30話 奴隷制度
翌朝、出かける支度をし、まだ眠っている少女3人組をエン爺と一緒に起こす。
シアとエルに食べたいものを再度聞き、「お肉」「果物」と確認。
【ふるさと納税】で簡単に購入して二人の要望に応えることもできるけれど、それじゃダメだと思い、出かけるようにをして街に繰り出す。
「今日は知り合いのお店に行くから、道中屋台で好きな物を食べながら行くとしようね。みんな食べたいものを見つけたら教えてー」
「ん!」
ライアが早速1つの屋台を指さした。
見たことない真っ青な瓜のような果物を切って、中身の黄色い果肉部分を串にさして販売している。
縁日のパイン串みたいなものかな?
「おばちゃん。この串もらえるー?」
「あいよ!1本赤銅貨6枚!2本で銀貨1枚だよ。いくつかかうかい?」
「ライア。いくつほしい?」
「んー、6本」
「あいよ!ブルークリム串6本ね!嬢ちゃんたち可愛いから6本で銀貨2枚と赤銅貨5枚に撒けとてあげるよ!」
この果物ブルークリムのっていうのか。
「ありがとう」
早速購入した串をライアに渡そうとするとライアは1本だけ手に取った。
「あれ?ライア?」
「ん。みんなで食べる」
なるほど。ライアなりにこの子たちに気を使ってくれたのかな?
シアとエルはブルークリムの串を手渡すとパァッと明るい顔になった。
うんうん。いい表情だ。
「んじゃ食べながら歩くと危ないから、あそこのベンチに座って食べようか」
近くに合ったベンチに子供たちを座らせ、俺とエン爺はベンチの前にたって皆でブルークリムの串を味わった。
うん。思ったよりも柔らかくて優しい甘さだな。
瓜っぽい形してたし、黄色い果肉をしてたからメロンに近い味を想像していたけど、これは洋梨に近いかも?
「みんな美味しい?」
「うん!」
「美味しい!」
「ん。みんなで食べると美味しい」
ふふ。なんかライアがちょっと二人のお姉ちゃんみたいだな。
見た目的に年が近く見えるライアが最初に屋台を選んでくれたおかげで、その後シアは肉串を、エルはサクランボのような果物を見つけた時にちゃんと食べたいと意思表示をしてくれた。
こうしてのんびり食べ歩きつつ、フランゼ商会へ向かった。
フランゼ商会に着くと、丁度トルネが店の前に出ていた。
「あれ?スズヤさん?今日も打ち合わせです?」
「いや、今日は買い物をしに来たんだ。ちょっと店内を見せてもらってもいいかな?」
「もちろん!……あれ?その子たちは?」
ライアの後ろに隠れるようにして顔を覗かせている少女たちにトルネが気が付いた。
俺は軽く二人と同行している事情を説明した。
意外にもトルネは奴隷に関してそれほど抵抗感はないらしく、すんなり話を呑み込んでいた。
「なるほど。だったらまずは服ですね!!シアちゃん!エルちゃん!私がかわいい服を見繕ってあげます!二人とm可愛いからきっと何でも似合いますよ~♪」
「ひっ!」
「怖い……」
目を輝かせて迫るトルネに恐怖を感じた二人は、ライアの後ろでは隠れられないと思ったのか、エン爺の後ろに隠れ服にしがみ付いた。
俺はトルネの頭にチョップを入れる。
「こら。怖がらせてどうする」
「あはは。すみません。つい……」
「このお姉ちゃんはちょっと可愛いものが好きなだけで怖い人じゃないから大丈夫だよ」
「ん。沢山服を着せられるだけ……」
経験者のライアは延々と着せ替えショーをさせられたのを思い出したのか若干疲れた表情を見せつつ言った。
ライア、それあんまりフォローになってない。
仕方が無いので、シアとエルにはライアを付け、トルネに服を選んでもらうことに。
ライアは歳の近い友達のように感じているのか、二人はライアに一番心を開いているからね。
その後、従業員の女性二人も加わり、何故か巻き込みでライアも着せ替えショーに加えられ。
およそ1時間後。2階から若干疲れ気味の表情で3人が階段を下りてきた。
後ろをついて降りてくるトルネと2人の従業員はつやつやした表情で笑みを浮かべている。
可愛い子の服を選ぶのが楽しいのはわかるけど、あまりやりすぎないようにね。
「シア、エル。どうだった?」
「もう服選びいやー……」
「沢山服着れて、嬉しいけど疲れた……」
「そ、そうか。お疲れ様。ライアもお疲れ」
「ん……」
「スズヤさん!こちらがシアちゃんの。そしてこちらがエルちゃん。最後にこれはライアちゃんのです!」
そういってトルネに大量の衣装を目の前のカウンターに並べられた。
「お、おう。ずいぶん楽しかったみたいだな」
「ええ!みんなとってもかわいかったです♪」
「そ、そうか。みんなちょっと怯えてるからほどほどにね……」
俺は大量の服を購入し、その後はシアとエルを連れて店内を自由に見てまわった。
色々初めて見る物が気になったのか時々足を止めて見ていたが、特にほしい物はなかったらしい。
小一時間のウィンドウショッピングを終えてトルネに挨拶し店を出た俺らは今度は傭兵ギルドへ向かった。
別に傭兵の仕事をするためではなく、ギルマスに二人の説明と顔つなぎをするためだ。
二人のことを途中で放り出すつもりはないが、万が一俺らが近くにいない時に何かあったら困るので、信頼がおけて二人を預けられる人に紹介しておこうとして連れてきた。
傭兵ギルドに入ると、3人も子供を連れているので当然場違いすぎて目立つ。
沢山の視線を向けられびくびくする二人を連れながらカウンターへ。
すると俺に気が付いた職員が声をかけてきたのでギルマスがいるか確認した。
すると奥の部屋で龍の牙と打ち合わせをしていると聞いたので案内してもらった。
部屋に入り挨拶を交わす。
「おはようございます。打ち合わせ中にすみません」
「ああ、お前なら構わんよ。関係ない話でもないしな」
ん?俺に関係ある話をしてたのか?
「聞いたぜ?エクレール公爵家が指導する新都市計画の顧問に就任したんだって?」
まって?俺が関わってるのは温泉とボードゲーム大会に関することだけだよ!?
「どこからそんな話に!?俺は温泉とボードゲーム大会にしか関わってないからね!?」
「ははっ。冗談だよ。それで?スズヤさんが傭兵ギルドに来るなんて珍しいな」
俺はシアとエルのことを皆に説明した。
彼らもトルネと同じく奴隷に関してはあまり忌避感はないらしい。
この世界では奴隷ってのは普通なの?
「なるほどな。それにしても珍しいな。面倒ことはとことん避けようとするスズヤさんが自ら面倒毎に首を突っ込むなんて」
「この子たちを見たら放っておけないと思ってね」
「そりゃわからなくもないけどよ。目につく奴隷を片っ端から解放していくつもりなのか?きりがないと思うぞ?」
アレクの言う通りだ。
流石にそんなことは続けられない。
すると悩んでいる俺を見てギルマスが口を開く。
「俺はお前がどの国から来たのかしらんが、奴隷に関する知識がだいぶ偏ってるんじゃないか?」
ギルマスの説明を聞くと。
多くの国で奴隷制度は立派な制度として成立していて、主に奴隷は4種に分けられるのだそう。
まずは犯罪奴隷。
これは文字通り犯罪を犯して奴隷落ちした人で、軽犯罪者が贖罪と労役を兼ねて社会復帰のために奴隷として自分を売るものだという。
犯罪の度合いにより奴隷期間が決められており、期間満了すると晴れて奴隷解放して社会復帰できるのだそう。
基本的に国に買われ、鉱山や戦争、開拓地などの過酷な環境に送られる場合が多い。
次に戦争奴隷。
戦争で他国を侵略して捕虜となった者で、一定期間の労役の義務を終えると、金銭で開放可能。
購入者に職業奴隷として雇られる形となり、購入者は雇い主として賃金を支払い奴隷を保護する義務が発生する。
金をためて自分を買い戻すことで奴隷から解放可能。
そして借金奴隷。
借金の方に奴隷落ちした者。
戦争奴隷との違いは労役の義務は無し。
こちらも戦争奴隷と同じく金銭で開放可能。
雇用形態も戦争奴隷と同じで保護の義務も発生。
最後に違法奴隷。
違法にとらえられて奴隷に落とされた者。
非合法な隷属契約で強制的に奴隷にされるため、権利を守られていないことが多く、たいていの場合は一方的に所有者の命令に従わされてる。
正式な奴隷契約を行っていないため、奴隷の解放条件を設定されていない場合がほとんど。
ヘイゼル侯爵は買うとか売り戻すとか言ってたから、シアとエルは戦争奴隷か借金奴隷ってことか?
年齢からして借金奴隷か?
「お前がいたところで奴隷がどうだったかはしらねぇが。違法奴隷を除けば、奴隷は社会復帰と労働力を兼ねてる立派な制度として成立してるぞ?確かに人によっては奴隷を蔑むやつや、奴隷に暴力を働くようなバカな奴らもいるが、正直言ってどこの国でも人手は不足してるから奴隷制度なしじゃ成り立たん」
奴隷制度が社会復帰を兼ねているとか想像もしていなかった。
言葉のイメージだけで嫌悪感を感じていたけど、制度としては間違っていなそう。
「それでも。俺はシアやエルのような子供が奴隷として自由も得られず怯えて過ごしているのは見過ごせません」
「はっ!思った以上に甘い奴だな!んじゃ人を殺して奴隷落ちした子供がいたら、その子供もお前は助けるのか?」
「はい。助けると思います」
「おいおい。人を殺してんだぞ?」
「きっとその子には、幼いながらにそうせざる得ない原因がそこにはあったと思うから助けます。そしてその原因をなくしたいと思います」
「仮にその原因がわかって、解決できたとして、それでもその子が人を殺そうとしたらどうするつもりだ?」
「そのときは俺が責任をとります」
「それはお前の手でその子を殺すってことか?」
「……いえ。その子が人を殺そうと思わなくなって、普通に暮らせることが出来るようになるまで傍で見守り続けます」
「……甘いな。人の出が手の届く範囲は限られてるぞ?お前がどれだけ凄かろうと、万人を救うことなんてできんぞ?それこそ全知全能の神でもなけりゃ無理ってもんだ」
「それでもです。たとえ偽善と言われようとも、俺は自分の目の届く範囲、手の届く範囲の人は救いたいと思います」
「ははっ!参った!俺の降参だ!試して悪かったな!」
ギルマスは急に威圧を解いて笑い声をあげた。
「ギルマス。スズヤさんは面倒事から徹底して逃げる人に見えるけど、その芯の強さは本物ですよ。禁足域でロックイーターとストーンゴーレムに挟撃されかけたときも、スズヤさんが一人でロックイーターを引き受けてくれたことで俺らは窮地を脱しました。それに、獄炎龍――エン爺と対峙して、勘違いで殺されかけたときもスズヤさんが機転を利かせて行動を起こしたことで俺たちは生き残れましたしね」
いや、ロックイーターのときはああなることは予想外だったし、エン爺のときは奇跡的に【ふるさと納税】で購入したアイテムに助けられただけなんだけども……。
「うむ。そんなスズヤ殿だから我も従魔になることを望んだのだ」
「ん!」
いやいや!二人とも!?
従魔になるときそんなこと一言もいってなかったよね?
果物と酒に釣られてたよね!?
なに勝手に綺麗な記憶に改ざんしてるの!?
「ガハハハ!力の強さではなく芯の強さで強者を従えるか。スズヤはまるで伝説の聖女のようだな」
ん?伝説の聖女?
「数多くの聖獣を従えて世界を救ったっていうあれか?」
「何それ?」
仮に俺がその聖女だとしたら、今の流れだと聖獣は食い物や飲み物で釣ることになるよ?
桃太郎みたいなことになるよ?
「聖女の話ってどんな話?」
俺がそう尋ねると、俺の事情を知るマリアが説明を買って出てくれた。
「スズヤさんは知らないのですね。では、私がお話いたします」
所持金 金貨5142枚 銀貨4枚 黄銅貨7枚 青銅貨3枚
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