面談の記録
小児病棟では、蒼の今後の支援について多職種の面談が行われた。担当医、療法士、相談員、学校との連絡担当が集まり、現在の状態を確認した。蒼が伝えられることは少しずつ増えているが、言葉の障害そのものは大きく変わらない。久世の治療を受けるかどうかとは別に、日常の支援を続ける必要があった。
千尋と夫も同席し、息子が学校からの手紙を喜んでいることを話した。療法士は絵や写真を使った意思表示を勧め、学校側は短い交流の機会を考えたいと返事を寄せた。どの案にも準備が必要で、すぐ実現するものばかりではない。両親はできることから進めようと考えた。
面談の後半、千尋は久世の手術について質問した。担当医は以前の説明を繰り返し、治るという事実と殺害の危険を改めて確認した。子どもにどう説明し、どのように意思を受け止めるかは慎重な判断が必要だった。夫は顔を伏せ、千尋は手元の紙を見つめた。
相談員は面談の最後、両親が今夜休めるか尋ねた。千尋は短く頷いたが、夫は返事に迷った。家庭で支える人にも相談できる場所が必要だと説明され、二人は資料を受け取った。
相談員は両親が互いの考えを聞く時間を持てるよう、別の面談日を提案した。今日ここで結論を出さなくてもよい。千尋は頷き、面談票に次回の予定を書いた。病室へ戻る前、夫は廊下で妻の肩へ手を置いた。二人とも疲れていたが、息子のために話し続けるしかなかった。
病室の蒼は、学校へ送った絵の返事を待っていた。千尋が戻ると、紙に描いた青い鳥を指さして見せた。父はその隣へ腰を下ろし、色鉛筆を一本取った。蒼が何を選ぶか見守りながら、三人は夕方の短い時間を過ごした。手術の答えはまだなくても、今日の絵は完成していった。




