、友人たちは蒼へ送る写真を撮った。校庭の木の下で並び、手作りの紙の鳥を一羽ずつ持つ。担任は撮影と送付について保護者へ確認し、公開されない形で渡すことにした。誰かの病気を勝手に広めるわけにはいかない。子どもたちは少し面倒そうに待ちながらも、写真が届くのを楽しみにしていた。
午後、学校の相談員が担任と話した。蒼が戻る日を一つの目標にすると、本人にも家族にも負担になることがある。病気への理解を広げることと、特別扱いしすぎないことをどう両立するか。担任は悩みながら、まず毎日の授業でできることを考えた。
放課後、担任は蒼の席の机を拭いた。特別な印をつけるためではない。毎日の掃除の中で、使われていない机にも同じように手を伸ばしたかった。
写真が病院へ届くと、蒼は一人ひとりの顔を指さした。千尋は名前を読み上げ、蒼が言える音を待った。何人かははっきり呼べず、それでも友人の顔を見て笑う。千尋は写真を病室の壁へ貼り、学校へ礼の連絡をした。担任は返事を受け、教室の子どもたちへ蒼が喜んでいたと伝えた。
夕方、蒼は自分の机へ向かい、青い鳥をもう一羽折った。千尋はそばで学校の連絡帳を整理していた。蒼が戻るまでの道筋はまだ見えない。だが教室には机があり、病室には友人たちの写真がある。二つの場所を結ぶものは、今も途切れずに残っていた。




