42話 源泉引き込み作業
「はぁ~!やっと着いたぁ~!」
俺は馬車を降りて背伸びをしつつ声を上げる。
久々の馬車旅で体のあちこちに疲れが出ていた。
馬車を降りて現場を見ると、既に先に到着した作業員と、警備の者たちが沢山のテントを張り、周辺の警戒と仮設住宅の設営を始めていた。
「おー。いよいよ始まるって感じだね」
現場を眺めていると俺らの到着に気が付いたトルネがやってきた。
「お疲れ様です!」
「うん、お疲れ様。無事作業を開始できたみたいだね」
「ええ!これからおよそひと月かけて整地と仮設工事、そして外壁工事の完成を目指していきます。その後は一気に作業員を増やして、半年後には完成の予定ですよ」
へぇ~。たった半年で街ができるのか。
よく見ると高所に物を浮かせて運んだりしてるし、魔法を使いながらの作業ができるから建築速度は元の世界よりも速いのかな?
「スズヤさん達はこれからどうするんですか?」
「俺は建築に関しては専門外だし、とりあえず源泉を近くまで引いてくるのと、周囲の安全確保ってところかな?」
「安全が確保されるだけでも作業に集中できるので助かります!昨日も近くでロックイーターが見つかって、護衛の方達が討伐してくれましたが、生きた心地がしませんでしたし……」
ロックイーターかぁ……。
俺もあの大きな口で食われかけたときは生きた心地がしなかったなぁ……。
「あ、源泉を引き込む場所でしたね!案内します!」
トルネに案内されて予定地の北東区画にやってきた。
ここらはまだ整地も手付かずらしく、荒れた岩場が広がっている。
「この辺りまで外壁と堀になる予定なので、この向こう側まで引いて来てもらえれば助かります!」
ふむふむ。
ってことはあの場所からだからざっと4~5kmってところか?
なかなかに遠いな……。
昨夜寝る前に【ふるさと納税】のリストを見ていて、よさげなアイテムを見つけたから源泉を引いてくるくらいは手伝おうと思ったけど、流石に無理かも?
でも未来の温泉ためだ!一日でも早く温泉を楽しめるようにするためなら、日本人の俺は頑張れる。
エン爺に乗って移動するわけにもいかないのでのんびり歩いて源泉を掘った場所へと向かう。
その道中で歩きながら【ふるさと納税】のリストを開きチェックしてゆく。
そして歩くことおよそ1時間。
先日エン爺が穴をあけ、湯柱が噴き出しているところに到着した。
さて、まずは必要な物を購入っと。
・ミニショベル 8百万円
ながく使えるミニ。
基本的な作業性の向上、一段と磨きのかかった操作性、そして、卓越した耐久性を実現。
日常点検を簡単に、より効率的に行えるメンテナンス機構。
グローバルで培った安全性と環境性能などの技術をフィードバックし、小さいボディにぎゅっと詰め込みました。
ずっと使っていただけるミニショベルは、いつもあなたのそばにいます。
【精密操作】
【万能掘削】
【衝撃耐性】
【物理耐性】
【熱耐性】
【酸耐性】
【腐食耐性】
・陸上自衛隊規格 戦闘スコップ 5万5千円
自衛隊に納めていた製品だけあって、携帯用とは思えないほど丈夫なスコップとなっております。
また使い方によって、シャベルだけではなく、鍬、簡易ハンマー、としても使用することが可能です。
小さく折りたためば車の中に常備しておくことも可能です。
ソロキャンプ、山登りで活躍すること間違いなし。
【不壊】
【万能掘削】
ミニショベルを購入し目の前に現れた瞬間。シアは目を輝かせていた。
あれ?エルはこういうのあまり興味ないのか。
スコップは大きなものがリストになかったから、エン爺には少し小さいけどごめんね。
俺は早速ミニショベルに乗り込み、エンジンを点火!
ブルルン!と低めのエンジン音がし、ミニショベルが動き出す。
「「「「おお!」」」」
機械仕掛けの乗り物なんてこの世界にないもんね。
動くのを見たら驚くよね。
さて。来た道を戻りながら掘っていけばいいから、始めますか。
「俺がこいつで大きめの水路を掘っていくから、みんなは周りを整えたり、水路に残る瓦礫や土、岩を取りのぞいて行ってくれるー?スコップが小さいのしかないからエン爺はみんなの作業を見守りながら周囲の警戒をメインでよろしく」
「うむ」
ミニショベルで地面を掘るが、まるで反発を感じない。
【万能掘削】のおかげで岩も地面もお構いなしにサクサク掘り進められる。
後ろからついてきている4人もスコップでサクサク水路を整えていってくれている。
うん。この調子なら今日中に近くまで引き込めそうだね。
流石にミニショベルを作業員や警備の人に見られるのはまずいから1kmくらいまで近づいたら俺もスコップに持ちかえだな。
それから4時間ほど掘り進め、1.5kmくらい堀り進めたところで昼食休憩。
昼食は手料理を振舞うことにした。
というよりも俺がどうしても食べたくなったから作ることにしたのだ。
その料理は牛丼!
シンプルで美味しくて、たまに食べたくなるんだよなぁ。
社会人になって食事の時間が取れないときなんかには、すぐ食べれて時間も取られないし何度も世話になったなぁ。
早速【ふるさと納税】ですき焼き用の牛肉を購入!
玉ねぎは以前BBQで購入した時のが余っているからそちらを使う。
そしてお米!!やっぱ米は定期的に食べたいんだよねぇ。
こちらはレンチンで食べれるパックご飯を購入。
皆には待っている間に摘まめるように果物と、エン爺にはノンアルコールビールとおつまみを渡しておく。
エン爺なら問題ないだろうけども、流石に作業の間はお酒はちょっとね。
まず玉ねぎを串切りにして炒める。
そして水、醤油、みりん、酒、砂糖、しょうがを投入!
沸騰して酒とみりんのアルコールが飛んだところでお肉を投入~!
ここからはお肉が硬くならないように、弱火でゆっくりと火を通していく。
お肉に火が通りきるまで、丁寧に灰汁を取って15分ほど煮込んだら完成!
レンジでチンしたご飯を器によそって、たっぷりと煮込んだ牛をかけたら、紅しょうがを添えて、完成~!
シンプル簡単男飯!!
さぁ召し上がれ!
「ふぁ!?お肉やわらかい!!美味しい!」
「ん~。美味しい~」
ふふふ。肉好きのシアはもちろんのこと、エルも気に入ってくれたようだな。
「美味い!これがBBQの時と同じ牛の肉か!?同じ牛でも料理でこれほど違うとは。それにこの添えてある赤いのもさっぱりとしていて美味いな!酒に合いそうだ!!」
「紅ショウガね。それを天ぷらにすると酒に合うよ~」
「ほう!天ぷらがどんなものか分からぬが、いつか食えるのを楽しみにしておる!!」
ふふふ。エン爺は絶対好きだよ。
紅ショウガの天ぷら。
今度作ってあげるか~。
「ん~。うまい!やっぱつゆだくは最高だね!たっぷりつゆを吸ったご飯が美味しい!!」
それから俺は牛丼を1杯お替り。シアは2杯もお替りしていた。
その小さな体のどこにそんなに入るの?
育ち盛りだからいっか。いっぱい食べてくれ!
ライアは希望を聞いたら「林檎」というのでいつものように林檎をひと箱出してあげると黙々と林檎を齧っていた。
ほんとに林檎大好きだよね。
お茶を飲みながら食後の休憩をしつつ、皆に疲れてないか確認してみる。
俺はミニショベルを操縦してるだけだけど、みんなは小さめのスコップで手堀りだからね。
「我はなんということはないな」
「サクサク掘れてたのしー!」
「みんなで一緒にやるの好き!」
うんうん。楽しそうなら良かった。
「ライアは?ライア?」
ライアは林檎を手に持ったまま、3~4km程先に見える南東の森の方を見つめていた。
「ん?」
「あそこに何かいたの?」
「ん。人が居た」
うーん。遠すぎてまったくわからん。
禁足域が解放されたから都市開発に関係ない傭兵の人もいるだろう。
それにこっちから見ても木があるなぁ、ってくらいしかわからないから、ミニショベルが見られたとしてもごまかせるはず。
その後、午後も作業を続け、夕暮れ前には新都市から1km程のところまで進んでこれたので、今日の作業はここまでにした。
思った以上に早く進んだな。
※ ※ ※
「なにあの魔道具!?動くの!?岩や岩盤を易々破壊する可変型のゴーレム!?そんな魔道具なんて見たことも聞いたことも無いわよ!?」
傭兵の女は森の中からスズヤたちの監視を続け、驚愕していた。
スズヤは大したことないと思っていたけど違う。
あれほどの魔道具、世に出ていれば知られていないはずがないわ。
秘蔵の魔道具?
しかしあんなものを一体どこで……。
はっ!まさかダンジョンか!
それとも高名な魔道具師や錬金術師に作ってもらった?
……どちらにせよ、余程の力か人脈、資産が無ければあんなものを手に入れることは不可能。
まさかこれほどの奴だったなんて……。
普段見せている冴えないおじさんの姿は偽装ということね……。
スズヤ=ミナト、侮れないわ!!
傭兵の女性はスズヤの評価を一気に格上げした。
所持金 金貨601枚 銀貨8枚 黄銅貨7枚 青銅貨3枚
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