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ふるさと納税で気ままな異世界生活?  作者: 瀬良・B・月季
2章 新都市開発編

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67話 報酬の屋敷 少女たちの決断

会食から戻り、エクレール公爵邸の中庭に出したトレーラーハウスでいつものように泊る俺たち。


翌朝、エクレール公爵邸へ授与式の日取りが決まったという報告が入った。

俺たちはクラリスに呼ばれ部屋へ向かいに日取りを確認した。


「――というわけで授与式は7日後だそうです」


「7日後か。暫く開くんですね」


「式典ですし、色々と準備がありますからね。スズヤ様たちはそれまでどう過ごす予定ですか?」


「んー。特に決めてないけど、そんなに空くなら温泉に行こうかな」


「まぁ♪でしたらついでにスズヤ様の屋敷を見に行きませんか。きっと気に入っていただけると思います♪」


なんだろう。

クラリス嬢が気合を入れて作った屋敷ってなると、とんでもない豪邸とかになってそうで逆に不安。


まぁでも、屋敷については考えがあるしいいかな。


その後、クラリスとも話し合って、どうせ行くならということで、トルネも誘って皆で向かうことになった。




温泉都市へ向かう道中、馬車に揺られつつのんびり景色を眺めているとクラリスがこんなことを言い始めた。


「あっ!そうでした。授与式では正式に温泉都市の公開についても発表されることになったので、都市の名前を決めたいんですが、スズヤ様、都市名を決めていただけませんか?」


唐突な提案を聞いて俺は慌てて聞き返す。


「はぁっ!?待ってくださいよ!そこは代官の――いや領主になるクラリス嬢が決めるべきでは!?」


「そもそもこの都市の構想と温泉を売りにすることを提案し、施設の細部に至るまで監修されたのはスズヤ様です。何もおかしなことはありませんよ」


「いやいや……流石に都市の名を決定するとか荷が重すぎて……」


こうなったらクラリスは引き下がりそうにないのは、これまで付き合ってきて何となく理解はしている。

でも、更生にも名前が残る都市の名前を俺が決めるってのは流石にどうかと思うよ。


「そうですか……。では残念ですが私が決めさせていただきます」


クラリスは若干気を落とした様子で、そう告げた。

その様子を見て少しだけ心が痛んだが、身に余る大役を回避出来たことに安堵する俺。


「では、温泉都市の名前は温泉都市スズヤでけって――」


安堵したのもつかの間、クラリスがとんでもないことを言い始めたので、俺は直ぐにクラリスの口を手で塞いだ。


「前言撤回します!私に決めさせてください!!」


俺がそう告げるとクラリスはニコリと笑みを浮かべた。

あっ!この顔は!俺ならこういえば代わりに名付けするって確信してたな!?

嵌められた!!


「いい名前をお願いしますね♪」


はい……。

クラリス嬢には敵わないなぁ。


温泉の名前か。

湯畑も作ったし、源泉かけ流しの温泉だし。

そうなると名前は一つしか浮かばない。


「決めました。温泉都市クサツ。温泉施設の名はクサツの湯でいかがですか?」


すみません。

ネーミングセンスないんです。

異世界ならバレないし大丈夫だよね?


「温泉都市クサツ……。それにクサツの湯ですか」


おっと、クラリス嬢がいつになく真剣な顔をしている。

この世界の固有名詞と比べると、流石に和名は流石に変だったかな?

せめて漢字を英語にしてグラスポート?

いやポートは変だからグラスハーバー?


俺が代案を考えていると、クラリスは納得したような様子を浮かべた。


「うん。いいと思います。ファーランド王国にはない独特な響きの都市名です。一度聞いたら耳に残るでしょうし、温泉都市クサツを広めるには打って付けかも知れません。目玉である温泉施設をクサツの湯という名前にするのも名案かと。その名から、都市の看板施設であるとすぐにわかりますしね」


俺は湯畑のある都市名と、よくある温泉施設の命名を真似してみただけだけど、クラリス嬢は納得してくれたみたいで良かった。


「トルネさんはどう思われますか?」


クラリスはトルネにも確認を煽る。


「いいと思います!温泉都市クサツ!その名からは、どことなく情緒あふれる雰囲気がありますし!クサツの湯という施設名も、シンプルかつ分かりやすいのが最高ですね!温泉施設を目当てで尋ねてくる人が迷う心配もありませんし!」


「ではこれで決まりですね♪都市の名は『温泉都市クサツ』、温泉施設の名は『クサツの湯』♪」





その後、いつも通り2日かけて温泉都市クサツに到着した俺たち。


トルネは到着するなり、「クサツの湯の営業状況を確認してきます!後ほど合流しますね!」と言って飛んでいってしまった。


開店直後なのに、従業員に任せて数日空けていた訳だし、商会の会頭としては気になって仕方ないか。


俺たちとクラリスはクサツの湯の左隣にある、大きな屋敷へと向かった。


うん。でかい。

流石に王都のエクレール公爵邸よりは小さいけれど、クサツの湯の右に建つ領主邸とほどんど変わらぬ大きさ。

いちおう領主邸のほうが一回り大きいそうだが、どっちもデカイとしか思えない。


「ほ~。ほんとに大きいなぁ」


俺がそう言って屋敷を見上げていると、シアとライアは隣でそわそわし始めている。

探索してみたいのかな?

二人の様子にクラリスも気が付いたらしく、声をかけた。


「鍵もここにありますし、中に入ってみますか?」


「いいの!?」


「やった♪」


シアとエルは目を輝かせてクラリスを見つめていた。


「いいのか?まだ正式には俺の屋敷じゃないんじゃ?」


「確かにそうですが、この屋敷は都市を管理している代官が管理を任されている状態です。つまり管理者の私は譲渡される前でも自由に立ち入る権限を持っているのですよ♪」


そういうことなら、自由に内見させてもらおうかな。


シアとエルは中に入ると早速屋敷中を駆け回り始めた。

俺は流石に注意しようとしたが、クラリスは「構いませんよ♪」というので、二人の気が済むまで探検させることにした。


シアとエルがあちこち駆け回っている間に、俺とエン爺、ライアの3人は主要な部屋を案内してもらった。

広い食堂、キッチン、客間、そしてなんと大浴場。

大浴場にはクサツの湯と同じく源泉が流れるようにしてあるのだという。


なん、だと?

自宅で源泉かけ流しだと……?

素晴らしい!!


その後も軽く案内してもらったが、部屋数は30以上あるらしく、屋敷をもらったところで管理できる気がまるでしない。



シアとエルが探索を終えてロビーに戻ってきたのでトルネを待つ間に、俺は二人に大事な話をすることにした。


「シア。エル。大事な話があるんだ」


急に真面目な雰囲気で話しかけた俺を見て、二人は少し不安な様子を浮かべつつ首を傾げた。


「「?」」


「エン爺とライア、龍の牙のみんなには既に話してあるんだけど、俺はトルネさんとクラリス嬢の爵位授与を見届けたらこの国を出ようと思ってる」


シアもエル一瞬で顔をこわばらせた。


「なんで!?」


「わ、わたしもいく!」


「まてまて、落ち着いて聞いてほしい。俺は付いてくるかここに残るか、ちゃんと自分で考えて二人に決めて欲しいと思ってる。もちろん残るにしてもついてくるにしても自分で決めたなら俺は受け入れるつもりだよ。そして残る選択をした場合は龍の牙には二人を気にかけてもらえるように既に頼んである」


急に俺がそういったので、シアもエルも決めかねて困り顔を浮かべている。


無理もないよな。

これまで保護者として俺らがずっと傍に居たんだ。

幼い二人にとっては離れるのは寂しいよな。

俺も寂しいよ!!ほんとは残ってほしくないし、連れていきたい!!


でも二人の為を思えば、庇護欲だけ俺の旅に連れていくのはエゴだと思ったし、幼い二人には今しばらくの間は地に足を付けて生活をしてほしい。

体力的にも二人はまだ長旅に耐えられるとは思えない。


俺たちと一緒に旅をしていたら、二人が望む戦闘の訓練とか、魔法を教えたりは出来ないからね。

恐らく幼少期は奴隷として辛い日々を過ごしてきた二人には。



「スズヤは私たちを絶対捨てない……?」


シアが泣きそうな顔でそう聞いて来た。


「もし残る選択をしても、絶対に捨てない。もしここに残って龍の牙から訓練を受け続けたいとシアが決めたのなら俺はその願いは受け入れるけど、捨てるつもりは決してないし、必ずまた帰ってくるって約束する。この屋敷は俺の家になるわけだしね。そのときは帰る家を守っててもらおうかな。トランシーバーもちゃんと持って行くからいつでも連絡は取れるようにしておくつもりだよ」


「エン爺とライアちゃんも、ちゃんと帰ってくる?」


エルはエン爺とライアとも会えなくなるかもしれないのが不安だったらしい。


「うむ。ここがスズヤ殿の家であるというなら、従魔の我の家でもある。必ず帰って来ようぞ」


「ん。ライアも帰ってくる」



「ついてくることを選んでも決して見捨てないし、残ることを決めても定期的に戻ってくることを約束する」


シアとエルは涙をぐっと堪えて顔を見合わせて頷いた。


「私は残ってアレクに戦いを教えてもらいたい。そしてもっともっと強くなって、アレクより強くなって、一人前になって、いつか絶対にスズヤの旅についていけるようになる!!」


「私もマリアさんやクラリス様に、魔法をもっといっぱい教えてもらって勉強したい。いつかスズヤさんやエン爺、ライアちゃんを助けられるくらいの魔法を使えるようになったら、一緒に行く!!それまではいっぱい練習と勉強を頑張る!!」


二人ともそう話す目は、既に自らの進む未来を見据えているかのように輝いていた。

その目を見た俺は二人の決断を尊重することを決めた。


「……わかった。二人の選択を俺は受け入れるよ。でも……。ううっ!寂しいぃぃぃ!ほんとは意地でも連れていきたいいぃぃぃ」


俺は二人を抱き寄せると、我慢の限界に達し涙が溢れてきた。


「わっ!私も……。うえぇぇぇん」


「私も……。うぅぅ」


抱き合って泣く俺たちを見て、クラリスは目に浮かべていた涙を指で拭い、笑みを浮かべた。


「ふふ♪まったくもう……。話はまとまったようですね♪私も微力ながら協力させていただきます」


「まったく、我が主はしまらぬのぅ……。ふふっ」


「みんな、よし、よし」


ライアは泣きながら抱き合う俺たちの頭をポンポンと撫でていった。



その時、屋敷の扉がカタンと開いた。






所持金 金貨35枚 銀貨7枚 黄銅貨7枚 青銅貨3枚


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