33話 海鮮BBQとトレーラーハウス
「ふふっ。俺はもう大丈夫だぜっ!空の旅もいいもんだな!」
地面に降りたとたん調子を取り戻したアレクがなんかいってる。
「はぁ~。地に足が付くこの感覚、落ち着く……」
エレナはほんとに高いところが苦手みたいだ。
シアとエルはエン爺の背中からピョンと飛び降り、「楽しかった!」「また飛びたい」ととても元気な様子。
二人からするとジェットコースターに乗るような感覚だったのかな?
「ライアちゃんもツタをびゅーってすごいね!」
「落ちないようにしてくれてありがとう!」
「ん」
うんうん。
二人はライアにも抵抗は無さそうだね。
「んじゃBBQの用意をするから周辺の警戒は任せるよ。シアとエルとライアは俺の手伝いをよろしくね」
「「はーい」」
「ん」
前回は肉メインだったから今回は海鮮メインでいこうかな。
海老にホタテ、アワビにサザエ、大粒のハマグリ、そして目玉として飛び切りの海鮮を2つ用意!!
ちゃんと野菜セットと、ライア用に果物も。
今日は果物も趣向をこらして、焼いても美味しいだろうと思えるものを選んで用意してみた。
ライアだけ未調理の食事を続けるのはなんか仲間外れにしているみたいでちょっと寂しいからね。
用意したのはパイナップルにリンゴ、そしてバナナだ。
もちろんどれもそのままでも十分美味しい。
飲み物はもちろんビール!それとエン爺や酒好き用に日本酒とウイスキー。
子供たち用に果汁100%のミカンジュースとリンゴジュース、ぶどうジュースも用意した。
BBQコンロを大人用に4つと子供用達用に2つ用意し、炭に火を入れていく。
その間にクーラーボックスを複数用意して飲み物を冷やし、果物も半分はクーラーボックスへ。
詰め込み作業と机にお皿などを並べる作業は子供たちに手伝ってもらった。
3人とも見たことのない食材や果物に目を輝かせながらキャッキャとしつつ、楽しそうに手伝ってくれた。
見ていて癒される。
いい感じに炭が温まってきたところで全員に声をかける。
「おーい!準備できたぞー」
待ってましたと言わんばかりに駆け寄ってきたのはアレクとエレナ。
もう空の旅で削れたメンタルは回復したみたいだ。
「「おおおおおお!!」」
「今日は海鮮か!?山と森ばかりのこの国で新鮮な海鮮を食えるとか夢みたいだな!!」
「すごい!こんなに大きな貝みたことない!絶対おいしいやつ!!」
「みんな好きな物を網の上で焼いて食べていいぞー。飲み物はクーラーボックスに入ってるから好きなのを持って行ってくれ」
「あぁ♪この冷えたビール♪暫くぶりです♪」
「うむ!」
マリアとガイは早速ビールか。
おれも焼いてる間に1本あけて、と。
「くぅ~!キンキンに冷えてやがる!!犯罪的だ!!」
俺はビールを飲んでついテンションが上がり、有名なセリフを口走る。
「えっ!?スズヤさんの世界ではビールを冷やして飲んだら犯罪なのか!?」
アレクが俺の言葉をそのまま受け取って反応してしまった。
いや、うん。ごめんて。
「俺の世界の漫画っていう娯楽作品の有名なセリフでね?つい口走っただけだから気にしないで」
自分で説明させられる恥ずかしさ!!
めっちゃつらい!!
皆が各々に好きな海鮮を選んで焼き始めた頃、ライアは一人ベンチに座って切り分けてあげたパイナップルを食べていた。
ライア的には特に気にせず好物を食して楽しんでいるんだろうけど、やっぱ同じものを食べられないのは見ていてちょっと寂しいよな。
「ライア。ちょっとおいで」
「ん?」
食べるのを止めて、シアとエルが海鮮を焼いているBBQセットの前にライアを呼ぶ。
「実はな。今日用意した果物3種は焼いても美味いんだぞ?焼くと更に甘みが増すんだ。食ってみたくないか?」
ライアはそのままでも甘くておいしい果物が、更に甘くなるのを想像したのか涎を口からこぼしながら目を輝かせた。
「・・・・・・更に、甘く!!食べてみたい!!」
ライアは激しく縦に首を振った。
よしよし。食いついたな。
「シアとエルも食べてみるか?」
「うん!」
「食べる!」
「んじゃ3人とも好きな果物を網の上に並べて見てね。あっ!バナナの皮は剥かずにそのままでいいよ。焼いた後で焦げた皮を剥いたら甘くてホクホクになるからね」
「甘くて、ホクホク!?」
「あっ!ライアちゃん乗せすぎ!」
「そんなに食べられるの?」
「ん。果物は別腹」
いや、別腹もなにも。ライアは果物と野菜しか食べないよね?
ライアも混ざって、3人が楽しそうにBBQを始めたので大人組の方を見るとこちらも初めて食す海鮮に嬉々としたようすで盛り上がっていた。
「うんめぇ!!このほたて?っての噛むほどに味が出てきてたまんねぇ!!」
アレクはホタテをお気に召したか。
うんうん。ホタテの貝柱は噛めば噛むほど味が出て美味いよねぇ。
「この海老めっちゃプリプリでお肉みたいで美味しいぃ~!」
エレナのお気に入りは海老か。
炭火で焼くと一段と香りが増すし香ばしくていいよね。
「はぁ~♪このサザエという巻貝のつぼ焼きでしたか?コリコリした食感もたまりませんし、たらした醤油の香りがたまりません♪ほんのり感じる苦みもお酒との相性も最高です♪」
サザエのつぼ焼き美味しいよねぇ~。
サザエの肝の苦みは酒に合うんだよなぁ。
「うむ!!」
ガイのお気に入りはアワビか。
アワビも弾力があって噛み応えあるし、サザエとおなじく醤油を垂らして焼いたら美味しいよね。
「美味い!この大粒の貝の実に濃厚な味。貝殻に残った汁まで美味いぞ!」
おっ。エン爺はハマグリか。
しかも貝殻にのこった汁のうまさに気が付いてる。
初めて食べるのにそこに気が付くとはなかなかやるな。
子供たちもいろんな海鮮や焼いた果物の熱さに苦戦し、ハフハフしつつも美味しそうに食べてるな。
火傷には注意してね。
さて。場も温まってきたことだし、取って置きを出すとするか。
「みんなちゅうもーく!」
全員の視線を集めて、俺は隠しておいたクーラーボックスを取り出し蓋を開けた。
「こちらは今日のメイン食材!イセエビと蟹です!!ライアには最上級のクラウンメロンを用意したぞ!!」
「「「「「「おおおおおお!」」」」」」
俺はさっそくイセエビと蟹を網の上に並べていく。
すると俺の服の袖をツンツンと引くライア。
「ん?どうしたの?」
「メロンも焼いたら、もっと美味しい?」
「うーん。流石にそれは試したことないな……。そのメロンはそのままでもとっても甘く作られてるからそのまま食べてみて」
「ん!わかった!」
イセエビと蟹にいい具合に火が通り、皆の更に取り分けていく。
小金持ちになったとはいえ、流石にイセエビと蟹を食べ放題にするほど俺の財布のひもは緩くない。
「すごい!普通の海老よりも濃厚でプリプリで美味しいいい!!」
「この蟹ってのも、最初はちょっと蜘蛛みたいで食べるのに勇気がいったけど、めっちゃうめえ!!」
あーそうか。
アレクの言うように、海鮮に見慣れてないと蟹って蜘蛛に見えなくもないか。
実際、近縁種なんだっけかな?
「どちらもとっても美味しいです♪」
「うむ!」
「どちらも日本酒にとても合うぞ!」
シアとエルも少し冷まして食べごろの温度になったイセエビやカニを頑張って食べている。
「はふっ。はふっ。熱いけど美味しい!」
「海鮮好きー!」
ふふふ。みんな日本の海鮮の虜になってるな。
「さて、酒好きなエン爺とマリアさんにはここで蟹の特別な楽しみ方も教えてあげましょう」
そう告げると、二人は目を輝かせて俺に注目した。
俺は蟹の腹を手に取るとパカッと開けて身をほぐして取り出す。
そして蟹の腹を器に見立てて、日本酒を注ぎ、網の上へ。
すると蟹味噌と日本酒の香りが合わさり、更に炭で焼けた蟹の甲羅の香ばしい香りが辺りに漂い始めた。
「む!?この香りは!?」
「絶対美味しいです♪」
ほどほどに温まったところで蟹の腹の器を二人に手渡した。
「熱いから気を付けてね」
二人はゆっくりと口に運ぶ。
そして一口飲むと幸せそうな顔をして固まった。
そして一瞬の間を置いて声を荒げる。
「こんなうまい日本酒の飲み方があるとは!?たまげたぞ!?」
「幸せです♪こんなおいしいお酒を口にしてしまったては、もう街のエールなんかじゃ満足できません♪」
二人の様子を見ていたアレクとエレナが寄ってきた。
「なんだなんだ!?美味いのかそれ!?」
「うう!野営中はお酒飲まないようにしてたのに!二人を見てると我慢できない!!」
酒はそこそこなアレクと、それなりに好きだが我慢していたエレナも興味を示したらしい。
「護衛ならライアがいるから大丈夫だと思うよ。今日くらいはガイさんも羽目を外しては?」
真面目に食事を楽しんでいたガイにも声をかけてみる。
「……しかし」
「ガイも一緒に飲みましょうよ♪」
「……うむ」
マリアの誘いは流石に断れず、ガイも交え大人組は蟹の甲羅酒を堪能した。
その後、羽目を外し過ぎたエレナとマリアは泥酔し、元々酒に強くないアレクは青白い顔をしダウン。
エン爺は一人黙々と残った酒を堪能し、ライアは初めて食べる焼いた果物にハマったらしく、一人黙々と焼いて口に運んでいる。
そしてガイは3人の仲間のフォローに回って手を焼いていた。
満腹になり休憩していたシアとエルは、酒に負けてガイに介護される3人を見て「大丈夫?」「看病する?」と声をかけていた。
本当にいい子たちだ。
流石に収拾がつかなくなったので帰るのは諦めて夜営することに。
しかし、俺らだけならいいけど、シアとエルを危険な場所で夜営させたくない。
頑丈なテントのような物が【ふるさと納税】で売られてないかリストを確認する。
するとある物が俺の目に留まった。
トレーラーハウスのコテージだ。
とんでもなく高い。
しかしシアとエルを野宿させずに済むことを考えると、悩ましい!
高額なのだが、今は小金持ちの俺になら買えないことも無い額だ。
……背に腹は代えられない。
どうせため込んで使わないくらいなら、有益な買い物に使うに越したことは無いはず。
俺は勇気をだして購入を押した。
すると目の前に巨大なトレーラーハウスが出現。
いきなり家が出現したので、俺の能力のことを知らないシアとエルは完全に固まり、能力を知っているエン爺とガイも、流石に家が出てくるなど予想外だったのか目を見開き硬直していた。
危険な能力が返礼で付与されていないか早速鑑定で確認。
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おぉ……。
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なんかいろんな耐性付きまくってるし、これまで以上にとんでもないな……。
でも見たところ危険になりそうな能力はないし、むしろ快適性に特化した能力が沢山ついてるから寝泊まりする家としては安心できるか?
「よし、みんな。特に問題は無さそうだから、今夜はこの中に泊まろうか」
後ろを振り向いてそう告げると、ライア以外はまだ固まったままだった。
そんな中、「ん!」と、いつもの調子でライアだけは一人すんなりと納得し、一足先にトレーラーハウスの扉を開けて中へと入っていった。
※ ※ ※
その頃。
エクレール公爵家ではトルネとクラリスが新都期計画の話を詰めていた。
「――では必要資材などは概ね間に合いそうだということですね」
「はい。あとは工事に必要な工具類の予備と、建設作業員用の仮設宿舎に設置する家具類、それと定期便の手配ですかね」
「定期便の方は私の方で、貸し馬車屋を御者込みで一定数手配しておりますので、フランゼ商会の方では作業員の方々の衣食住を安定させることを優先で考えて用意してもらえると助かります」
「ではそのように手配いたします。あとは温泉ですね」
「スズヤ様の意見がお聞きしたいのですが、先日、ヘイゼル侯爵からの接触があったそうですし、色々面倒事も抱えて居られて、お忙しいですよね……」
「そうですね。スズヤさんは暇そうにしていますけど、秘密の多い方ですので陰で色々と動いているのかもしれませんね。先日も傭兵ギルドに顔を出していたようですし、今日も龍の牙の方々と王都北門から出ていく姿を見ました!スズヤさんは現地の調査に赴いてくれているのかもしれませんね」
「であれば、スズヤ様にあまりお手を煩わせないように私たちで出来る限り準備を整えるとしましょう!」
「はい!私はスズヤさんには多大な恩があるので全力で協力させていただきます!」
スズヤがのんびりBBQを満喫し、快適なトレーラーハウスで床に着いたことを二人は知る由も無かった。
所持金 金貨1782枚 銀貨4枚 黄銅貨7枚 青銅貨3枚
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