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ふるさと納税で気ままな異世界生活?  作者: 瀬良・B・月季
2章 新都市開発編

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54話 温泉の先の理想

俺たちは温泉都市へ到着していた。

門をくぐり都市内へ進むと、街の中を流れる源泉と湯畑から湯気が立ち上る様が見えてきた。


「わぁ♪完成した街並みにも目を奪われましたが、これが引き込んでいただいた温泉の源泉なのですね♪」


クラリスは初めて目にする源泉と湯畑を見て目を輝かせる。


「へぇ。これが温泉か。もうすぐ入れると思うとワクワクするな!」


「ねぇ。足湯ってのはもう入れるんだよね!?私入ってみたた―い!」


「私も興味があります♪」


「うむ」


そうだな。馬車移動の疲れを癒すにも丁度いいかもしれないな。

トルネのところへ行って顔を出す前に足湯に寄っていくか。


「んじゃ足湯に向かうとするか」


シアもエルも興味をそそられたのかワクワクしている様子が見てとれた。



足湯を無料開放している広場に到着すると、何やら広場に人が集まっているのが見えてきた。

よく見ると全員が紺色と紅色作務衣を身に纏い和風エプロンを身に着けている。


あれって俺が提案してた従業員用の?


すると俺らが近づいてきたのに気が付き、作務衣の集団の中から見知った顔が飛び出してきた。


「スズヤさん!クラリス様!お待ちしてました!」


「トルネさん。私の代わりに現場をこれまで指揮していただき、本当にありがとうございます」


「いえいえ!クラリス様が加速する現場の状況に遂次対応してくださっていたから私は現地で作業の進捗を管理していただけにすぎませんよ!丁度いま温泉施設の従業員となっていただく方達の研修を行っていたところですので紹介します!フランゼ商会の従業員50名とクラリス様が手配してくださった元商人の犯罪奴隷の方々30名です!」


へぇ。流石にすごい人数だな。

犯罪奴隷を雇う話は聞いていたけど、まだちょっと俺には受け入れがたい制度だなぁ。

よく見ると犯罪奴隷の従業員の中に見覚えのある顔があることに気が付いた。


「あれ?どこかで見たことある気が……」


「貴様!俺の顔を忘れたとは言わせないぞ!!貴様のせいで俺はこんな目に――」


久々に顔を合わせるなり、ラーサンは逆恨みしてスズヤに食って掛かかろうとする。

しかし、そんなラーサンを見かねて、すぐさまトルネが口を開き一言。


「温泉の従業員にあるまじき態度ですね?これは犯罪奴隷として鉱山か戦場に送った方がいいですかねぇ~?」


トルネが若干冷たい視線を向けつつラーサンにそう言うと、クラリスも同調した。


「そうですね。私が代官を務めますこの都市のシンボルとなる施設ですし、配慮の行き届かない従業員は不要ですかね?直ぐに彼を送還する手続きを――」


そこまで聞いてラーサンは顔を青ざめ、すぐさま謝罪を口にする。


「も、申し訳ありません。失礼な態度を取ったことを謝罪いたします。どうか施設の従業員としてこのままフランゼ商会に仕えることをお許しください……」


その言葉を聞いてトルネとクラリスは顔を見合わせてニコッと笑みを浮かべた。


うわっ!二人とも怖い。

クラリス嬢がラーサンをここへ送ったのはわざとだな?

フランゼ商会に散々嫌がらせをしてきたラーサンをフランゼ商会の奴隷として宛がうことで贖罪させることとしたのか。

鉱山や戦場に送られるよりはマシなのだろうけれども。

ずっと下に見てきたトルネの下で奴隷として働かせられるって、本人にとっては屈辱だろうなぁ。

やっぱりこの娘恐ろしい!!


でもこれでラーサンも真面目に更生してくれるかな?


そう思ってラーサンへ視線を向けると、俺に明らかな敵意を持ち、睨みつけるような視線を向けてきていた。


……うん。更生するには時間がかかりそうだ。




その後、トルネは従業員予定者たちを連れて建設中の温泉施設の方へと向かっていった。


俺たちは早速目的だった足湯へと向かう。


靴と靴下を脱ぎ、ズボンの裾を捲り上げ、ゆっくりと足湯に足を浸してゆく。


「はぁ~♪旅の疲れが癒されるなぁ♪やっぱ温泉は最高だな」


俺の様子を見て、皆も真似て続々と足湯に群がっていく。


「大衆の面前で足を晒すのにははしたないので、ちょっと勇気がいりますけれど、これは確かに気持ちいいですわね♪」


皆が足湯に浸かった後、最後にクラリスは若干恥ずかしそうにしつつ俺の隣に座り、足湯に足を付けつつそうつぶやいた。


女性が町中で足を晒すのは恥ずかしい行為なのか。

この世界の常識?この国の常識なのかな?

知らなかったとは言え、配慮が足りなかったかな?


足湯は広場の北西、北東、南西、南東に4か所あるし、貴族用や女性用に囲い付きを用意するか?


「クラリス嬢。足を見せるのがはしたない行為に当たるのであれば、4か所の足湯のうち2か所は囲いで覆いますか?」


俺がそう提案するとクラリスは静かに首を横に振った。


「いえ。その必要はありません。この都市では全ての民が平等に過ごせるようにしたいと考えております。この広場にある足湯は、誰でも気兼ねなく使えるようにし、身分や立場関係なく皆で楽しめる場所にしたいので、このままにしておいてください」


微笑みながらそう答えるクラリスの視線の先を見ると。

足湯の湯を手でパシャパシャと掛け合ってはしゃぐアレクとエレナ、シアの姿。

足湯に浸かり、隣同士に座って笑みを浮かべ、何かを話しているマリアとガイとエン爺。

足をぶらぶらしつつ足湯を満喫するエルと、その横に座って足湯へ手を伸ばし、つんつんと指で湯の温度を確認し嫌そうな顔を浮かべエルに苦笑されているライアの姿。


皆とても楽しそうだ。


クラリス嬢は、ここを訪れた全ての人がこうして楽しんでくれることを願ってるってことか。



「公共の場で万人がこのように肩を並べて寛ぐことが出来る場所を設ける発想は本当に素晴らしいと思います。私はスズヤ様がおっしゃられていた、『温泉施設は万人が身分や立場関係なく楽しめる場所にしたい』という言葉と思想に感銘を受けました。ですので、私がこの都市を始まりとしてその思想を伝え広め、いずれは国内――そして国外へも、身分や立場など関係なく楽しめる世界を広げていきたいと考えております」


うん。素晴らしい考えだとは思う。

でも、まさか俺が何気なく話した理想の温泉計画が、そんな壮大な話に発展するとは微塵も思っていませんでした。

クラリス嬢ほんとに15歳なの?


俺の知る限り、この世界は王権制の貴族社会が基本で奴隷制度もあり、貴賤上下の観念が根強い強いように思う。

その世界で今言った理想を貫いて、人々に認識を塗り替えていくのは並大抵のことじゃないだろう。

これは希望的観測かもしれないけれど、クラリス嬢であればそんな困難な理想でもいつかは成し遂げるだろうって思えるのだから、不思議なものだね。


「クラリス嬢なら出来ると思うよ」


あ、だから犯罪奴隷を敢えて従業員に組み込んだのか?

都市の目玉である温泉施設で、フランゼ商会の正規の従業員と犯罪奴隷が格差なく勤めている姿を見せることで、訪れた人も一目見てわかるように?

……この子、どこまで先が見えてるの?


クラリスの顔を見つつそんなことを考えているとニコッと笑いかけられた。

その笑顔は、どこかこちらの考えていることを見透かしているような、そんな感じがして少しドキッとした。


「スズヤ様の理想は、私が必ずや実現させて見せますね♪」


いや、俺の理想は温泉の中だけのつもりだったんだけど。

まぁいいか。悪いことじゃないし。

俺にはそんな大それたこと絶対に無理だけど、クラリス嬢にはその大業を成せる器も行動力も備えているように思うし。

なるようになるだろう。






所持金 金貨228枚 銀貨4枚 黄銅貨7枚 青銅貨3枚

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