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ふるさと納税で気ままな異世界生活?  作者: 瀬良・B・月季
2章 新都市開発編

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60話 ボードゲーム大会2

「――それでは、対戦を開始してください」


エクレール公爵によるボードゲーム大会開催の宣言も終わり、大会参加者たち一斉に動き出した。


「へぇ。盛り上がってるね」


「ええ!ボードゲームは凄まじい人気ですからね!」


え?そうなの?

そう言えばボードゲームの開発者として無理やり登録に連行されたけど、売り上げとか聞いてなかったや。


「実際、どの程度売れてるの?」


「そうですね。一般用の売り上げ総数は初週で大台を超え、高級品の方も売上総数がそろそろ大台を超えそうな今もなお、3種のボードゲームの需要は増え続けまして。販路をあまり持たないフランゼ商会ですが、その狭い範囲ですら生産が追い付かなかったので増産すべく木工職人を5倍雇って生産し始めたくらいには売れてますよ!!」


なにそれこわい!大台ってなに!?1万?10万!?

大会参加者だけで2000人弱って考えると……。

なんかとんでもない数売れてそうな。


「ちなみに、フランゼ商会でプールしてもらってた俺の取り分ってどうなってるの……?」


「えっと……」


トルネはズボンのポケットからメモ帳を取り出して調べ始めた。

そして確認を終えて口を開く。


「スズヤさんの取り分は5日前に受けた定期報告の段階で金貨1083枚と銀貨8枚ですね!」


金貨1000枚!?

ボードゲーム開発の取り分だけで一千万越え!?

うぅ、向こうの世界で知ってただけで、本当は俺が開発したわけじゃないのにそんな大金貰うのは流石に気まずい……。


「スズヤさん?どうしましたか?直ぐに欲しければ用意するように伝えておきましょうか?」


やめて。

罪悪感で胸がぎゅってなるから。


「いや、そのままフランゼ商会のプール金としておいて……」


「それは構いませんけど……。はっ!なるほど!」


なにが!?

何、勝手に理解しましたって顔してるの!?


「つまりそう言うことですね!今後もスズヤさんのアイデアで新商品を作るたびに我が商会で試作品を作ってほしいと!だから直ぐに動かせるお金としてプール金を!!」


ちがうちがう!!

俺はこれ以上利権に関わりたくないの!

他人が作った物を異世界で開発者を謡って登録するってだけで胃が痛くなっちゃうから!


「違うよ!?確かに温泉セットは試作してほしいなって思っ――違う!今の無し!忘れて!!」


焦って否定するあまり、そこまで口走ったところでトルネさんの目が輝いているのに気が付いた。


「忘れません!無理です!!スズヤさん!!温泉セットって何ですか!!間違いなく温泉で使えるアイテムですよね!?それは女性陣の皆さんの髪がサラサラになったのと、いい香りがしていたのとも絶対関係ありますよね!!」


あああああ!!

一番聞かれちゃまずい人の前で口が滑ったああ!!


その後、根掘り葉掘り聞かれることとなり、トルネの温泉セット追及の尋問が終わった頃には各種ボードゲームの予選が終わりつつあった。




※  ※  ※




ライナーは壇上でイラついていた。


くそっ!どうして何時まで経ってもクラリスは席に来ないんだ!

壇上でディルと二人きりなんて何の罰ゲームだ!!


そんなことを考えていると隣の席に誰かがやってくるのに気が付いた。


「やっときたか!クラ――」


しかし、その席に着いたのはクラリスではなくエクレール公爵だった。


なにいい!?

ディルは既に領地をもつ貴族だから、まだ皇太子でなくただの第二王子である私の上座に座るのは理解できる!!

だがどうして公爵の叔父上が俺の下座に!?

そこはどう考えてもクラリスの席ではないのか!?


「ああ、席については気にしないでくれていいよ。代官のクラリスの案でね。この温泉都市では貴賤上下を気にすることなく皆が平等に楽しく過ごせる都市を目指すということらしくてね。だから公爵である私が一番下座でも関係ないのさ」


なんだそれは!?

俺はそんな話は聞いてない!!

つまり俺は大会が終わるまでこの二人に挟まれて過ごすことになるのか……!?


これからのことを考え気がめいりつつ、予選が進み人が減っていく広場を呆然と眺めていると、参加者としてボードゲームに興じているクラリスの姿が目に入った。


そしてライナーの視線に気が付いたのかクラリスはニッコリと笑みを浮かべて軽く手を振った。


そこで俺がようやく気が付いた。

クラリスに嵌められたのだと……。


クラリスはその後、ボードゲームで勝利したのか笑みを浮かべ、例のスズヤとかいう商人の元へ駆け寄りハイタッチをしている。

しかもその直後、明らかにこちらを意識して微笑みかけてきた。


くそっ!あのスズヤとかいう商人!クラリスに馴れ馴れしいぞ!!

クラリスもどうしてそんな平民と親しげに!!


そんな苛立ちを浮かべていると、隣に座っていたエクレール公爵がクラリスたちの様子を見て口を開いた。


「うん。クラリスとスズヤ殿は意外とお似合いなのかもしれないね」


……は?

叔父上は何を言ってるんだ?

平民の商人とクラリスがお似合いだと?

それでも公爵家か!?


「ディルはどう思うかい?」


あからさまに憤りを見せるライナーの葛藤に気づかぬふりをしてエクレール公爵は平然とディルに意見を求めた。


「歳は離れておりますが、二人で密に打ち合わせをし、これほどの都市をたったひと月足らずで完成させ、更にこのような大規模な娯楽の大会を催すほどです。これ以上に息の合った相手はなかなか居ないでしょうね。どう思われますか?ライナー殿下?」


ディルは敢えてライナーに意見を求めた。


俺にその話を振るなあああ!!

ディルも叔父上も俺がクラリスに気があることは知っているはずなのに!!

敢えて聞いてくるのか!?

この腹黒親子めええ!!

だからこの二人は苦手なのだ!!


その後も公爵親子は両隣でライナーを挟み込んで、スズヤを隣で落ちあげ続けた。


「スズヤ殿はなかなかの才人でボードゲーム3種を全て一人で開発されたそうですよ」


「何でも料理の腕も超一流だとか」


「温泉施設の計画も全てスズヤ殿の立案だそうです。素晴らしい知識量ですよね」


「是非とも縁を結びたい相手ですよね」


延々とスズヤに関する語りを聞かされて続け、ライナーは消耗しきっていた。



何故俺がこんな目に……。

確かに父上もスズヤを気に掛けていたようだが、どう見てもただの覇気のない平民ではないか。


壇上から見下ろした先にいるスズヤは、老人と酒を飲みつつだらけ切った顔で参加者たちの方を眺めていた。

そんなスズヤに向けて、またもや笑顔で手を振るクラリスの姿がライナーの目に入った。


あんな男にそんな価値が在るはずがない!!

クラリスにふさわしいのは王族である俺のはずだ!!


悔しさに身をきしませるライナー。

そんなライナーのことを知ってか知らずか、エクレール公爵は口を開いた。


「そういえば、スズヤ殿といえば。フランゼ商会を襲ったグエル商会の会頭とその他の者たちを拘束して傭兵ギルドまで連行したといったこともありましたね」


グエル商会の名を聞いてライナーはピクリと身を震わせる。

その様子を見てディルも重ねて畳みかける。


「ええ、その際、グエル商会の会頭ラーサンは捕縛され犯罪奴隷に落ち。ラーサンと関与し悪事を働いていた者達は次々と投獄されて行っているらしいですね」


ラーサンと関与した者が次々と投獄されていると聞いて再びピクリと身を震わせるライナー。

止めとばかりに追い打ちをかけるエクレール公爵。


「ラーサンとの関りが決定的となったヘイゼル侯爵へも捜査の手が伸びるのは時間の問題らしいですね。なんでもヘイゼル侯爵はどこかから多額の資金を得ていたとの情報も上がっているそうですよ」


「悪徳貴族に資金提供していたとなると、援助していた者も投獄は免れないかもしれませんね。殿下?どうされましたか?顔色が悪いようですが?」


ディルが顔面蒼白となったライナーに心配そうにそう問いかける。

その直後、エクレール公爵はライナーが恐れている核心を突いた。


「きっと、殿下は悪徳貴族が蔓延っていたこの国を愁いているんだよ。ですがご安心ください。ヘイゼル侯爵の捕縛も間近です。彼が囚われれば、彼自身の口から繋がりのあった全ての者たちが徹底的に洗いだされることでしょう。殿下の心配なさることは何もありませんとも。王族でもある殿下は、まさかヘイゼル侯爵と癒着していたなんてことはありえませんしね」


「あ、ああ……。もちろんだ」


「父上、殿下に対して不敬ですよ」


「ああ、失礼。聡明な殿下に至ってそんなことはあり得ないでしょうね。悪事を働いている貴族と繋がりを持っていたことが露見すれば、王族と言えど王位継承権は剥奪のうえ投獄は必至。そのような愚かなことをライナー殿下がなさるはずがないからね」


この一言が決定打となり、ライナーは完全に放心状態となってしまった。



公爵家が主催する公式イベントの賓客として呼ばれ、王家の者として出席した以上、逃げることも叶わなくなったライナーは、一日中公爵家の二人に挟まれ、精神的に完全に追い詰められてしまったのである。


大会終了後、ライナーは一言も発することなく。

護衛を連れて静かに王都へと帰っていった。


その後、ライナーは部屋に引きこもるようになり。

ライナーの姿を見る者はほとんどいなくなったのだった。





※  ※  ※




無事にボードゲーム大会は終了し、各種ボードゲームの優勝者はエクレール公爵に称えられ、3位まではエクレール公爵から直々に商品を受け取った。


身内で3位以内に入った者はいなかったが、エルとクラリスは決勝トーナメントまで進出し、初戦で運悪く当たった二人。

軍配はクラリスの方に傾いた。

しかしそのクラリスも次の試合で運悪く優勝者と当たり、惜しくもベストエイトで大会は終了した。

ライアとシアは予選でいいところまでは言ったが、最後に負けて木札を奪われてしまい、残念ながら決勝トーナメント進出とはならなかった。


「みんな惜しかったね!とりあえず頑張った皆を称えてBBQ大会を開催しますかー!!」


その後、温泉施設の隣に建つ、この都市で一番大きな屋敷の庭でBBQを開催する運びとなった。

この屋敷は代官となるクラリスの屋敷になるらしい。


BBQにはいつものメンバーだけでなく、エクレール公爵様とディル様も参加してもらった。

流石に呼ばないわけにはいかないからね。

トルネは温泉旅館が明日開業するので今日は最終チェックに向かうとのことでBBQを辞退された。

頑張り過ぎないでね。



BBQを楽しんでいると公爵家の3人の話声が聞こえてきた。

チラッと目をやるとエクレール公爵とクラリスが若干怖い笑みを浮かべていた。


「クラリスから手紙が来た時には何事かと思っていたけど、上手くいったようだね」


「ええ♪父上も兄上も協力ありがとうございました。それでどうでしたか?」


「完全に参っていたようだね。スズヤ殿の案は流石だね」


えっ!?なにが!?

俺の居ないところで俺を勝手に持ち上げるのは止めてもらっていいですか?


「ええ♪彼のしつこいお誘いにうんざりしていることを相談した際に『どうせ誘いを断れないのならば、こちらから大会に賓客と招待して王家も来る大会として宣伝に使いましょう。そして賓客として招待してクラリス嬢は大会に参加していれば会わずにも済むのでは?』とスズヤ様に言われましたので、どうせなら父上と兄上にも協力してもらえば彼を追い込めるのでは?と。成功してよかったです♪」


まってまって!?

俺はライナー殿下を大会に呼んで王家お墨付きー!って宣伝に使ってしまえば?って提案しただけですけど!?

なに?殿下を追い込むって!?

俺の知らないところで今日何が起こってたの!?

ボードゲーム大会の裏で、公爵家vs王家っていう恐ろしい試合してたの!?


やっぱこの親子怖い!!




※  ※  ※




その夜。

少し時間も早いがやることも無いので、以前から気になっていたシアとエルに付けられていた隷属のチョーカーを鑑定してみることにした。


【鑑定・改】になってから、ちゃんと見ていなかったな。


そして、表示された内容を見て、俺は顔をゆがめた。

これって……。





所持金 金貨52枚 銀貨1枚 黄銅貨7枚 青銅貨3枚


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