43話 栄養ドリンクの暴走
拠点に戻るとトルネと作業員たちが15時の休憩で集まっていた。
皆の様子を見ると見るからに疲労感が漂っている。
無理もないか。
仮設住居が完成するまではテントでの寝泊まりだし、食事はトルネが連れてきた人が炊き出しをやってるけど、決まった物しか食べれないし娯楽も無いんじゃなぁ。
あ、そうだ。
俺はトルネに耳打ちをした。
「トルネさん。実はいい物が――」
疲労回復用に大量に鞄にストックしている栄養ドリンクをトルネにそっと差し出した。
「スズヤさんが用意したアイテムということなら効果のほどは期待できますね……!」
「このドリンク、俺が用意したのは内緒で作業員の方へ配布してください。何ならフランゼ商会で用意したことにしてもらえると助かります」
「なるほど……。では我が商会で買い取ります!おいくらですか?」
「150本で金貨6枚と銀貨3枚でいかがです?というかまだ試してないのに買い取るとかいいんですか?」
「ええ!!スズヤさんの出す品物は間違いありませんから!!」
なんかすごく信頼されてるなぁ。
【ふるさと納税】で買っただけなんだよなぁ。
これでトルネさんからむしるつもりはないから、一応価格は購入価格をそのまま伝えたけど。
トルネさんは早速作業員の方達に栄養ドリンクを配っていった。
そして受け取った作業員たちは栄養ドリンクを飲んだ瞬間、元気ハツラツになり雄たけびを上げる。
「うおおおおおお!!すげぇ!体力が一気に全快に!!」
「今ならいつもの数倍仕事がはかどりそうだぜ!!」
「うおおおお!!やるで俺は!!」
「っしゃああ!私も今なら何でもできる気がするわ!!」
そしてすぐに皆休憩を切り上げて作業に戻ったのだが。
夕方になっても。
日が暮れても。
作業を止めようとするものが一人も居なかった。
流石にトルネさんが止めに入る。
「ちょ、ちょっと皆さん!もう夜ですよ!!そのくらいにしておかないと明日に響きますから休んでください!!」
「今いいとこなんだ!もうちょっと待ってくれ!!」
「あの!もう夜なので――」
「いま体の調子が最高にいいんだ!!このまま作業を続けさせてくれ!!」
「あの――」
「私今絶好調なの!!今日中に仮設住宅を一棟完成させたいからちょっと待ってて!!」
「うぅ……。すずやさああああん!!みんな全く作業を止めてくれません!!」
あー……。
そういえば以前龍の牙に飲ませたときもえらい目にあったのを忘れてた……。
元から体力が少ない俺みたいのが飲んでも、体力の尽きる速度の方が早いから問題ないけど、体力が多い人は減る量より回復する量の方が多くなって、効果が切れるまで暴走気味になっちゃうのか……。
「ごめん。トルネさん。この栄養ドリンク、効果が8時間持続する奴なのを忘れてた……」
「8時間!?ってことは今日はまだ2~3時間あの調子なんですね……」
元気に叫びながらどんどん作業を進めて行く作業員たちを見つめ、俺とトルネは遠い目をした。
「明日から朝食後に配って、その場で飲んでもらうことにしようか」
「そうですね……。朝以外に口にすると、飲んだ人は元気になっても、見てるこっちが疲れちゃいます……」
結局、その夜のうちに全ての作業員が一棟ずつの仮設住居を完成させてしまい。
予定していた仮説住居の半分が既に揃ってしまった。
翌朝、トルネは作業員に栄養ドリンクを配ると、慌ただしく駆け回り、追加人員を送るのを前倒しする指示を出したり、作業人員を強引するために必要な食料や仮設住居用の家具や生活雑貨を急ピッチで運んでくるように指示を出し。
フランゼ商会の従業員たちは全員大慌てで、全ての工程を前倒しすべく現場を駆けまわっていた。
うん……。
本当になんかごめんね。
トルネとフランゼ商会の従業員には、今度何かお礼とお詫びをしないとな……。
「ああ!クラリス様にも大幅な前倒しになることを伝えないと!!でも私はここを離れる余裕がもう!!あああ!!時間も人でも何もかも足りない!!」
ごめん!トルネさん!俺が連絡しにいきます!
これ以上頑張り過ぎないで!!
作業員からは大絶賛されたらしく、トルネさんがどうしても!とせがむので。
トルネさんに栄養ドリンクを大量に渡し、俺たちは作業の前倒しになることを報告するためにエクレール公爵家へと向かった。
馬車に揺られること2日。
王都に戻った俺はエクレール公爵家を訪れていた。
「――まぁ!作業の大幅な前倒しですか!?流石トルネさんですね!!」
まぁ、うん。トルネはすごい頑張ってます。
「そこで早急に作業員と警備の増員をとのことです」
「了解です。既に王都に集まり、声がかかるのを待って待機している方も居ますし、彼らに伝えてすぐに向かってもらえるように調整します」
「ありがとうございます」
「あ、それと、温泉施設の図面が今朝上がってきたので確認していただけますか?」
おお!
もう出来たのか!
クラリス嬢は机に図面を広げた。ので俺は図面を確認する。
その施設は、まさに俺が列挙した温泉に欲しいエリアが詰め込まれた理想の温泉施設の図面だった。
「すごい!まさに俺が頭に描いていた温泉そのものです!」
「それはよかったです♪ではこの図面に従って作業するということで、着工の手配もかけますね」
「よろしくおねがいします」
「それと、全てが前倒しになるということは、ボードゲームの大会も前倒しになりそうですし、遅くとも大会開催の半月前には告知を出せるように手配する必要があると思うのですが、そちらの方はどうなっておりますか?」
あっ!そうじゃん!
大会は都市の完成に合わせて開催する予定だった!
早まるってことはそっちも早めに準備しないといけないのか。
「現地に戻ったらトルネさんと相談して、完成の予想がら逆算してみます」
「よろしくお願いします」
俺も一気に忙しくなっちゃったな。
ってか、トルネさんにこれ以上仕事を振るのは気が引ける……。
※ ※ ※
女傭兵はハロル王子にスズヤに関して見てきたことを報告に来ていた。
「スズヤが王都に帰還したのでついでに報告に来たわよ」
「そうか。それで?何か収穫は?」
「あなたが想定している以上の大物かも知れないわね」
「ふむ。見てきたことを詳しく効かせてもらおうか」
「スズヤは見たことも無い魔導ゴーレムを操っていたわ。ダンジョン産の相当高位のアーティファクトか世界有数の魔道具技師か錬金術師の作品でしょうね」
「ふむ……」
「それと、スズヤの従者に関しても情報を訂正するわ。老人と赤髪が強者だといったけど、10歳前後の少女二人も恐らく規格外よ」
「……」
「ほぼ一日中、あの岩石地帯の堅い岩や岩盤の大地を金属製のスコップ1つで掘り進んでいたわ。体力だけなら既に私以上かも」
「……」
「そして赤髪の少女に関してだけど、あれの察知能力は化け物ね。数キロ先の森の中で、この隠蔽のローブを使用していても察知されていた気がするわ」
「……」
「少女二人が傭兵で言うとB~A並み、赤髪はA~S以上。そして老人は私と同等以上かも知れないわ」
「わかった。もういい。十分だ……。頭が痛くなってきた……」
「そんなやつらとパーティーを組み従えてるなんて、俄然スズヤに興味が沸いたわ!」
「……絶対に手を出すなよ?」
「出さないわよ。私は戦闘狂でも暗殺者でもなくて傭兵よ?まぁ依頼次第では人と戦うこともあるけれどね?」
「俺はそんな依頼は出してないからな。敵対したら無縁の傭兵ということにさせてもらうぞ」
「だからそんなことしないってば!」
所持金 金貨598枚 銀貨3枚 黄銅貨7枚 青銅貨3枚
ここまでお読みいただきありがとうございます!
面白いと思っていただけたら、ブックマークや評価をいただけると励みになります。
誤字脱字等ありましたら、お気軽にご報告いただけると嬉しいです。




