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ふるさと納税で気ままな異世界生活?  作者: 瀬良・B・月季
2章 新都市開発編

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36話 戦争回避

新人訓練を終えてギルドを出た俺たちは、アレク達と解散し宿に向かった。


街の中はいつもより人が多く、とても賑わっている。

禁足域を解放した影響で、情報を得ようといろんな人が集まってるのかな?

王都ってこんなに人が居たんだ。

いや、王都だから人は元々多いんだろうけど、ファーランド王国はなんていうかのんびりした雰囲気だったんだよね。


いつも宿泊していた宿に到着し、早速部屋を取ろうとすると。


「大変申し訳ありません。今朝から長期予約を取りたいというお客様が殺到しておりまして……」


数か月先まで予約が埋まりそうな勢いで、当分部屋の空きが出ないといわれてしまった。


失敗したああああ!

そうだよ。

これだけ賑わってるんだ。

禁足域に一番近い王都の宿なんて埋まるに決まってるじゃん!!

王都に戻ってすぐ宿の確保をしておくべきだった……。


念のため、空きがありそうな宿が無いか確認してみるが、どこの宿も同じ状況だと思う。傭兵向けの雑魚寝部屋なら入れてもらえるところはあるかもしれないといわれた。

雑魚寝部屋とは一部屋に10人や20人押し込められて泊る部屋らしく、本当に寝るだけのために泊る格安の部屋のことらしい。

盗難やスリ似合う可能性も高いので、あまりお勧めできないといわれる。


そんな部屋に泊りたくないし、なによりシアとエル、ライアをそんなむさくるしい場所に絶対連れていきたくない。


日も落ち始めたなか、今夜の宿をどうしようか。

いっそ、王都の外に出てトレーラーハウスで寝泊まりするか?

宿より快適だしその方が気楽でいいかも?

とか考えながら街中を歩いていると、ばったりトルネに出くわした。


「あれ?スズヤさん。どうしたんです?難しい顔して?」


「トルネさん。実は――」


出遅れてしまい、数か月先まで宿の部屋が取れなくなったこと。

マジックバッグに簡易的な家があるから暫く王都の外で寝泊まりすることになるかもということを伝える。


「あちゃー。それは参りましたね。家を出せるとはいえ、王都の外だと何かと不便ですよね」


「そうなんだよねぇ。トルネさんやクラリス嬢とやり取りしづらくなると今後に差し支えるからなぁ」


「うーん。うちに泊めて上げられれば良かったんですが、空いてる部屋は商会の倉庫代わりに使ってて荷物でいっぱいですし……。数日待ってもらえば片付けられそうですけど。あ、クラリス様に相談してみては?スズヤさん達なら泊めてくれるんじゃないですか?」


「えぇ……。公爵家に泊めてくれって言うのは流石に図々しいというか」


「その気持ちはわかりますけど、顧問としてこれから一緒に仕事をするわけですし、クラリス様からしても相談役のスズヤさんが近くに居た方が、何かと都合がいいと思いますよ。今夜エクレール公爵様も王都邸に戻られるとのことでしたし、私も顔合わせを兼ねて挨拶に向かう予定ですので、一緒に行きましょう!」


それからトルネの仕事が終わるまで、フランゼ商会の応接室を借りてシアとエルにボードゲームを教えてみんなで遊びながら時間をつぶし、トルネと共にエクレール公爵様に赴くことになった。





そういえばエクレール公爵家の馬車に乗らずに貴族街の入り口を通るのは初めてだな。

俺ら通してもらえるのか?


トルネが商業ギルドのギルド証を提示したので、俺も真似てギルド証を提示する。


すると衛兵は俺の後ろに控える顔を確認し頷いた。


「エクレール公爵様とクラリスより君たちのことは聞いている。だが、そこの少女二人の話は聞いていないので通すわけにはいかない」


そうか。

シアとエルを連れてくるのは初めてだった。


「彼女らはスズヤさんの奴隷だから問題ないはずですが?」


「奴隷?隷属のチョーカーを付けてないのにか?まさか違法奴隷とは言はないよな?」


衛兵は訝しむ様子で俺とシア、エルの顔を覗き込んできた。


うーん。奴隷と証明できるなら通れるのか?

だったらあれを見せれば?


「いえ、嘘ではありません」


ヘイゼル侯爵から二人を引き取るときに受け取った奴隷の所有書を鞄から取り出して衛兵に見せる。


「ふむ。確かに。証書は本物のようだ。だがこの証書は数日前に書かれた物だ。何故隷属のチョーカーが既に外れているんだ?証書によると彼女らは戦争奴隷とある。労役の義務を果たさず解放することなどありえない」


くそ!

チョーカーが外れたのは偶然の事故だけど、外れた状況を説明しようがないし、なんていえば信じてもらえるんだ!?

実際に見せる?いやいや、理由は分からないけど何故か奴隷を強制解除できるアイテムを持ってます!とかいったら俺が捕まりかねない!どうする?


困り果てていると後ろに1台の馬車が止まった。


「スズヤ様。こちらで何を?」


聞き覚えのある声に振り向くと、ヴァンスさんが御者台から話しかけてきていた。


そしてヴァンスさんが操る馬車からエクレール公爵様が下りてきた。


「やあスズヤ殿。久しぶり。何か問題でも?」


エクレール公爵に二人の奴隷をヘイゼル侯爵から引き取ったこと、偶然の事故で隷属のチョーカーが外れてしまい奴隷の証明ができず二人を貴族街に連れて入る許可が降りないことを説明した。


ヘイゼル侯爵から奴隷を引き取ったというところで若干眉をしかめていたが、おおむね納得してくれたらしく、衛兵に「この二人がスズヤ殿の奴隷であることは私が保証する」と言ってくれて、シアとエルは無事に貴族街に入れてもらえることになった。


「では私は先に屋敷に戻って待っているよ」


「ありがとうございます」


問題を解決し、エクレール公爵が馬車に戻ると、ヴァンスさんは馬車を動かし、エクレール公爵を乗せた馬車は颯爽と走り去っていった。

通行許可が取れたので、俺たちも馬車の後を追って貴族街を進んだ。




貴族街に入り10分ほど歩き、ようやくエクレール公爵家に到着すると、ヴァンスさんが門の前で待機していてくれた。

そしていつものように部屋まで案内してもらう。


部屋に入るとエクレール公爵とクラリス嬢、そして知らない青年が一人待っていた。


「先ほどはありがとうございました」


まず俺はシアとエルのことで助けてもらった礼を伝えた。


「いやいや、あれくらいどうということはないさ。まずは初顔を紹介しようか。こちらは長男のヴァンです」


そういってエクレール公爵は隣に立つ青年の方を見た。


「私はディル=フォン=エクレールです。以後お見知りおきを。父と妹がお世話になっていると伺っております」


「私はスズヤ=ミナトです。お世話だなんでとんでもないです。私の方がお二人にはお世話になっております。エクレール公爵は初めてお会いになりますよね?こちらはフランゼ商会会頭のトルネさんです」


「お初にお目にかかります。フランゼ商会会頭のトルネと申します。クラリス様から御用商人として徴用していただいております」


「うん。君のことは聞いているよ。娘が世話になるだろうからよろしくたのむよ」


「ありがとうございます。御用商人に選んでいただいたこと心からの感謝を申し上げます。商会を挙げて協力させていただく所存です」


「ありがとう。もっと気楽にしていいよ。私は堅苦しいのが少し苦手でね」


ガチガチにかしこまったトルネの様子を見て、エクレール公爵は笑みを浮かべつつそう言った。


「はい!かしこまりました!」


うん。トルネさん。緊張しまくってるなぁ。

トルネさんの緊張が解けるまで、先に話を進めておくか。


「エクレール公爵様。今朝禁足域の解放が発表されましたけど、着工開始は何時ごろの予定ですか?」


「それなんだけどね、本当は3日後に先発を現地に向かわせて、10日後には着工する予定だったんだ」


だった?

ってことは何かトラブルが?


「実は、職人の手配は問題なく済ませられて十分な人数を確保できたのだけれど、護衛の数が足りなくなりそうでね」


「傭兵が禁足域の解放で集まらなかったとかですか?」


「それも理由にはあるから。でも元々我が家の私兵を護衛として派遣する予定だったんだ。しかしそれが叶わなくなった」


元々兵を送る予定だったのが、無理になったってことは。


「うん。スズヤ殿は察したようだね。フリーゲル王国との国境周辺の動きが急にきな臭くなってきてね。私は兵を集めて領地の指揮に籠ることになりそうなんだ。そこで私の代わりにヴァンを王都において行くことになった。ディルは既に領主として独り立ちしていてね。この子に与えている領地は北の国境付近だから今回は関係がないから私の代わりに王都でクラリスを支えてもらうために来てもらったんだよ」


戦争……。

フリーゲル王国め、ほんとにろくでもないことしかしないな!


「……戦争がはじまるんですか?」


「残念だけどその可能性が高いね。密偵の情報によると軍の規模は1万前後になるらしいから戦争というよりも小競り合いといった規模を予想している」


1万は小規模ってことか。

でもそれだけの数の人が戦えば少なからず犠牲はでるよな。

どうして戦争なんていう、無駄に血が流れるような非効率的な手段を頼ろうとするんだ。

人の命を何だと思ってるんだ!


「スズヤ殿。君の気持はわかるよ。私も同じ気持ちだからね。でも戦を仕掛けられたら民を守るためにこちらも迎え撃つしかない。だからスズヤ殿、トルネ殿、どうかクラリスをよろしく頼む」


エクレール公爵は万が一のことも考えて、俺とトルネさんと顔を繋がせるために後継者のディル様を連れてきたんだろうな。

ほんとに戦争なんて誰も幸せにならないから胸糞悪い。

戦わずに済む方法がないんだろうか。

フリーゲル王国の兵がファーランド王国に来れなくなるようにする方法があれば。

ん?これなく?


「あ。上手くいけば戦を回避できる方法があるかも!」


「ほう!妙案があるならぜひ伺わせてもらいたい」


「ファーランド王国は獄炎龍が居なくなったのを確認したから禁足域を解放したんですよね?そしてそのことは今朝国中に知れ渡っていると」


「そうだね」


「獄炎龍がエクレール公爵領とフリーゲル王国の間に移動したならどうなります?」


「……なるほど。フリーゲル王国は獄炎龍の怒りを買うのを恐れて流石に手を出せなくなる……と」


「エン爺」


「うむ。我が敵国の領地上空で目立つように飛び回れば良いのか?」


「いや、それだと領民が怯えちゃうから、関所の付近だけにしておこう。エクレール公爵様。関所の兵にエン爺を攻撃しないように通達願えますか?」


「もちろん。というか、我が国の国民であれば、獄炎龍なんて報復を恐れて誰も手を出さないよ。見ただけで戦意を喪失する者が大半だろうね」


ってことはエン爺を見ても辛うじて戦意を維持してた龍の牙の4人はめっちゃすごい?



「あの、すみません。話が見えないのですが、そちらの方は?」


エン爺の正体を知らないヴァンは困惑していた。


「我はスズヤ殿にエンの名を賜った獄炎龍。我のことはエン爺と呼ぶがよい。今は人化して人の姿で過ごしておる」


「なっ!?まさか本物の!?……なるほど。スズヤ殿が従魔にしたので獄炎龍は龍の巣から離れ、父上はそのことを知っていたから陛下に進言して禁足域の解放が成ったのですね。王都付近に獄炎龍が現れたという情報から、こんなに早く禁足域の解放がされたのは妙だと思っていたのですが。ようやく腑に落ちました」


今の話だけでそこまで理解できるなんて、ヴァン様はなかなかに頭が回る方みたいだな。

それにエン爺の正体を知ってもほとんど取り乱すことも無く冷静だし、流石エクレール公爵様の跡継ぎだ。




※  ※  ※



翌朝。

フリーゲル王国とファーランド王国の国境付近で獄炎龍が旋回する姿が多くの兵に目撃され。

獄炎龍がフリーゲル王国領土に集まる兵たちに向けてブレスを吐き、大地に大穴を空けたという情報が両国の兵の間で一気に広まることとなった。






所持金 金貨1772枚 銀貨8枚 黄銅貨7枚 青銅貨3枚

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