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ふるさと納税で気ままな異世界生活?  作者: 瀬良・B・月季
2章 新都市開発編

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63話 ヘイゼルの執念 神との邂逅

フランゼ商会がグエル商会を傘下に加えることが決定し、一同は祝宴を上げた。


そして宴も落ち着き始めた頃、エクレール公爵口を開く。


「スズヤ殿。急な話で申し訳ないのだけれど、王宮に色々と報告することが出来たので、エン爺さんに頼んで王都へ送ってもらうことは出来るかな?」


王宮へ報告?

まぁフランゼ商会がグエル商会を傘下になんて国内の大企業が大企業を傘下に取り入れたってことだし、一大事なのか?

それとも昨日話してたライナー殿下のあれか……?

どっちも大事だろうし、エクレール公爵様は他にも色々動いていそうだし、俺の知ったことでもないか。

王家とか俺とは無縁の話だし。

政治に関わるのはごめんだしね。


「それは構いませんよ。エン爺。聞いてた?」


「うむ。王都まで飛べばよいのであろう?」


「助かるよ」


その後、皆に確認すると、全員一緒に王都に戻ることで決定した。

トルネも前回はエン爺にのって飛ぶのを怖がって拒否していたけれど、暫く王都へ戻っていないので一度帰って店の様子を確認したいというので、今回は勇気を出して空を飛ぶ決断をした。


都市を少し離れた森の中へ移動し、元の姿に戻ったエン爺の背に全員で乗り込む。

温泉でサウナと冷水を行き来するのにハマったらしく、珍しく疲れ切って眠そうにしているライアに頼んで、全員が落ちないようにツタで固定してもらい、いざ王都へ。


「ライア。いつものように降りるときには周囲に人が居ないか警戒を――って疲れて寝ちゃったか」


「ツタで固定してくれただけで十分だよ。我が家の中庭に降りれば問題ないよ。うちの者たちへの口止めは必要だろうけれどね。それに最悪、目撃されたとしてもこの闇夜であればどうとでも言い訳は立つからね」


公爵様がそういうのであれば、信じよう。

気持ちよさそうに眠るライアを無理やり起こすのも可哀そうだしね。






※  ※  ※




スズヤたちがエン爺の背に乗り、王都のエクレール公爵邸を目指している頃。


ヘイゼル侯爵は一人、貴族街を歩いていた。


「くそっ!何故何時まで経ってもエクレール公爵家の奴らは誰も戻ってこないのだ!!」


スズヤという商人も暫く王都では見かけられていないそうだし、もしかすると国外へ?


そんなことを考えつつ、ヘイゼル侯爵は今日もエクレール公爵家へ向かって歩いていく。

門の前までたどり着くと、ヘイゼル侯爵の顔を見ただけで門兵は嫌な顔を示す。

ここ最近、家の者が不在だと言っているにも関わらず、日に何度も訪ねてくる者の顔を見ればそういう反応を示して当然だろう。


「はぁ……。また来られたのですか?何度来ようと誰も帰られておりませんので対応できかねますよ?」


門兵の一人がめんどくさそうにそう告げた。

そしてヘイゼル侯爵は門兵の態度に苛立ちを覚え、掴みかかろうとしたその時。

ヘイゼル侯爵の視界の端に巨大な影が映り込んだ。


エクレール公爵邸の上空で巨大な影が夜空を横切り、まさしく獄炎龍がクレール邸の中庭へと降り立つのを、彼は確かにその目で見たのだった。


獄炎龍……!

やはりつながっていた!!


「おい!あれを見ろ!獄炎龍が――」


「獄炎龍?そんなバカな話があるものか!!」


「いいから見ろ!!ほら!!」


ヘイゼル侯爵が声を荒げ、屋敷のほうを必死で指さし門兵の二人に見ろと訴えかける。

その直後、獄炎龍はエクレール公爵邸の中庭に降りて姿が見えなくなった。


門兵がヘイゼル侯爵の訴えかけに応じ、振り返った時には獄炎龍の姿など影も形もそこには無かった。


前を向き直った門兵たちはヘイゼル侯爵を見て鼻で笑った。


「はっ。侯爵様でも虚言を吐くんですね。あまりしつこいようであれば衛兵に突き出しますよ!!」


「ふ、ふざけるな!!俺は確かにこの目で――」


「あー、はいはい。わかりました。ですから今日はもう遅いのでお引き取りください」


「おい!まて!!」


「お前、ちょっと衛兵を呼んで来いよ。妄想と虚言壁、信じたくはないが、侯爵様は危ない薬に手を出されているのかもしれない」


「なっ!?誰が薬など使うものか!!もういい!自分の足で歩いて帰るわ!!」


糞門兵どもめ!!

まぁいい。

ついに、ついに私は目撃したのだ!!

やはりエクレール公爵家は獄炎龍と繋がりがあったのだ!!


ははははは!

エクレール公爵め!!

これで、ついに私の勝利だ!!!




※  ※  ※




エクレール公爵邸に戻った後、俺はいつものように中庭の一角を借りてトレーラーハウスを設置して休むことにした。


エクレール公爵様とディル様は、明日の朝一で出立するためにヴァンスさんに馬車の用意などの指示を出している。


龍の牙のは護衛としての仕事を万全にこなすために不在時の警備状況などを警備の兵たちに確認してくると言って屋敷を出ていった。


「さて。俺たちは公爵家の役に立ちそうなことは特にないしシアとエル、ライアがそろそろ限界みたいだし先に休ませてもらうとするか」


「そうだな」


俺はライアを、エン爺はシアとエルを、二人で寝かけてしまった3人を抱えて運びトレーラーハウスのベッドに寝かせて、俺も隣のベッドルームでベッドに横になった。


ふぅ。温泉都市ではいろんなことがあったなぁ。

都市開発も完了したし、ボードゲーム大会も大盛況で終わった。

そして温泉施設の開業も見届けたから公爵家から引き受けていた俺の仕事は完了かな。


今日はゆっくり寝るとしよう……。




※  ※  ※




「―くーん。すずやくーん」


俺をよく声が聞こえた気がして目が覚めた。

それにしても俺を君付けで呼ぶ人なんて、この世界にいたっけかな。


俺を呼んでいる人の姿を確認するために、ゆっくりと目を開ける。

すると目の前には知らない少年が立っていた。

誰?


周囲を見渡してみると、大量の娯楽品が溢れかえっていた。

何やら大きな倉庫のような部屋で眠っていたらしい。


「おわっ!?どこだここ!?君は誰!?」


「僕はレクティオ。娯楽の神レクティだよっ。スズヤ君がいろいろ興味深いことをしていたから直接話がしてみたくなっちゃって、ここに呼んじゃった」


神!?

呼んだってなに?

俺神様のところに今度は召喚されちゃったのか……?


「君ボードゲームや温泉って娯楽を作り出して一挙に布教する活動までしてるじゃない?すごくいいよね!この世界は魔物もいるし、戦争や争いが絶えないから生活の安定を優先するばかりで、なかなか新しい娯楽が生まれ辛くてね。ここでなら存分に話も聞けるし、君は特殊な身の上みたいだからそこも気になってね」


それで俺に娯楽を求めたのか?

そして俺の素性も把握済みか……。


「あの、それはわかりましたけど、元の場所に戻れるんですか?」


「それは元の世界ってことかな?それともさっきまで居た世界かな?前者であれば限りなく不可能に近い可能で、後者なら僕との話が終わったら戻してあげるよ」


俺はそれを聞いてホッとした。

元の世界へも完全に戻る方法がないわけではないのか。


「それで、直接話がしたいというのは?」


「そうそう!スズヤ君!君は異世界の娯楽品も出せるスキルを持っているよね?」


そう言って俺が【ふるさと納税】で購入したと思われるボードゲーム3種を、娯楽の神は宙へふわふわと浮かせて見せる。

明らかにこちらの世界の物より品質がいいから、そりゃ娯楽の神って言うくらいだし気が付くか。


「何でもだせるというわけではありません。俺のスキルのリストに並んでいる品物限定になりますが、異世界の物を金銭を対価に購入することなら可能です」


「うんうん!素晴らしい!他にも出せるのかい?」


「今ここで、ですか?」


「うん。何も対価無しにとは言わないよ」


いや、神から対価とか恐れ多すぎていりませんけど!?

魔道具とかある世界だし、一旦どんな人知を超えた対価を渡されるかわかったものじゃないからなぁ。

ちゃんと断っておこう。


「対価は特に必要ありません。それでは少々お待ちください」


俺は【ふるさと納税】のリストを開いた。

直ぐに思いつく娯楽品と言えばやはりあれだな。


プラスチックや良質な紙製なのでファーランド王国では出すのを躊躇っていたトランプと花札のセットを迷わず購入。

そして花札はこいこい、花合わせ、おいちょかぶくらいしか俺もルールを知らないからともかく、トランプは遊び方が多すぎるので神に一つ一つ説明しながら教えていく。


「ふむふむ。このトランプという娯楽商品はすごいね!1つの商品でここまで様々な遊び方に使える物を僕はこれまで見たことが無いよっ。んじゃ対価の報酬だねっ」


え?はぁっ!?俺要らないっていったよね!?


神は指先を光らせると「えいっ」といって俺に小さな光の玉を飛ばした。

するとその光は俺の体に吸い込まれて行って消えてしまった。


へ?終わり?

特に体に異常も感じないし、ほんとに大したお返しじゃなかったのかな?


「ささやかだけど娯楽の神の加護を与えておいたよ。これからもこの世界でもっと楽しい娯楽を広めてくれると嬉しいよ。おっと、そろそろ朝になりそうだね。じゃあまたねっ」


「あっ!ちょっと!まだ聞きたいことが――」




※  ※  ※




ハッ!として俺は慌てて目を覚ました。


「夢……か?」


先ほどまで神と邂逅していたと思っていたけれど、周囲を見渡すと見慣れたトレーラーハウスのベッドの上だった。


まさかね。

神なんて流石に人が簡単に会える存在のはずが――

念のため自分の得ている能力を鑑定してみる。



スズヤミナト 35歳 



所持スキル

【ふるさと納税】

【鑑定・改】


隠匿スキル

【魔剤耐性】

【睡眠耐性】

【気絶耐性】

【毒耐性】

【精神耐性】


加護

【娯楽の神の加護】



……。


俺は見覚えのない加護という項目を目の当たりにして頭を抱えた。


夢じゃなかった……。






所持金 金貨45枚 銀貨2枚 黄銅貨7枚 青銅貨3枚



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