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ふるさと納税で気ままな異世界生活?  作者: 瀬良・B・月季
2章 新都市開発編

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29話 奴隷の少女たち

源泉の確保も済み、俺の仕事は暫くなくなったので午前中にトルネの店に顔を出して、ボードゲームの大会の相談を少しと、ボードゲームの売り上げの確認をした。


因みにボードゲーム販売の取り分である5%はプール金として、フランゼ商会にそのまま預かってもらっている。

今はお金に困ってないし、すぐに受け取るつもりもないから、帳簿だけつけておいてもらって、プール金はボードゲーム大会まではイベントの準備や販促予算を回すように頼んでいる。


それ以外に特に予定も無く、昼からは宿の部屋でのんびりしていると、コンコンッと部屋のドアがノックされた。


トルネさんかな?

そう思ってドアを開けると、そこにいたのは知らない中年男性だった。

いや俺も中年男性なんだけども。

身に着けている服装はそれなりに綺麗な物なので、宿に泊まっているような客には見えない。

……だれ?


「急な来訪失礼します。私はヘイゼルと申します」


あー、ラーサンの後ろ盾の侯爵か。

遂に直接俺に会いに来たか。

先日、ラーサンが名前を出してあんな横暴まで働いたのによく俺の前に顔を出せるな?


「グエル商会の後ろ盾の侯爵閣下でしたっけ?何の御用でしょうか?」


「先日は私が後援しております商会の会頭が、あなたに無礼を働いたとお聞きしたので、こうして私自らスズヤ殿に謝罪をしに参りました。先日はご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」


白々しい。

ラーサンを使って俺のことを色々探ってたくせに。


「はぁ。それはもう気にしておりませんので、閣下も気にしないでください」


そういってドアを閉めようとすると、ヘイゼル侯爵はドアを掴んで扉を閉めるのを阻止してきた。


「お詫びと言ってはなんなのですが、スズヤ殿を我が屋敷にご招待したいと思いまして、今日はそのお誘いも兼ねてお伺いさせていただきました」


くっ!しつこい!

強行にでるラーサンも面倒だったけど、礼とか詫びとかにかこつけて無理強いするこいつも面倒くさいな!


「そうですか。生憎私は貴族のマナーに詳しくありませんので遠慮しておきます」


「いえいえ、我が家ではマナーなど不問ですのでお気になさらず。是非お食事だけでも」


「いえいえ。こうして侯爵様が直接出向いて謝罪していただけただけでも十分すぎますので結構です」


「そうですか。残念です。それではこちらを――」


まだ食い下がるのかよ!?

本当にしつこいぞこいつ!?

何を用意されても俺はなびかないぞ!!


「綺麗どころを用意しましたので是非とも――」


ヘイゼル侯爵がそういうと、後ろに控えていた部下らしき人が連れてきたのは、12~13才ほどの犬耳のような耳をした獣人の女の子と人種の女の子だった。

少女たちは綺麗なドレスのような衣装を着ているが、若干下を向き暗い顔をしており、首には模様の入ったチョーカーのような物を付けていた。


・・・…あれって奴隷の印か?


そして俺は、先日のライアに盗み聞きしてもらった内容を思い出した。

・・・…これ絶対勘違いしてるよな。


「すみません。私はそういった趣味はありませんので」


「えっ!?」


あっさり俺が断ると、これまでとってつけたような笑顔を崩すことのなかったヘイゼル侯爵がびっくりした様子を浮かべた。


何驚いてるんだ!!

俺はロリコンじゃないぞ!?

ライアをそういう目で見たことは一度もないからな!?


「そうですか……」


凄く残念そうな顔をしてヘイゼル侯爵が肩の力を下ろし、部下に小声で「奴隷は不要だ。すぐに売り戻せ」と言ったのが聞こえてしまった。



売り戻せって奴隷商人に売り戻すってことだよな。

この子たちはそのあとも奴隷として辛い目に合うってことか。

…………。


「待ってください。その子たちはどうするつもりで連れてきたんですか」


「彼女らは奴隷ですのでスズヤ殿にプレゼントしようかと思いお連れしました。スズヤ殿のお眼鏡にかなわなかったようなので責任をもって持ち帰りますのでご安心ください」


プレゼント?持ち帰る?

ヘイゼル侯爵が発した言葉を聞いて流石の俺もイラっとした。


こんなことをしてもただの偽善でしかないことはわかってる。

それにフランゼ商会と対立しているヘイゼルから何かを受け取ったという事実を残すのが良くないということも。

でも、子供が物のように扱われ、暗い顔をして怯えているのを目の当たりにして放って置けるほど俺は図太い人間じゃない……。



「……わかりました。彼女たちの代金は私が支払います。エン爺、ライア。彼女たちを部屋に」


「うむ」


「ん」


「いえいえ。これらはお近づきの印として差し上げます」


俺が怒りを露わにしたことに一瞬眉をピクッとひそめたが、再びはりついたような作り笑いをし、奴隷の契約書を俺に差し出してきた。


「……そうですか。それでは」


そう言って俺はドアを閉めた。



二人の少女は部屋に入った後も怯えて微かに身を震わせていた。

この子たちがこれまでどんな境遇にいたのか想像するだけで胸が苦しくなる。


「大丈夫だよ。もう安心していいからね」


フリーゲル王国でも市場で奴隷らしき人は目にしていた。

この国に来てから見る機会は減ったけど、それでも時折奴隷を連れた人を目にすることはあった。

でも、どこかで自分には関係ないと決めつけて、見て見ぬふりをしてきた気がする。

この世界の奴隷制度がどういったものなのかは俺にはわからない。

それでも先ほどのヘイゲルの様子から察するに、奴隷を人として扱わない人が居るというのが現実なのだろう。


「……エン爺。ライア。俺は決めた。これからは出来る限り、この世界から奴隷をなくすために行動しようと思う」


「良い心がけだと思うぞ」


「ん」






※  ※  ※



ヘイゼルはスズヤの止まる宿を出て馬車で屋敷に戻っていた。


「少女を好きで囲っているかと予想したが、当ては外れたか……」


だが先ほどの様子から存外甘い男だと分かった。

見ず知らずの奴隷ですら捨て置けないような男であるならば、付け入る隙はいくらでもありそうだ。


「ふふっ。あの赤髪の少女を人質にとることが出来れば、スズヤとボードゲームの利権、そしてスズヤの雇った強力な護衛も同時に手に入る」




※  ※  ※



部屋に向かい入れた少女二人にはひとまずライアの予備の着替えを着てもらった。

そして【ふるさと納税】で購入した色々な果物を取り出した。


最初は食べるのにも抵抗を感じていたようだが、見た目は同世代に見えるライアが、何の抵抗も無く目の前を美味しそうに食べる様子を見て、警戒心も薄れたらしく、恐る恐るブドウに手を伸ばし1粒口にすると、目を輝かせてバクバクと食べ始めた。


「よほど空腹だったようだな」


「そうだね。子供がこんな環境に置かれているのは、流石に看過できないよ」


「ふむ。人の事情は我もあまり詳しくないが、奴隷制度は好かぬ」


「俺も奴隷は許せないかな。犯罪を犯して奴隷になる人もいるんだろうし、全ての奴隷が不条理に奴隷にされているってわけでもないんだろうけれど、人を物のようにお金で売買するような制度はどうも気持ち悪いよ」


「金銭で同族を物のように取引する種族など人種しかおらぬ。一部の人種の行いは豪が深すぎて見ていて嫌になるわ。我が人の世から離れて暮らすようになったのも、そうした人と関わるのが面倒になったのがきっかけでな」


エン爺も過去に人と何かあったのかな。

何千年も生きてるならそういう経験もあるか。


「エン爺……。この子たちのチョーカーって外すことはできないのかな?」


「うーむ。その首輪が魔道具だというのは見てわかるが、我は魔道具に詳しくないので何とも言えんな。スズヤ殿は鑑定が使えたのではないか?」


「あ、そうか」


鑑定。



・隷属のチョーカー 


特殊な隷属魔法が付与されており、このチョーカーを装着された者は所有者の命令を拒否することが出来なくなる。

無理に外そうとしたり、命令を拒むとチョーカーが締まり首を絞めつける。

奴隷の権利を侵害する命令はその限りではない。


最初に取り決めた条件を満たすことで隷属から解き放たれる。


【隷属化】



「命令無視をしたり無理やり外そうとすると、チョーカーが絞まる仕組みだって。隷属化する際に決めた内容を達成することで解放されるらしい」


「その条件が分からぬとどうしようもなさそうだな」





「ねぇ君たち。名前はなんていうのかな?」


「シア」


獣人の子が先に応えた。


「私はエル……」


人種の子も続いて名前を告げる。


「そうか、シアとエルか。君たち、隷属契約したときにつけられた条件に付いて何か聞いていたりする?」


二人とも首を横に振った。


「やはり何も知らないか。参ったな……」


解除出来る魔道具とかないのかな。

【ふるさと納税】のリストを覗いてみるが、流石にそんな特殊な商品は検索してもHITしない。

解呪ならお札とか?それか聖水?

そもそもそんなものはリストにあるはずもないし、流石にお手上げか。


「とりあえず今日のところはゆっくり休んで、明日クラリス嬢にでも相談してみるとしようか。そろそろ夕飯時だけど、みんなご飯どうする?三人は果物を沢山食べてたけど入りそう?」


シアもエルもライアも首を縦に振った。

うん。子供たちは食欲旺盛だね。

ライアは子供の枠に入れていいかは微妙だけど。

エン爺は酒とつまみセットでいいよね?


「よし、んじゃ今日は美味しい物を用意するか。といってもこの部屋にはキッチンが無いから出来合いの物になるんだけども」


そういって俺は【ふるさと納税】のリストを開いて、いくつかのご当地の冷凍弁当と電子レンジをチョイス。

電化製品は電源がどうなってるか気になったので購入してみた。

発電機を購入したらたぶん使えるし、最悪使えなかった場合はエン爺に水を温めてもらって湯煎で解凍したらいい。



・電子レンジ 8万円


ワンタッチ自動温め

時短ブースト機能搭載


【即時解凍】

【即時加熱】




ふむふむ。

危険なオプションはとりあえずなしと。

問題は電源だけど。

電子レンジの背後を確認すると電源コードはちゃんとそのままあった。


しかし、コードを刺してないのに電子レンジの表示が点灯している。


むむ?

謎の動力機構?

発電機を買う必要が無いのならお得だけど、このまま使えるのかな?


試しに冷凍の弁当を1つ入れてスイッチをオンしてみる。

すると1秒も経たずにチンッ!という音が鳴った。


あれ?音が鳴るってことは動いてる?

でも温め時間無し?やっぱ電源が無いとだめなのかな。


だが、扉を開けるとホカホカになった弁当がそこにはあった。


「あちちっ。ちゃんと温まってるや」


即時解凍と即時加熱ってそういうことか。

一瞬で解凍と加熱が同時に完了したってこと?

便利過ぎる!!

まだ動力が謎だけど、使えなくなったら考えよう。



「シア、エル。食べてみたい弁当を選んでこの中に入れて、このあたためるってボタンを押してみて」


シアとエルはいくつもある弁当の中から好みの弁当を選び、電子レンジのスイッチを押す。

するとチンッと音が鳴りホカホカの弁当が完成し、二人とも不思議そうに電子レンジの中を覗き込んでいた。

何故かエン爺も電子レンジの中を興味深そうに、一緒になってのぞき込んでいる。

謎動力で動いているからね、気になる気持ちはすごくわかるよ。


何々?エン爺も今日はつまみだけじゃなくて弁当にするの?


エン爺も好みの弁当を選んで温め完了し、ライアには林檎とミカンをひと箱ずつ渡す。


「さて、皆にいきわたったところで。いただきます」


エン爺は塩サバ弁当。

シアは焼き肉弁当。

エルはハンバーグ弁当。

そして俺は三色のかしわめし弁当。


エン爺と俺は弁当のお供にビール。

シアとエルとライアにはリンゴジュースを差し出した。


シアとエルはとても美味しそうに弁当を食べてくれた。

うんうん。いい食べっぷり。

エルは若干遠慮してる雰囲気があるけど、遠慮する必要はないからね。


満腹になったら眠くなったのか少女組はうとうとし始めたので、ライアにベッドに二人を運んで寝かせてもらった。

少女ならギリギリ3人で一緒に寝られるだろう。

知らないおっさんや爺さんと一緒に寝るよりいいはずだ。




ボードゲームの大会の打ち合わせに午前中にトルネのとこに少し寄った以外、どこにも出歩いてないにもかかわらず、今日は精神的に疲れた気がする。


今日も寝る前の日課のマッサージガンを肩に当てる。


「あぁ~♪これこれ。はぁ~」


「スズヤ殿。終わったら我にも頼む」


あれ?刺激が足りないって言ってたけど、やっぱエン爺意外と癖になってるな?

仕方ない、エン爺専用として追加で1つ購入してあげよう。


マッサージガンを1つ購入し、エン爺に手渡すと嬉しそうに笑みを浮かべていた。

やっぱ欲しかったんだな。

素直に言えばいいのに。

エン爺も遠慮は禁止ね。


ふと、視線を感じたのでエン爺の後ろに目を向けると、シアとエルが不思議そうな顔でこちらを見ていた。

あー、マッサージガンちょっと音が鳴るからうるさくて起こしちゃったか。



「ごめんね。うるさかった?」


二人は横に首を振った。


「もしかして気になる?」


今度は二人とも盾に首を振った。



俺のマッサージガンはシアに、エン爺のマッサージガンも一旦エルに渡し、二人にマッサージガンの使い方を説明して、使わせてみる。

ライアもすぐに飽きたし、子供はマッサージガンにそれほど熱心にならないだろうと、軽い気持ちでやらせてみることにした。


スイッチを入れて肩に当てると、最初は振動にびっくりしたらしく、すぐに手を放していたが、そのあと振動に慣れたのか、肩に当てて振動を楽しみライアと同じ遊びを始めた。


「「アアアアアアア」」


ふふっ。わかるわかる。

自分の声が震える感じ、めっちゃ楽しいよね。

やはり子供は全員同じ道を歩むらしい。


ようやく子供らしくキャッキャとし始めた二人。


そしてシアのマッサージガンが肩から首にかけて触れたとき、ポトッと音がして、シアの隷属のチョーカーがベッドの上に落ちた。


……はい?


何で外れたの?


「どこでシアの隷属条件達成したんだ!?エン爺わかった!?」


「い、いや。見ておったが流石に……」


マッサージガンで肩をマッサージするのがシアの条件?

いやいやいや、ありえないだろう!!


一人で頭を抱えていると、再びポトッという音が鳴り、エルの隷属のチョーカーもベッドの上に落ちた。


「えぇぇぇぇ!?どういうこと!?……はっ!?もしかして!?」


慌てて俺はシアの持つマッサージガンを鑑定。




・パワーガン(マッサージガン)5万円


これひとつで筋膜リリース。

顔もボディも狙って即ケア。

これからのセルフケアはもう時間も場所も選びません。

気になる部分に当ててボタンを押すだけでいつでも気軽にケアをスタート。


【筋肉痛回復】

【疲労回復】

【正常化】




んー?

隷属を解除できそうな能力は見えないぞ?

一番それらしいのは【正常化】だけど。

字面からして、どう考えても隷属を解除を出来る能力とは思えない。


どういうことだ?

解呪とか解除の能力があったのかと思ったけど。


「スズヤ殿?」


「うん。マッサージガンに隷属化を解除する機能があったみたい。でも鑑定で見た限りではマッサージガンに付与されてる能力では隷属を解除できるようには思えないんだよね」


「ふむ。スズヤ殿の能力で出す魔道具は、鑑定で見える能力が全てではないのかもしれぬな」


「ますます【ふるさと納税】の謎が深まったよ……。とりあえずシア、エル。これで君たちはもう奴隷じゃなくなったよ。おめでとう!」


ってあれ?どうして泣きそうな顔をするの?

シアとエルは抱き合って目に涙を浮かべていた。


「うぅ。私たち捨てちゃう?」


「言うこと聞くから捨てないで……」


「えぇ!?どういうこと!?捨てないよ!?」


「この子らはスズヤ殿に奴隷として買われて生活が保障されたと思っているのだろう。奴隷ではなくなったから捨てられると……」


エン爺は難しそうな顔で答えた。


……そういうことか。


「そんなことしないよ?シアもエルも奴隷じゃなくなっても捨てないから安心して」


「ほんと?」


「ほんとほんと!むしろ奴隷じゃなくなったからこれから好きなことをしてもいいんだよ」


「好きなこと、よくわからない……」


「うん……」


ずっと奴隷として生き方を強制されてきたのかな。

あっちの世界ではまだ義務教育中で遊び盛りの年齢だろうに。


「うーん。そうだなぁ……。じゃあこうしよう!食事は毎日何が食べたいか自分で考えて食べたいものの希望を言うこと。あとは明日お店に連れていくからそこでほしい物、興味があるものを見つけたら遠慮せずに俺に言うこと。わかった?」


「うん。私お肉が食べたい」


「私は果物を食べたい」


「よしよし!そういう感じ!んじゃ明日は二人が食べたいものを用意するから、今日はゆっくり休みなさい」


「わかった!」


「うん!」


二人とも泣きつかれたのか、いっぱいいっぱいだったからか、ライアの両脇に寝転がると、安心して直ぐに寝息をたてはじめた。


「エン爺」


「ん?」


「偽善かも知れないけど、この子たちに手を差し伸べたのは間違いじゃなかったよね?」


「うむ。この子らを救ったのはスズヤ殿で間違いない。全てを救えるものなんてこの世には居らぬよ。八龍の一角である我でさえそれは叶わぬこと。手の届く範囲に手を差し伸べるだけでも立派なものよ」


「そうだね」





所持金 金貨5159枚 銀貨1枚 黄銅貨2枚 青銅貨8枚

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