2話 能力を試してみる
声のする方を振り返ると、知らない男が立っていた。
「俺に何か用ですか?」
「いやね、お兄さん珍しい服を着てるなぁと思いましてね。異国のお貴族様ですか?私は服を扱う商売をしておりまして、もし可能であれば、その服を見せていただいても?」
スーツに興味を持って声をかけてきたのか。
丁度いい、この人の店で目立たない服に買い替えるとするか。
「わかりました。ではあなたの店に案内してもらえますか?」
足下を見られないように、少し胸を張って貴族っぽさを演出してみた。
ちょっと貴族っぽく立ち回ろうと思ったけど、ぎこちなかったかな。
男の店に案内してもらい、民衆の間で流行の服を用意してもらい着替えると、スーツを見せていただけるならその服はサービスで差し上げますと言われた。
まじか、ラッキー。
ん?ってことはスーツを売ればお金になる?
「この服を買い取るとしたら、君はいくらの値を付けますか?」
「こ、このような上質な衣服をお売りいただけるのですか!?」
「金額次第ですが」
貴族っぽく振舞ってみるが、結構つらい!
「むむむむ!生地も仕立ても超一流!寸分の狂いも無く一定間隔で織られた精密な生地でありながらも空気を通し快適性も!王家の礼服でもこれほどの仕立ての物はないはず。つまり金貨100、いえ150は確実に……」
なるほど金貨150枚は確実か。
金貨の相場は知らないけど、もう少し粘れそうだな。
セットで15万で買ったスーツが金貨150枚くらいってことは、金貨1枚1000円ってところ?
「決めました!金貨200……。いえ、210枚でいかがでしょうか」
お!なかなか増えたぞ。
相場分からないから何とも言えんけど。
「金貨210枚か……」
「す、すみません!金貨230枚!この金額でいかがでしょうか!?」
増えた!?
相場が分からなくて悩んでいたのを見て、渋ってると思われたのか?
23万で買ってもらえるなら悪くないか。
「それはスーツ、上着のセットだけの金額ですか?」
ワイシャツと肌着はできれば返してほしいんだよなぁ。
今着てる服も軽くて悪くはないんだけど、若干チクチクするし。
ネクタイは要らないけど。
「で、でしたら!下のシャツと襟元の飾り布も合わせて金貨250枚、いえ!255枚でいかがでしょうか!!」
流石に肌着は勘弁してくれたか。
「わかった。では金貨255枚で」
「ありがとうございます!すぐにご用意してまいります!!」
男はほくほく顔で奥に飛んで行った。
未知の服が手に入るのがよほど嬉しいのかな。
自分の好きな分野の物なら分からなくもないか。
直ぐに戻ってきた男の手には麻袋が2つ握られている。
「お待たせいたしました!大金貨20枚と金貨55枚でご用意させていただきました!ご確認ください」
なるほど?
この大きな金貨が大金貨か?これが1万円程度ってことかな?
「ふむ。確かに。では私はこれで」
「またのご来店お待ちしております!!」
うーん。店主に肩に下げられるくらいの袋をもらって、金貨を入れてるけど。
大金の入った麻袋を持ち歩くのはスリに遭うのも怖いし考えないとな。
取り急ぎ泊まるところを確保して、あとは飯か。
屋台を眺めながら歩いていると美味しそうな匂いの串焼きを見つけた。
店の前で立ち止まっていると、串を焼いてる男が話しかけてきた。
「おう!あんちゃん!うちの肉串1本どうだい!?」
「せっかくだし、1本頂こうかな」
そういって金貨を1枚出すと、ちょっと嫌そうな顔をして男は金貨を受け取り、銀貨9枚と黄銅貨7枚が戻ってきた。
む?金貨は1000円程度じゃないのか?肉串1本30円?この世界の相場がわからん……。
受け取った肉串はシンプルに薄い塩味だけど、脂がのっててなかなか美味しい。
「あんちゃん!露店の屋台で金貨はできればカンベンだぜ?うちじゃなかったら断られてたぞ?」
「すみません。お詫びにもう1本買わせてもらいます」
「へへっ。そうこなくちゃ!まいど!」
この店員さん話しやすいし、宿の場所でも聞いてみるか。
「この辺りでおすすめの宿ってどこかあります?」
「そうだなぁ。この通りをまっすぐ進んで、噴水がある広場を右に曲がって少し進むと、左手に憩いの兎亭って宿があるから行ってみるといい。繁華街から少し外れているが安くて飯もうまいぞ」
「ありがとうございます。これは情報料と両替の詫びです」
そういって残りの銅貨4枚を渡すと、肉串屋は笑みを浮かべ受け取ってくれた。
肉串屋に聞いたとおりに通りを進んでいくと、木造2階建ての大きな建物が見えてきた。
「憩いの兎亭か。ここだな」
中に入るも、まだ明るい時間だからか静まり返っていた。
だが、人が入ってきたことに気が付いたのか、奥から体格のいい男性が出てきた。
「いらっしゃい!お泊りで?」
「ええ。空いてますか?」
「1人部屋でいいか?一泊銀貨3枚。朝夕付きなら銀貨4枚頂くぞ?」
「ええ、とりあえず一泊、食事付きでお願いします」
銀貨を4枚差し出すと、代わりに部屋の鍵を渡された。
「まいど!部屋は2階の突き当り左の部屋を使ってくれ。夕食は夕刻の鐘の音が聞こえてから降りてきな」
「わかりました」
部屋の前に着きドアを開けると、ベッドと小さなタンス、小さな一人用のテーブルとイスだけが置かれたシンプルな3畳ほどの広さの部屋が現れた。
俺は部屋に入るなり、そのままうつ伏せの状態でベッドに倒れ込んだ。
「ふあぁ~。いろんな意味でつかれたぁ~」
異世界とかマジかよ~。
何も分からない状態で異世界に放り出されて、これからどうするんだよ~!!
俺が召喚されたってことは、この世界には魔法とかもあるってことだよなぁ。
魔物とかも居るのかな?
物語なら、ここで最強の力が覚醒してチート勇者に!とかで魔物を蹂躙する流れなんだろうけど。
俺は戦いとか絶対に嫌だし、血を見るのも無理だからなぁ。
これからどうしたものか……。
そういえば。
王城で触れた水晶に俺の持ってる力?能力?が表示されていたっけ。
【ふるさと納税】と【鑑定】だっけか?
【鑑定】はまぁ何となくわかるけど。
【ふるさと納税】ってなんだよ……。
異世界に来てまでその単語を耳にしたくなかったんだけど。
年末、俺を苦しめ続けた【ふるさと納税】が異世界まで付いてくるとか、何の嫌がらせだよ。
それにしても、どうやって能力って使うんだろ?
まぁ物は試しか。
俺は体を起こし、何となく両手を前に出し口に出して叫んだ。
「さあこい!ふるさと納税!!」
所持金 金貨284枚 銀貨5枚
ここまでお読みいただきありがとうございます!
ブックマークや評価をいただけると励みになります。
誤字脱字等ありましたら、お気軽にご報告いただけると嬉しいです。




