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ふるさと納税で気ままな異世界生活?  作者: 瀬良・B・月季
2章 新都市開発編

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69話 授与式 

報酬で得る予定の屋敷を見たのち、クサツの湯に2日宿泊して、再び温泉を満喫した俺たちは王都に戻り、ついに授与式の日を迎えていた。


王城には多くの人が集まり、城の入り口は多くの馬車が並んでいた。


「うぅ。緊張してきました……」


馬車の中には、これから叙爵し、貴族となることを意識するあまり、緊張で固まりガチガチになったトルネ。


そしてそんなトルネを見かねて声をかける人の姿。


「会頭。フランゼ商会の代表としてもっと胸を張ってください」


そう告げるのはフランゼ商会の傘下に入った、グエル商会の会頭代理バルモアだった。


「ど、努力します」




※  ※  ※




「はぁ~。すごく多くの人が集まってるなぁ」


エクレール公爵様達と一緒に王城に入った俺は、エン爺、ライア、シア、エルと共に謁見の間に先に案内され、顔も知らぬ多くの貴族たちの中に紛れて立っていた。


当然、この国の貴族たちは俺らのことを知るはずもない。


「どうしてこんな場所に子供連れが?」

「見ない顔ですね。新興貴族でしょうか?」

「あの老紳士、なかなかの佇まいですな。平凡な男かと思いましたが、立派な従者を連れておるようだ」


うぅ。なんか注目が集まって来てる。

シアとエルも注目を浴びておどおどし始めてるし、早く式典始めてー!!


俺の心の声が届いたのか、「静粛に!」と玉座の傍に立った老齢の男が場を諫める。

そのまま男は続けた。


「陛下が参られる!皆、拝跪して待機するように」


男がそう告げると、一斉にその場にいた者たちは跪き、片膝を床に付き、空の玉座に向かって頭を下げた。

慌てて俺たちも真似をする。


その後、ディラン陛下が部屋に入り、玉座に座ると、再び宰相らしき男が告げる。


「頭を上げよ」


その後、ディラン陛下も同じ指示を皆に出す。


「頭を上げなさい。皆、楽にするように」


陛下の言葉で、ようやく皆は立ち上がる。

皆が立ち上がり、部屋の中央のカーペットの脇にずらりと立ち並んだのを確認して陛下は宰相に進行を命じた。


「それでは宰相、始めてくれるかい」


「はっ。禁足域に画期的な方法と卓越した指揮により、見事、新たな都市を開発した功労者を称える式典を開催する。皆の者、多大な功績をあげた者たちを称賛する拍手を」


宰相が式典の開催を口にすると、謁見の間の扉が開き、トルネとクラリスが部屋の中央のカーペットを歩いて入ってきた。


あ、トルネさんの歩き方がぎこちないな。

めっちゃ緊張してるなぁ。


そう思って眺めていると、背後から「はぁ」と小さなため息が聞こえてきた。

振り返ると、そこには額に手を当てて困った顔を浮かべるバルモアが居た。


「あ、バルモアさんも来られてたんですね」


「ええ、会頭の付き添いで来たのですが、せっかくの晴れ舞台だというのに、あの緊張具合はいかがなものかと……」


「ふふ。いいじゃないですか。トルネさんらしいですよ。これからこの国最大の商会としてやっていけば、こういった場所に出る機会も増えて慣れていくでしょうし、慣れるまではバルモアさんがサポートしてあげてください」


「……そうですね。会頭の力と才能があれば、フランゼ商会はいずれ世界に名を轟かせるでしょう。それまでは私が徹底的にサポートして見せます」


世界に名が轟く商会か。

うん。

俺もトルネさんなら出来そうな気がする。



バルモアと話しているとトルネとクラリスは玉座の前の階段の手前まで辿り着き、片膝を付いた。

二人が拝跪したのを確認し、宰相が再び式の進行を務める。


「頭を上げよ」


「頭をあげなさい」


二人は陛下の指示で顔を上げる。

そして宰相がクラリスの功績を読み上げ始めた。


「エクレール公爵家長女クラリス=フォン=エクレール殿。貴殿は成人したての身でありながらも、代官として禁足域の新領地に新都市を建設する計画を立て、更に卓越した才能で全体を指揮し短期間で画期的な大都市を作り上げた功績を称える」


「はっ」


「続いてフランゼ商会会頭トルネ殿。貴殿はフランゼ商会の会頭としてクラリス殿に協力して、新都市開発を円滑に進めるために尽力し、秘蔵のアイテムをも惜しげなく使用し、工期を想定より遥かに短縮して見せた功績に加え。悪評続きであったグエル商会を諫め、傘下に組み込み、まとめ上げ、国内の混乱を最小限に食い止めた功績を称える」


「はっ」


「両名とも段上へ。陛下から直々に、褒賞を賜る栄誉を授ける」


ディラン陛下が立ち上がり二人を迎える。

クラリスとトルネは階段を上り陛下の前へ。


「クラリス=フォン=エクレール」


「はい」


クラリスは名前を呼ばれ、一歩前に出る。


「此度の功績を称え、褒賞として男爵の地位を与える。また此度自らの手で開拓を果たした領地を貴家の物とする。今後もファーランド王国のために尽くすように」


ディラン陛下がそう告げて、爵位を示す書状を手渡した。

書状を受け取ったクラリスは礼を述べると、恭しく頭を下げて一歩後ろに下がる。


「ありがたき幸せ。此度の報酬に恥じぬよう、今後も誠心誠意国のために尽力させていただきます」



「続いてフランゼ商会会頭トルネ」


「はい」


次はトルネが名を呼ばれて前に出る。


「此度の功績を称え、褒賞として男爵の地位を与える――」


ディラン陛下がそこまで述べると俺の周囲にいる貴族たちがざわつき始めた。


「商会の会頭ごときに爵位だと?」


「陛下は何を考えて居られるのか?」


「公爵家の少女が叙爵するというだけでも異例だというのに」



「静まれ!!」


ざわつき始めた貴族たちは、宰相の一言で一斉に口をつぐんだ。



「男爵の地位を与えるが、フランゼ商会という大商会を率いる立場にある貴殿に配慮し、領地を持たぬ法衣貴族とする。また、他国との交渉の際には我が国が後ろ盾になることを約束し、今後は王宮への出入りも許可するものとする。そして工期短縮により浮いた工事費を分配し、報奨金としてフランゼ商会には金貨5万枚を供与する」


ディラン陛下が差し出した書状を受け取るトルネの目には、微かに涙が浮かんでいた。


(お父さん、お母さん。見ていますか。フランゼ商会は遂に国が認める商会になりました!)



「そして最後に」


二人への褒賞の受け渡しが完了し、式が完了と思われ、皆が拍手を始めたとき、ディラン陛下が不意にそう告げ、皆は静かに手を止めて続きを傾聴した。


「商人スズヤ。前に」


はぁぁ!?

俺は授与式でなくていいんじゃなかったの!?

何!?何で呼ばれたの!?


行かなきゃダメ?

そう思いつつ、ちらっと後ろにいるバルモアの顔を見る。


バルモアは冷や汗を流しつつ早くいけと言わんばかりに俺の背中を押してきた。


宰相もこちらを見ながら催促するかのように口を開いた。


「スズヤ殿。早く前へ」


嫌々ディラン陛下の前まで、重い足取りで向かう俺。


無名の商人がこの場で呼ばれるなど、前代未聞。

当然周囲にいる参列者たちはざわついていた。


陛下の前にたどり着くと、ディラン陛下は俺の顔を見てにやりと笑った。


わざとか!!

俺が目立つの嫌いなのを見てわざと呼んだのか!?


その後、表情を戻しディラン陛下は口を開いた。


「商人スズヤ」


「はい」


「貴殿は余人に代えがたい発想と知識を用い、此度の新都市計画を打ち立て、フランゼ商会とクラリスと協力し都市開発を成功に導いたこと。更に悪事に手を染めたグエル商会の前会頭ラーサンを捕縛した功績。犯罪に関与していたヘイゼル侯爵を捕縛する証拠を見つけ、罪を決定的にした功績。これらを称え褒賞を与えるものとする」


あああああ!

なんで全部言っちゃうかなぁ!!陛下!!

もうこんなの目立ちすぎるって!!


「スズヤへの褒賞は、新都市開発に多大な貢献をした功績を称え、新都市内の屋敷を一邸下賜。そしてフランゼ商会と同じく、工期短縮で浮いた工事費より分配し金貨5万枚。ラーサン捕縛とヘイゼルの罪を決定的にした報酬として金貨2万枚、更にヘイゼルから没収した財産を規定通り分配し、罪人を捕らえた功績として金貨3万枚。計10万枚の金貨を供与する」


金貨10万枚という膨大な報酬額で場内がざわついた。


そりゃそうだ。

金貨10万枚は日本円で10億だぞ!?

そんな金、個人が持っていい金額じゃないからね!?


あぁ……。

想像以上の報酬額を耳にして胃が痛くなってきた……。


もう所持金を気にする必要は今後無さそうだなぁー。

と現実逃避して放心しつつある俺の耳元で、更に陛下が追い打ちをするかのように囁いてきた。


「そうそう、公爵家からも工事費用が大幅に浮いた分として、依頼報酬で金貨5万枚が出るってよ。よかったね」


更に5億……?

頭がパンクしそうになり、俺は思考することを放棄し、背景に宇宙が浮かぶ猫になりつつあった。



会場は騒然としていたが、宰相が一括し何とか場は静まった。



その後、俺はそそくさとエン爺たちの元へ戻り、盛大な拍手でクラリスとトルネは祝福されながら、俺たちの元に合流。


続いて温泉都市クサツの設立が、ディラン陛下によって宣言され、式典は終了した。






こんな大金貰っても、どうすればいいのか分からない……。

所持金のことを考えるのはもう止めよう……。


ここまでお読みいただきありがとうございます!

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