3話 スキル【ふるさと納税】
シーンと、部屋は静まり返ったままだった。
まぁ、そうだよね。
ひとまず使い方の分からない【ふるさと納税】は置いといて……。
【鑑定】の方を先に使ってみるか。
何か鑑定に適したものは……、と。
あ、そうだ。
俺は金貨を1枚取り出して鑑定した。
・フリーゲル王国製金貨
世界共通規格の金貨。
含有率 金7割、銅3割。
青銅貨、黄銅貨、銀貨の次に高価な貨幣。
上に大金貨、白金貨、聖金貨がある。
おおっ!すごいな。
このホログラムみたいなのも魔法か?
青銅貨ってのが最小単位ってこと?
一泊の値段が400円程度ってのは流石に無さそうだから、4000円くらいって考えると、肉串は1本300円か?
そう考えるとしっくりくるな。
つまり日本円に直すと、青銅貨が10円、黄銅貨が100円、銀貨が1000円、金貨が1万円ってところなのかな?
……ん?
ってことはスーツとワイシャツが25万5千円じゃなくて、255万で売れたのか!?
硬貨の価値、桁一つ間違ってた!?
それなら俺は300万円近くを持ち歩いてるやばい奴じゃん!!
宿の部屋には絶対鍵をかけるけど、外では気を付けないといけないな……。
金貨を【鑑定】し、色々考えていると、『ゴーン ゴーン』と夕刻を知らせる鐘の音が街中に響き渡る。
窓の外を見ると空が赤く染まり始めていた。
「もう夕暮れ時か。ひとまず夕食を食べて今後のことを考えるとするか」
食堂へ向かい料理を受け取り食べてみる。
うーん。薄味。まずくはないけど塩のみかぁ。
食えるだけましと思い、食事を摂っていると、隣のテーブルから不穏な会話が聞こえてきた。
「なぁ聞いたか?王城に兵が集められていて戦争に備えてるって話」
「ああ、聞いた聞いた。傭兵もかき集めてるらしいな」
「それだけじゃないぜ。なんでも聖女召喚の儀式もやったらしい」
「おいおい、召喚儀式って。ぶはは!それっておとぎ話だろ?」
「客としてやってきた近衛騎士に聞いたんだが、最近王城に国中の魔法使いと魔石をかき集めてたらしい。だからあながちデマでもないらしいぞ」
「まじかよ。しかし戦争かぁ。そうなると俺ら商人は難しい立場になるな」
「軍需物資を扱えば利益はでかいけど、抜けるに抜けられなくなるからな。俺は国と心中するのはごめんだから他国に逃げるけどな。食料の需要も上がりそうだからそっちで稼がせてもらうぜ」
「あっ!ずりいぞてめぇ!」
「はん!俺は独り身の行商だから身軽なのよ」
なるほど。あの糞王は戦争の戦力を補うために聖女召喚を。
んでその召喚で何か不具合があって、俺が召喚されたって訳か……。
それにしても……。
追放されてよかったぁぁぁぁぁ。
戦争になんか駆り出されるとかたまったものじゃない!!
それで塩も貴重になるから料理の味が薄いのか?
俺も他国に逃げた方がよさそうだなぁ。
下手に王に連れ戻されたらたまったもんじゃない。
それに行商か……。
商人なら俺でもなれるかな?
食事を終えて部屋に戻ってベッドに寝そべり、今度は自身を鑑定してみる。
すると、王城で水晶に映し出されていたような能力参照が空中に映し出された。
スズヤミナト35歳 男 人間
レベル1 職業 公務員
HP22 MP7
力 6
耐久 3
魔力 2
敏捷 4
器用さ 9
【ふるさと納税】
【鑑定】
おー、人を鑑定するとこうなるのか。
水晶の時と違って数値化された身体能力?みたいなのも見えてるな。
強いか弱いか分からないけど、弱いんだろうなぁ。
その後、再度鑑定をしてみた。
今度は能力だけを見るイメージで。
すると水晶で見たときと同じく、俺の簡単な情報と所持スキルだけ表示された。
なるほど、見たい情報だけ表示することもできるのか。
……にしても、【ふるさと納税】って何だよ。
どうやったら使えるか分からないし、使えたところで異世界で税金の控除とか受けても意味ないよなぁ。
そう思いつつ、何となくスマホに触れる感覚でウィンドウの【ふるさと納税】の文字に指で触れると、商品がずらりと並んだリストが表示された。
俺はそれを見て、ガバッと体を起こす。
「えっ!?これって商品リスト?」
タブをタップしたり、リストをフリックするとリストに並んでいる様々な商品一覧を見ることが出来ることが分かった。
ふーん。操作はタブレットみたいに触れるだけで出来るのか。
にしてもほんとに、まんま向こうの世界のふるさと納税だなぁ……。
これ本当に使えるのか?
試しにリンゴを選んで購入を押してみるが、『残高が不足しています』とポップアップが表示される。
右上に表示されている残高を見ると残高は0円の表示。
やっぱお金が必要だよね。
うん。知ってたよ……。
しかし、当然だが手元に円はない。
セカンドバッグに財布入ってたけど、穴に落ちるとき落としちゃったからなぁ……。
金貨ならあるんだけどなぁ……。
俺は再びベッドに寝転がり、1枚の金貨を手に取って眺める。
「はぁ。せめてこの金貨が【ふるさと納税】に使えりゃなぁ」
1枚の金貨を弄りながらそうぼやくと、指で掴んでいた金貨がフッと掻き消えた。
「えっ?もしかして……」
【ふるさと納税】の表示へ視線を戻すと、残高の表記が10000円に変化していた。
金貨使えるじゃん!!
これで【ふるさと納税】が使えるぞ!!
半信半疑で、試しに10000円のリンゴを選択し、購入のボタンを指で触れてみる。
すると、目の前にパッと箱が出現する。
えっ!?一瞬で届くの!?
恐る恐る箱を開けてみると、中には18個のリンゴが綺麗に並べられていた。
俺はリンゴを一つ手にとり、服の袖で軽く拭いて齧ってみる。
すると、食べ慣れた普通のリンゴの味がした。
ただのリンゴだけど、元の世界の物が食べられることに少しホッとした。
「リンゴを食べただけなのに心なしか体が元気になる気までしてきた。美味しい……」
でもどうしよう。
俺は残ったリンゴの箱を見つめつつ、どうしたものかと考える。
流石に食後なので1個でお腹いっぱい。
目の前には箱に残った17個のリンゴ。
うーん。いくら何でも箱のまま持ち歩くわけにもいかないし……。
でも一万円も出して購入した物を捨てるのは勿体ないし。
持ち運ぶための鞄を購入するか。
仕方がないので大金貨を1枚チャージし、【ふるさと納税】リストの鞄をチェックする。
プラやナイロン素材のキャリーケースやリュックは、流石にこの世界では目立ちそうだから無難に革製かなぁ。
革製の大きめの肩掛けバッグを選択。
本革製の鞄に、ふるさと納税の分の金額が上乗せされた価格を見て俺は購入を押すのに躊躇する。
「くっ!流石に本革製は高い……。でもナイロン製なんて使ってたらまた目を引きそうだし……。必要経費か。しゃーない!えいっ!」
覚悟を決めて購入すると、一瞬で目の前に鞄が入るサイズの小さめの箱が現れた。
箱を開けると革製の肩掛け鞄が丁寧に梱包されていた。
届いた鞄を取り出し、早速鞄の中に余ったリンゴを詰めていく。
これで金さえあれば【ふるさと納税】で元の世界の物をいろいろ手に入れられることが分かったな。
流石に【ふるさと納税】で全てを購入しようとするといくらお金があっても足りないから、この世界で稼ぐ方法でも見つけないとなぁ。
そんなことを考えつつ鞄にリンゴを詰めていく途中で、俺は違和感を覚え手を止めた。
あれ?
もうリンゴを10個くらい入れたはずなのに鞄が膨らんでない……?
それに全然重くないような……。
不審に思い、ゆっくりと鞄の中をのぞき込むと、そこには謎の空間が広がっていた。
ひっ!?なんだこれは!?
そ、そうだ!鑑定だ!
慌てて鞄から手を放し、鑑定してみる。
・本革製ショルダーバッグ 8万円
本革を使用し、1つ1つ手作業で作り上げた逸品です。
薄型フォルムながら高い収納性を実現。
シンプルなデザインでシーンを問わずご利用いただけます。
【空間収納・特大】
【使用者制限】
空間収納?
それがあの謎の空間の正体?
試しに箱ごと残ったリンゴを鞄に近づけると、謎の空間に吸い込まれるように収納され、消えていく。
収納できたのはいいが取り出せないなんてことになると困るので、恐る恐る鞄の謎空間にビビりながら手を入れると、中にあるものを任意で取り出せることがわかった。
この鞄を持つと中に入っている物を認識できるのか?
どういう原理だ?
あとは、使用者制限って使える人を制限できるってこと?
防犯対策的な?
それにしても、明らかに鞄の口よりも大きな箱ごと出し入れできるなんて。
便利過ぎる!
【ふるさと納税】で購入した鞄に、なんでこんな謎の機能が?偶然?
同じものを買ったら確認できるかもしれないけど、お金を無駄にできないし、考えたところでよく分からないので、【ふるさと納税】で購入した物は便利でラッキーと思うことにした。
「よし。明日必要な物を色々買い出しに行こう。さっさとこの国を離れないと」
所持金 金貨274枚 銀貨5枚
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