39話 温泉施設の計画案
「ただいまです」
俺はそう言ってエン爺の背中から飛び降りた。
続いてシア、エル、ライアが飛び降り、最後にディルとクラリスがヴァンスに手を取られエン爺の背中から降りた。
「皆様、お帰りなさいませ」
「お帰りなさい」
ヴァンスとトルネが出迎えてくれた。
「戦争は止められそう?」
トルネが心配そうな様子でそう問いかけてくる。
「うん。大丈夫だと思うよ。戻ってくる前に上空からも確認したけど、フリーゲル王国の兵は解散してたみたいだから」
まぁエン爺から数発威嚇ブレスを間近に落とされれば誰だって逃げ出すよね……。
「父が密偵と連絡を取ったところ、戦の兆候は消え去りフリーゲル王国軍内部は獄炎龍の怒りを買ったか原因が分からず、指揮系統まで大混乱して右往左往の大パニックだとの報告を受けたそうです」
「えーと、軍全体が大混乱するとは、エン爺さまは一体どんな脅し方をされたのでしょうか……」
「我は少々威嚇しただけに過ぎぬぞ?」
即死級ブレスを数発で少々……?
「まぁひとまず危機は去ったので、エクレール公爵様は予定地周囲を警備するために兵を派遣する準備を進めてくれています。これで予定通りに都市計画は進められそうなので、明日には出発して問題ないと思いますよ」
「流石です!私も必死で準備を進めて来た甲斐があります!!先発として明日の朝、早速商会の馬車が5台を現地に向かわせる手筈が整っています。4台はマジックバッグを隠すためのカモフラージュの為の馬車で。全てがうちの商会員と専属の護衛になります。そして夕方追加の馬車を用意でき次第、更に5台の馬車を向かわせます。こちらは商会員と護衛は緑の目のお二人になります。この2商隊は現地に大型倉庫が完成するまでのおよそ1か月の間、継続して往復してもらう予定です」
「なるほど。大型倉庫さえ完成したらマジックバッグをごまかすための商隊は必要なくなるってことか」
「その通りです!あとは各地から集められた職人を現地に送るための馬車を毎朝1台フランゼ商会から出します」
「ええ助かります。エクレール公爵家でも職人の往復用の馬車を出す予定ですのでこちらは毎日夕刻に1台出す予定です」
「それで!現地での計画なのですが――」
「話が長くなりそうでしたらお茶を用意しますので、続きは是非屋敷のなかで」
ヴァンスさんナイス!
トルネさんはスイッチが入ると止まらなそうだから助かった。
その後、応接室に案内してもらい、明日以降の予定を話し合い、というかトルネさんとクラリス嬢で打ち合わせて取り決めてた計画を説明してもらった。
うん。二人とも凄いね。
俺が居ない間にそこまで話を詰めていたなんて、驚いたよ。
「それでスズヤ様。メインとなる温泉は、この規模の土地を確保しておりますが不足はありませんか?」
どれどれ?
800m×600m?
ん?一桁見間違えたかな?
……。
いやいや広すぎる!!!
日本のスーパー銭湯ならそれくらいか……?
「十分広いかな?」
「良かったです♪ではスズヤ様が温泉に必要と思われる案を確認し、設計士の元に持ち込み打ち合わせしてまいりたいと思います」
ひぃぃ。
なんかめっちゃ重要な仕事が残ってた!!
俺は必死に重い出せる限りの案を羅列した。
まずは当然温泉エリア。
温泉は男女どちらにも大浴場、子供風呂、水風呂、露天風呂を完備。
更にスチームサウナと岩盤浴。
炭酸泉とか電気風呂とかは再現できないので諦めた。
サウナも説明したけど皆はピンと来ていない様子だった。
トルネに「高温の蒸気を充満させた部屋に裸で入り数分籠るんですか?その後は逆に冷水に……?スズヤさん。それは拷問ではないのですか?」とまで言われてしまった。
確かに息苦しいし数分で出たくなるけど!冷水も最初はめっちゃ冷たいけど!
サウナに入って水風呂に入ってを繰り返すのはめっちゃ気持ちいいんだよ?
これは体験してもらわないと口で説明するのは難しい。
あかすりと全身マッサージが受けられるリラクゼーションエリア。
足つぼマッサージも提案したが、反応が微妙だった。
足の裏のツボを刺激して、めっちゃ痛くて声が出るけど、血行とかを促進すると説明するも。
今度はクラリス嬢に「それは拷問でしょうか……?」と言われてしまう。
違うんだよ?俺が辛いのとか痛いの好きとかじゃなくて、ほんとに効果あるからね!?
俺は辛いのとか痛いの大嫌いだからね!?
温泉エリアを出たところには冷たい飲み物、出来れば牛乳関連を置きたい。
「「なぜ牛乳?」」と二人に牛乳を指定した理由を聞かれて俺は言葉に詰まった。
そう聞かれると俺も困る。風呂上りと言えば牛乳ってイメージなんだ。
あまり突っ込まないで……。
そして広々とした食堂と休憩所を備えた飲食エリア。
施設に入る飲食店は最初は抽選制で受け入れて、その後は数か月置きに人気に応じて入れ替わり制とかにしてみたら出店を望む飲食店の競争にもなって、街の――延いては国全体の食のレベルも向上を図れないかな。
国内だけでなく国外からも出店を受け付けても面白いよね。
敷地も広いから屋外にBBQをできるエリアも設置してもいいかもね。
あとは施設を利用しなくても足湯に浸かれるところを設けてもいいね。
温泉の次の目玉としたいのは多くのボードゲームを設置したプレイエリア。
このエリアは未来の展望としては、娯楽品をもっと増やしていけたらいいよね。
オープンに合わせて、麻雀を追加で設置してみるかな?
経済観や社会観、紙質が理由で出せないけど、モノポリーや人生ゲーム、トランプ、TRPGとかもこういう場には合いそうそうだから、いつか広められるといいな。
ボードゲームエリアの隣には温泉には絶対の外せない卓球エリア!
温泉といえば卓球だよねぇ。え?少し古いって?
最後にお土産エリア。
名産品や特産品を購入できるエリアを設けて、この街に来た記念として買って帰れるようなものを並べた店を用意する。
ここはトルネさんに丸投げしよう。
俺はこの国の名産とか名物とか分からないしね。
施設は二階建てにして、二階部分は全て宿泊施設にして個室に小さな露天風呂を1つずつ完備。
家族、友人、気の置ける仲間と共に訪れて気軽に過ごせるためにプライベート空間として宿泊できる部屋を用意する。
宿泊客は温泉やプレイエリアの利用料はもちろん無料ね。
完全な娯楽施設になるから世間の目が気になる貴族や他国からの渡航者向けに、ルームサービスも完備したらお忍びの利用にも喜ばれそうだよね。
あと、宿泊客と入浴利用者には浴衣も貸しだそう。
そして重要なのが、温泉では貴賤上下を語るのは絶対にご法度だということ!
権威とは衣の上から羽織るもの。
温泉施設の利用者はたとえ王族や奴隷であっても平等に扱うこととする。
これは絶対だ。
高貴な人にもこの施設では無駄に品位を気にしたりせず一人の人として寛いでほしいし、身分の低さで苦しむ人もここでは気兼ねなく楽しんでほしい。
「俺が提案したいのはこんなところかな?」
流石に要望を詰め込み過ぎたかな?
「「素晴らしいです!!!」」
「施設内をエリア分けすることで効率的に利用者の誘導を図るのですね!!温泉施設でありつつもボードゲームの宣伝も兼ねており!更に飲食エリアを設けて店舗を呼びこむという方法は画期的すぎます!!入れ替えを示唆し競争を計ることで生き残るために店舗同士が切磋琢磨し続ける状況を作り上げるなんて!!」
「私は施設の利用者は貴賤上下なく過ごすというところに感銘を受けました♪公爵家のクラリスとしてでなく、一人のクラリスとして過ごせることを想像すると最高です♪一階に全ての娯楽エリアを集中させて、二階は全て宿泊施設にするというのもいいですね♪そしてプライベートの露天風呂♪お風呂好きな私にとっては夢の空間です♪」
うんうん。二人とも結構気に入ってくれたみたいだね。
娯楽の少ない世界だからこそ、来た人に楽しんでもらえるような場所にしたいよね。
最後に、源泉の問題を二人にも伝えておく。
引いてきた温泉を街に引き込んで、湯畑をつくり、湯もみすることで温度を適温まで下げて利用すること。
湯畑や湯もみの様子は隠さずに、あえて堂々と表に晒して見せることで、温泉の街というインパクトを示すこと。
源泉の水量は豊富なので、街のすべての建物にも温泉を引き込んで利用できるようにすること。
「温泉について俺が語れるのはこれくらいかな?」
「わかりました。私は明日の朝、早速施設の設計をしてくれそうな方の元に向かい、草案をまとめてきますね」
クラリス嬢。代官としてとっても逞しい。
「私は現地へ向かう作業員の方々へ伝えておきます。まずは整地と街を囲う外敵対策の城壁の建設から開始する予定ですので。何だかこれから計画が始動するって考えると、とても楽しくなって来ましたね!!」
トルネさんは張り切り過ぎて倒れないか俺は心配だよ。
無理し過ぎないようにね?
癒しの場を用意するために限界を超えて働いて、精魂尽き果てて過労で倒れるとか絶対だめだからね?
ブラック企業はダメ!絶対!
ワーカホリック気味のトルネさんのストッパーになるものを何か考えないと。
止められるか……?
トルネさんは私生活を捨ててでも仕事に打ち込もうとする、生粋のワーカホリックのきらいがあるんだよなぁ……。
所持金 金貨1453枚 銀貨7枚 黄銅貨7枚 青銅貨3枚
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