55話 都市防衛機構と火山の噴火対策
足湯を堪能した俺たちはトルネに空いている仮設住居へと案内してもらい、温泉が完成するまでの数日、そこで過ごすこととなった。
最後に都市の防衛を高めるために、エン爺が火山の噴火に関しては任せていいといっていたのでエン爺には火山へと向かってもらい、ライアには都市の外周に人以外の生物が近づいたら襲ってくるように指示を出したキラープラントを配置してもらった。
人以外だけを襲うように指示を出せるの?
キラープラントってトルネさんや緑の目の二人を襲ってたあのヤバイ植物系モンスターだよね?
「大人しいから滅多に人を襲わない。森の害獣駆除をしてるだけ」
とライアに説明を受けた。
でもあの時は襲われてたよね?
詳しく聞くとライア拙い説明で頑張って教えてくれた。
俺らが来る数時間前まで、あのあたりで木々を勝手に伐採してた人たちがいたらしい。
それでキラープラントが森を守るために動いたところに、間の悪いことにトルネの馬車が通りがったということらしい。
そしてライアがキラープラントを宥めるために現地に来たら美味しい果物の匂いがしたから、釣られて出て来たとのことだった。
キラープラントを討伐してよかったのか聞くと、害のないトルネたちを襲ったのが悪いとあっさり切り捨てた。
アレク達がやらなくてもライアが始末をつけるつもりだったらしい。
森の木々を荒らしていた奴らはグエル商会の名を出していたそうなのでラーサン絡みの下請けだったのだろう。
ほんとラーサンはろくでもないことしかしてなかったんだな。
ライアに出会った頃の事情も聞けたことだし、都市の外周にキラープラントの種をまき終えたので戻ってトルネとクラリス嬢にキラープラントを防衛のために配置したことを伝えると流石にちょっと引いていた。
「だ、大丈夫なのでしょうか!?」と声を荒げるトルネ。
一度キラープラントに死に目にあわされたトルネはそういう反応にもなるよね。
「魔物を都市の防衛に活用するなど斬新すぎますね……」
俺もそう思う。
ライアが出来るといっていたから任せたけど、まさかキラープラントを使うとは思っていなかった。
その後、絶対に人を襲わないようにライアが指示を出していること。
定期的に水さえ与えればキラープラントは問題ないということを伝え、何とか納得してもらった。
そんな話をしていると日も落ち始め、朝火山へ向かったはずのエン爺も帰ってきた。
片道数日は掛かる距離のはずなんだけども、エン爺だし人目を避けて飛んで行き来でもしたんだろう。
「おかえりエン爺。それで、火山の噴火対策を任せてくれとしか聞いて無かったけど、何をしてきたの?」
「ちと火口付近に穴を空けてラーヴァピスキスが広げておった地下境域に溶岩が流れ込むようにしてきた。これで数百年ほどは、噴火しても溶岩が大量に流れ出す心配もあるまい」
簡単に言うけど、火口に穴を空けたり溶岩の流れをいじったり、やってることは流石獄炎龍、人知を超えていた。
何はともあれ、火山対策も済んだらしいしよかった。
するとエン爺は食料や水、酒を入れて渡しておいた小さめのポーチ型マジックバッグを俺に返してきた。
「ん?それは返してもらわなくても大丈夫だよ?」
「いや、中を確認してもらいたい」
なんで中を?
まさか一日で大量に入れた食料と飲み物を全て消費したとか……?
まぁエン爺とは言え往復で数日かかる可能性もあったから大量に入れて渡したわけだし、全部飲み食いしてたとしても別に怒ったりしな――
俺は受け取ったマジックバッグを開いて手を入れて絶句した。
見覚えのある魔物が複数その中に入っていたからだ。
すぐさま俺はエン爺の耳元でこそっと確認する。
「これって……」
「うむ。ラーヴァピスキスだ。小ぶりだがな。以前食してみたいと言っておっただろ?いつも美味い飯と酒を馳走になってるしな。それは礼だ」
いや、確かに食べてみたいって言った!言ったけども!!
どうすんのこれ!?
大きさの問題じゃないよ!!
小ぶりって言っても中に入ってるラーヴァピスキスは3匹とも10m~15mあるんですけど!?
最初のラーヴァピスキスもまだオークションが始まってないから処理が終わってない段階で世に出せないよ……。
そもそもこんなのどこで解体してもらえば……。
あ、そうだ!
クラリスの後ろで暇そうにし、シアとエルと戯れている龍の牙に俺は目を付けた。
「皆さん。ちょっとお願いしたいことがあります」
「ん?なんだよ?妙にあらまって……?」
「うーん。スズヤさんが手に負えなくて私たちに頼んでくるって時点でちょっと嫌な予感が……」
「どんなお願いでしょうか?」
「うむ?」
皆を集めてこそこそと耳打ちする。
小ぶりなラーヴァピスキスをエン爺が確保してきたけど、とてもじゃないが世に出せない。
そこで解体を手伝ってほしいと。
皆はクラリス嬢の護衛として雇われているわけだからクラリス嬢の許可もとる必要があるし、素材を細かく処理してしまえば元の大きさはわからないだろうから、龍の牙が追加で討伐したことにして、後日傭兵ギルドとトルネさん経由で素材を売りに出してほしいこと。
1匹も4匹も変わらないだろうから全部龍の牙の手柄として引き受けてほしいということを伝えた。
アレクはかなり渋っていたが、最終的にエン爺は「かなり身は脂がのっていて美味いぞ」とラーヴァピスキスの
美味さを伝えたのが止めとなって俺の話を飲んでくれた。
「わかった……。解体を請け負ってやる。でも本業じゃねぇし、綺麗に解体できねぇぞ?」
「いいっていいって。むしろ荒く解体した方が、あとで素材を売り出すにしても大きさが分かりにくくなるし、3体相手に苦戦したってことにしとけばいいさ」
「あのな……他人事だからって適当な……。1体も倒したことないのに4体も倒すことになる俺らのことを考えてみろよ」
「そのうちラーヴァピスキス討伐の指名依頼を出されそうな気がしてきた……」
「私たちで倒せるでしょうか……」
「うーむ……」
「お主たちであれば相手が1体なら倒せるだろう。これまで見てきた我が言うのだ。間違いない」
「……エン爺さんがそう言うなら。俺らは覚悟を決めるか!クライス様の護衛依頼が済んだら俺らだけで狩りにいって実際にラーヴァピスキスを狩って実力を証明しようぜ」
「うん。人の功績だけで称えられても気持ち悪いし、討伐しておきたい!」
「そうですね。エルさんを教える中で私の魔力制御も安定しましたし、今なら力に振り回されることなく魔法も行使できそうです」
「うむ!」
うんうん。話はまとまったみたいだね。
解体してくれたらラーヴァピスキスの素材は全部上げるよ。
え?流石に受け取れない?自分たちで討伐した分を売るって?
うーん、参ったな。
「先ほどからこそこそと何のお話をされておられるのですか?」
「あ、クラリス嬢。丁度良かったです。明日どこかで魔物の解体に彼らの手をお借りしたいのですが、彼らには護衛の任もありますので、クラリス嬢も一緒に来てもらっても?」
「ええ、まだ温泉施設の完成までは時間もありますし、それくらいなら構いませんよ。因みに何の解体なのですか?」
トルネさんやフランゼ商会の従業員も居る中でラーヴァピスキスの解体とは口が裂けても言えない。
もしトルネさんの耳に入れば、貴重な魔物の素材を雑に解体するなんて言語道断!って絶対怒られる。
「それが――」
クラリス嬢の耳元で事情を説明する。
「なるほど。わかりました。では明日は私もご一緒しますね♪」
よかったぁ。
流石クラリス嬢。
すぐさま察してくれて助かった。
トルネは「魔物?ロックイーター?」と首をかしげていた。
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