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ふるさと納税で気ままな異世界生活?  作者: 瀬良・B・月季
1章 龍の巣編

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6話 馬車の旅 国境超え

移動中、馬車の荷台で荷物が少ない理由を説明した。


「――ってなわけでして、この鞄はなんでも入るようになっていて、食器などはもちろん、食材はこの中におよそひと月分程度入ってるので食事については任せてください」


「マジか!そんな大容量のマジックバッグ持ちかよ!秘密にして正解だな」


「そうですね。それほど容量のある物であれば金貨1000枚は下りませんものね」


「うむ」


「大容量のマジックバッグかぁ。いいなぁ~。アレク!うちでも今度あれくらいの買おうよ!!」


「んー。今使ってるのでも事足りるだろ?」


「えぇ~!この前だってオーク2頭でギリギリだったじゃん!!」


「バカ!これでも金貨100枚もしたし、容量は多い方なんだぞ!?スズヤさんの持ってるのは魔道具というよりアーティファクトだからな!?」


金貨1000枚!?

迂闊に披露できるものじゃないな……。

アーティファクトってなに?


「あの~、できれば秘密でお願いします」


「当然。依頼人の情報は秘匿するのが傭兵のルールだ。いいなみんな?」


「「「もちろん」」」


「助かります」


「スズヤさんは今後は偽装のためにもある程度の荷物を持ち歩くようにした方がいいかもしれませんね。私たちのパーティでもマジックバッグは持っていますがこうして荷物はある程度持ち運んでいますし、あまりにも荷物が少ないとマジックバッグをもっていますと宣伝しているようなものですので……」


「はは……。今後気を付けま――うわっ!」


突如馬車が急に止まり、御者を務めていたエレナが立ち上がった。


「みんな!前方警戒!!距離50!数は4、いや5体だよ!」


御者をしていたエレナが馬車を止めてそう叫ぶと、龍の牙の4人は一瞬で警戒モードに突入した。


前方から人の背丈より小さな、緑色の体表をした魔物が数体姿を現した。


「あれは?」


「ゴブリンです。低級の雑魚ですが、集団で行動していることが多い上、素材にもならないので駆け出しの傭兵には嫌われていますね。何より困るのが、ゴブリンは不潔で臭いもきつくて……」


マリアが丁寧にゴブリンについて解説してくれた。

最後の情報は切実に嫌なんだろうな。

マリアさんが顔を歪めているのを初めて見た。


「まっ!俺らの敵じゃないけどな。ここは俺に任せてくれ」


そういってアレクは馬車から飛び出した。


「あっ!ずるい!」


「へへっ!早い者勝ちだ!」


「うー!次は私がやるから御者変わってよね~!」


「へいへい。んじゃサクッと終わらせますか」


そういってアレクは背中の大剣を抜いて横に構えたままゴブリンの集団に向けて一気に突進した。

その勢いのままに体を大きく回転させ、慣性を利用して大剣を横薙ぎに薙ぎ払う。

アレクの大剣の威力はすさまじく、ゴブリン達はこん棒ごと一刀両断。

一瞬で3匹のゴブリンを殲滅してしまった。


残る2体のゴブリンはその様子を見て、慌てて逃げ出そうとするも、アレクは逃亡を許さず。

逃げるゴブリンの背中を大剣で叩き切ってゆく。

背を見せたゴブリンはもう脅威ではなく、アレクは大剣を振り下ろし1体を一刀両断。

続いて、別方向に逃げたゴブリンに大剣を投げつけ背中に突き刺して止めを刺した。


「ふぅ。こんなんじゃ肩慣らしにもならねぇな」


「私も体動かしたーい!!」


異世界人の身体能力やばくね!?

あんな巨大な大剣を高速で振り払ったりするとかどんな膂力?

ってか投げ飛ばすとかやばくない?その大剣数十キロあるよね?


「すごいですね」


「アレクは剣士ですからね。このくらいはまぁ当然ですね」


「うむ。天職にあった戦闘をすればゴブリン程度なら造作もない」


「ということは皆さんもあの程度は?」


3人は頷いた。


異世界人恐ろしい。

回復と支援役っていってたマリアさんまで笑顔で頷いたのには若干引いた。


天職ってなんだかわからないけど、こんな人がたくさんいる世界で戦争とかやばいだろ!!

さっさと出国を決めてよかった。

ってか俺って戦争のために召喚されたんだよな?

こんな人たちと戦うために呼ばれたってこと?

追放されて本当によかった……。



暫く道なりに進むと、街道を挟む雑木林が徐々に減り、広い草原地帯に差し掛かった。


「うわー。広い草原地帯ですね。地平線が見える」


「この草原を抜けたら国境だ。ここから1日半も進めば関所が見えてくる。隠れる場所がないから魔物も少ないけど野営中は注意するに越したことはない。日が落ちるとアンデッドも湧くからな」


「うへぇ。アンデッド……」


「あ、やっぱスズヤさんもアンデッド苦手?私もアンデッドはナイフや弓じゃ戦いにくいし、きらーい」


「大丈夫ですよ。低位のアンデッドなんて浄化の魔法でサクッと処理です♪」


「アンデッドってどうやって動いてるんです?」


「負のマナが集まって死体を動かしているらしいですよ。なのでスケルトンの場合は胸の魔石、ゾンビの場合は頭の魔石が弱点なので、そこを潰せば簡単に倒せます♪」


いや、にっこりされても。

頭を潰すとか怖いから!

マリアさんがだんだん怖く思えてきた。


暫く馬車を進め、完全に日も落ちたので野営の準備を進めることに。


アレクとガイはテントの用意。

エレナは見張り。

マリアと俺は夕飯の準備。


「よし、今日はあれにしようかな」


テーブルとまな板を取り出し、鶏肉の塊を取り出すとマリアが不思議そうな顔をした。


「あら、そちらは?」


「ん?これから夕飯を作ろうかと思って」


「スズヤさんは料理が出来るのですか?」


「出来るって言っても簡単な物だけね」


鶏肉の塊を一口大に切り分け、塩、コショウ、酒、醤油を付けて揉み込む。

本当はショウガも欲しかったけど今回は無しで。

因みに調味料類はどうしても日本製のものが欲しかったので、馬車の荷に隠れて【ふるさと納税】でこっそりと購入済。


ちょっと調味料としては高くついたけど、使い慣れた調味料と故郷の味は大事だよね。

この世界の調味料も購入した物があるけど、あの町の店には塩と一味っぽいのしかなかったんだよね。

塩も白い塩じゃなくて茶色がかっていて、質があまりよくなさそうだから出来れば余り使いたくない。


鶏肉を漬け込んでいる間に鍋に油を注ぎ、マリアさんが準備してくれた火にかけておく。

油を温めている間に下味をつけた鶏肉に小麦粉をまぶしたら、卵液にくぐらせて片栗粉をまぶす。

卵液は無くてもいいんだけど、あったほうがふわっとしたジューシーな食感に仕上がるからこれは俺のちょっとしたこだわり。


さて、いい感じに油の温度も上がったみたいだし、鶏肉を投入。

一気に投入すると温度が下がるので、一つずつ手で掴みながらゆっくりと油に投入していく。


テントを建て終えたアレクとガイが、料理の香りに反応を示した。


「ん?なんかすごく香ばしい匂いがしないか?」


「食欲をそそる香りがする」


俺が黙々とから揚げを揚げていると、マリアは目を輝かせながら横から鍋をガン見していた。


「マリアさん?油が跳ねると危ないので顔をあまり近づけると危険ですよ?」


「あっ!すみません。美味しそうな匂いがしたのでつい。私はサラダとお水の用意をしておきますね」


サラダ用に取り出しておいた野菜の水洗いと取り分けをマリアさんに託した。


パチパチといい感じの軽めの音がし始めたので一度から揚げを取り出し油の温度を上げる。

といっても薪を追加するだけなので火加減はいい加減。

携帯用コンロとかほしいけど、流石にカセットコンロとか使ってるの見られると言い訳のしようがないし、保留だなぁ。


「もうできたの!?」


「あっ!まってエレナさん!」


手で掴んでつまみ食いしようとしたエレナにストップをかける。


ふっふっふ。から揚げはここから2度揚げすることで真価を発揮するのだよ。

再度から揚げを高温の油に投入!


今度は30秒ほどでサッと取り出す。

そしてお皿に盛りつけてレモンを添えたら完成!

レモン5kgも購入しちゃったから、今度はちみつ漬けでも作るかなぁ。



「お待ちどおさま。から揚げです」


「見たことない食べ物だな?これが良い匂いの正体なのか?」


「まぁみなさん熱いうちにおひとつどうぞ」


「「「「パクッ」」」」



「うん。少しパンチが弱いけど、まぁまぁ及第点かな?」


ショウガとか他の香辛料もあればもっと美味しくできるけど、【ふるさと納税】で調味料を買いまくると懐にも大打撃だし、未知の調味料を大量に使ってるとこを見られるのも危ないしね。


「うめええええ!!なんだこの肉!?」


「はふっ!はふっ!熱いけどとまらない!めちゃくちゃおいしい!」


「これが及第点なんて、スズヤさんはいつもどれほど美味しい食事を!?」


「うむ!」


から揚げを気に入ってくれたみたいなので、レモンをちょっと絞って掛けると美味しいと勧めてみる。


アレクとエレナはガツンと美味しい何もかけない派

マリアとガイはさっぱりするレモンをかけた方がいい派と判明。

異世界でもから揚げにレモン戦争はあるらしいです。


その後、用意したドレッシングをこっそりかけたサラダも4人は絶賛して完食。

あっという間に3kgほどあったから揚げも消えてしまった。



「もう食えねぇ~!スズヤさん商人って話だったよな?この腕なら王都でお店を出してもやっていけそうだけど?」


「いやぁ。俺はもっぱら食べるの専門で、料理はそれほど好きというわけでもなく趣味程度なので仕事にするつもりはないですよ」


「もったいねぇ~!スズヤさんが店だしたら毎日通うのになっ?」


アレクの問いに3人は激しくうなずいた。


「ははっ。そういって貰えると嬉しいですね。ファーランド王国に到着するまでは飯番を預かりますんで、任せてください」


「この依頼受けて大正解だなっ!!」



その後、野営は一人ずつ交代で龍の牙が担当し、依頼人の俺はぐっすり朝まで寝かせてもらった。




※  ※  ※




「身分証の提示をお願いします」


草原での野営をもう一度挟み、俺たちは国境の関所を訪れていた。

それぞれギルド証を提示し、関所を抜け、いざファーランド王国へ。


国境を越えてようやく肩の荷が下りた。

あの忌々しい国王とこれで関わることが無くなると思うとホッとする。


少し進むとすぐに広大な森林が見えてきた。


「ファーランド王国はほとんどが森林地帯だからここからは速度を落として注意して進もう」


御者を務めるアレクが手綱を握り速度を落として馬車を進める。


「やはり魔物が多いんですか?」


「それもあるけど、ファーランド王国の森はドライアドっていう強い魔物がいるって噂があるんだよ」


「滅多に遭遇することはないそうですが、むやみに森を傷つけたり森を荒らすとドライアドの怒りを買うというのは有名な話ですわね」


ドライアドっていうと植物の魔物だっけか?

世界は違えど空想上の生物が実在してるって不思議な感覚だなぁ。


ん?言葉が通じてるのも不思議に思ってたけど、固有名詞も共通なのか?

もしかして勝手に翻訳されてる?

実はドライアドって名前じゃなかったりするけど、俺にわかりやすい名前に変換されてたりするのかな。


「他にはこの森にはどんな魔物がいるんですか?」


「植物系や虫系、獣系が多いな」


ふむふむ。


「こっちで活動してるときはマイコニドとかウルフ、ボア系は良く狩ったよねぇ~」


「ん?皆さんファーランド王国出身なんですか?」


「ええ。私たちは元々こちらの出身でフリーゲル王国で活動し始めたのは2年前からですね」


「フリーゲル王国はしょっちゅう戦争してて徴兵制度があるから傭兵が少なくて仕事が多いからな」


「それってファーランド王国と戦争になったときはどうするんですか?」


「ははっ!ないない!うちの国はほとんどが森であとは禁足域っていう立ち入り禁止の危険地帯の岩石地帯と火山しかなくて、農業にも適してないし資源も木材くらいしかない。そのうえ森はドライアドの森だし、ファーランド王国を攻め落とすメリットがないからな」


ドライアドの森ってのが強力な防波堤になってるのか。

火山があるなら温泉もあるかな?

ちょっと楽しみが増えたぞ!





所持金 金貨351枚 銀貨1枚 赤銅貨4枚 青銅貨2枚


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