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ふるさと納税で気ままな異世界生活?  作者: 瀬良・B・月季
2章 新都市開発編

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47話 聖女を祭る教会

朝の便でトルネの元へと向かうため、皆に別れの挨拶を済ませる。

といってもまた数日後には戻ってくることになるだろうけどね。


シアとエルはライアに抱き着いて別れを惜しんでいた。


「ん。大丈夫。また戻ってくる」


「うん」


「すぐ戻って来てね」


「ん。行ってくる」


俺はその間に龍の牙とクラリス嬢、ヴァンスさんへ挨拶する。


「んじゃ二人のことを頼みます」


「ああ、任せとけ!俺らがすぐにでも傭兵として実践に出られるように鍛えてやるぜ!」


いや、そこまでしなくていいからね?

ほどほどで。


「シアさんとエルさんのことは私とヴァンスにお任せください。決して不自由させませんので」


「スズヤ様のお身内の方々ですので、客人待遇で対応させていただきます」


「ありがとうございます。シア。エル。行ってくるね」


「うん!待ってる!」


「いってらっしゃい!」



フランゼ商会の前に向かうと、新都市開発に向かう馬車は既に満員となっていた。


えぇー。

どうしようか。

歩いて向かう?

エン爺とライアと相談していると、護衛の一人が声をかけてくる。


「スズヤさん。お困りかな?」


声のする方へ目を向けると、見覚えのある二人組の姿が。


「あっ!確か、キラープラントの時の……」


えーっと、名前はなんだったっけかな……。


「Cランク傭兵緑の目のガッシュです」


「同じく俺はトレル。久しぶりですね。作業員用の馬車は既に満員なので、良かったら護衛用の馬車にどうですか?フランゼ商会の荷物を一緒に載せてますが、護衛は俺らだけなので3人くらいなら乗れますよ」


「えっ?いいの?」


「ええ。依頼人のトルネさんからも聞いてますし。スズヤさん達が同行してくれるなら俺らも心強いです」


ガッシュはそう言いつつライアの方へ視線を向け、頷いた。


そうか。二人はキラープラントの時に一緒にいたからライアの素性も、俺がマジックバッグを持っていることも知ってるんだった。

それなら色々隠す必要もなくて気楽だし、同行させてもらおうかな?


「ありがとうございます。ではよろしくお願いします」




※  ※  ※



もう後がないヘイゼル侯爵は、半ば自暴自棄に陥り王都の酒場で昼間から飲んだくれていた。


すると気になる話が隣のテーブルから聞こえてきた。


「おい、知ってるか?」


「ん?どうせ宿のリンダちゃんが実は彼氏持ちだったって話だろ」


「ちげーよ。ってかリンダちゃん彼氏がいるのか!??」


「で?何の話だ?酒の肴になる話だろうなぁ?」


「ああ、これはフリーゲル王国の宮廷に努めている兄貴から聞いた話なんだが。フリーゲル王国は聖女召喚を行って失敗したらしいぜ」


「けっ!何が聖女召喚だぁ?そんなんどうせ与太話にちげぇねぇ!失敗でいいんなら。俺もガキの頃に、勇者様どうか降臨ください!っつって失敗したわ!ガハハハ!」


聖女召喚か。

そんなおとぎ話のようなこと実際に出来るわけが……


「それがよ。失敗って言っても、男が召喚されたらしいぜ。確か名前はスズヤ=ミナトって言っ――」


ガタン!!と大きな音を立ててヘイゼル侯爵は立ち上がり、噂話をしていた男の元へ近づいた。


「な、なんだよ。お貴族様とはいえ、俺らが楽しく酒を飲むのを止める権利はねぇはずだぜ」


「おいお前」


「ひっ!」


鋭い目つきでじっと見つめてくるヘイゼル侯爵の圧に男はビビッて変な声を上げる。


「続きを話せ」


「へ?」


「聖女召喚の話の続きだ。さっさと話せ!」


ヘイゼル侯爵の圧に屈した男は、また聞きした話で実際に俺が見たわけじゃないから、眉唾ものだぞと前置きしたうえで、知っている話をヘイゼル侯爵に話した。


するとそれを聞いたヘイゼル侯爵は笑みを浮かべた。


「くくく。私にもようやく運が向いて来たらしい!!あーっはっはっは!」


男たちは、ヘイゼル侯爵の狂い様を見て引きつった顔を浮かべた。


「ああ、そうだ。いい情報を話してくれたな。これは礼だ。とっておけ」


そういって大金貨1枚をテーブルに置いてヘイゼル侯爵は酒場を出ていった。






その後、王都にある聖教会の大聖堂を訪れたヘイゼル侯爵は大神官に合わせてほしいとシスターに声をかける。


暫く待つとファーランド王国王都の聖教会で大神官を務める恰幅のいい男が現れた。

ヘイゼル侯爵の顔を見て一瞬嫌そうな顔を浮かべるも、すぐさま繕い直し口を開く。


「お待たせいたしました。私はこの教会で大神官を務めますチャールズと申します。ヘイゼル侯爵様ですね。私に用があるとお伺いいたしましたが、どんな御用でしょうか?入信ですか?それとも祈祷をお求めでしょうか?」


「フリーゲル王国が先日行ったとされる聖女召喚について報告がある」


その言葉を聞いて、糸目で笑みを浮かべていた大神官は目を見開いた。


「……奥の部屋に案内いたします」


奥の説教部屋に移動し、チャールズは扉の外にいたシスターに人払いをするように伝え椅子に座った。


「それで。詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか?」


「フリーゲル王国で最近聖女召喚の儀式を行ったという噂を耳にした」


「噂ですか……。その手の噂はよくありますので――」


「召喚の儀式は失敗し、呼び出られたのは男だったそうだ。彼の名はスズヤ=ミナト」


「……」


淡々と語るヘイゼル侯爵の真剣な顔つきと、良くない噂が目立つヘイゼル侯爵だが、腐っても侯爵。

くだらない与太話をわざわざ教会に足を運んでするような立場には居ない者の語る言葉に大神官チャールズは真剣に耳を傾けた。


「私は最近この王都で様々な大事に介入している流れの商人を知っている。その男の名はスズヤ。エクレール公爵家やフランゼ商会とも密にやり取りをしており、そして何より傭兵パーティー龍の牙とも交流があるらしい」


「龍の牙と言えば……」


「ええ。フリーゲル王国でBランクに昇格した新進気鋭の傭兵パーティーだ。国内に戻るや否や龍の巣の調査に向かい功績を立てAランクに昇格したが、その調査にもスズヤが同行するのを目撃したという情報を掴んでいる」


「なんと……。ということは」


「流れの商人スズヤの正体が、フリーゲル王国で召喚されたスズヤ=ミナトである可能性が高い。聖女を信仰している聖教会として、スズヤの存在をこのまま許せるのか?偽聖女であるスズヤがファーランド王国内で大手商会や公爵家と繋がっている可能性が高いのだぞ?」


「しかし……。その者が聖女召喚の失敗によって呼び出された者という確証は?」


「確証はない。だが、聖女召喚で呼び出されたなら、失敗作の偽聖女とはいえ、人知を超えた力を有している可能性がある。偽の聖女を聖教会はこのままのさばらせておいていいのかな?」


「……」


「これは私の予想だが。偽聖女は龍の牙に同行して獄炎龍を従えている可能性がある」


「なんですと!?」


「少し前に西の国境沿いでフリーゲル王国が我が国に戦争を仕掛けようとした。その際、何故か突如現れた獄炎龍がフリーゲル王国の軍を威嚇し、撤退に追い込んでいる」


「流石にそれは偶然では……?龍を従えるなど聖女様と言えど不可能だったこと……」


「エクレール公爵の長女クラリスが代官として、解放された禁足域に新たな都市を作っている話は知っていますね?」


「ええ、それがなにか?」


「商人スズヤはエクレール公爵家に頻繁に出入りしている姿が目撃されています。更に新領地の建設現場へも何度も向かっていることも。獄炎龍がフリーゲル王国の軍を抑え、戦争を事前に防いだことで被害を防げたのはどこの領地でしょうね?」


「西の国境沿いということは、エクレール公爵様の領地フランシル……ですね」


「そう。偶然にしては出来過ぎているとは思いませんか?スズヤという商人が現れてから、何もかもがエクレール公爵家の都合のいいように動いている。偽聖女スズヤが獄炎龍を従え、エクレール公爵家と手を組み暗躍している可能性が高い。そうは思いませんか?」


「……ヘイゼル侯爵。もしそれらの予想が全て本当だとして、スズヤの目的は一体?」


「獄炎龍を使ってファーランド王国を乗っ取るつもりでしょうね。エクレール公爵家の現当主バリスは王弟。もし仮にスズヤが清廉潔白な聖女なら。獄炎龍を従えたのち、余計な混乱を起こさぬように配慮し、王家に協力していたはず。それであれば私もここまで不審に思わなかったでしょう」


「確かに……」


「この話を聞いて貴方はどう動きますか?大神官チャールズ様」


「もし本当に商人スズヤが偽聖女であり、厄災とされる龍を従え、古の大戦の勇者と魔王のように世界を混乱に陥れようとしているのであれば、世界を救った聖女様に対する冒とくであり、許されざる存在であると言わざるを得ません」


「そうでしょうね」


「至急他の教会支部とも連絡を取り、フリーゲル王国へ真偽の追及を。そして聖女召喚の事実確認が済み次第、スズヤ=ミナトと商人スズヤが同一人物と判明したなら身柄を捕縛したいと思います」


「私はこのことを陛下へ進言しに参ります。まだ予想の域を出ませんが。偽聖女が現れたとなるとことは重大ですので、騒ぎにならぬようにくれぐれも極秘に願います」


くくく。私は噂を流してやるがな!

これでスズヤ=ミナトが商人スズヤと同一人物であれば奴は終わりだ!

仮に別人であったとしても、噂が広まればエクレール公爵家の信用が失墜するのは確実!

スズヤも国家転覆を目論んだ偽聖女かもしれぬという噂が広まってしまえば、もうこの国には居られまい。

そんな噂が立ったなら、フランゼ商会もエクレール公爵家も奴を切り捨てざるを得ないだろう。

皆に見放されて、惨めな思いでどこへとなりと行くがいい!


私はどちらに転ぼうとも国家の危機を事前に察知し、王家に進言した忠臣という印象が王家や民に残るはず!!


勝った!これで私は返り咲ける!!

ようやく私にも運が向いてきたぞ!!





所持金 金貨388枚 銀貨2枚 黄銅貨7枚 青銅貨3枚

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