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ふるさと納税で気ままな異世界生活?  作者: 瀬良・B・月季
2章 新都市開発編

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27話 家探し

俺はエン爺とライアを連れて商業ギルドを訪れていた。


「本日はどのようなご用件でしょうか?」


今日ここに来たのは家を借りるためだ。

トルネに聞いたら商業ギルドで賃貸物件の斡旋も行っているということだった。

単体の不動産屋という業種はなく、建物は全て商業ギルドが管理しているらしい。


「一軒家を借りたいんですけど紹介を頼めますか?」


「ええ、構いませんよ。希望をお聞きしてもよろしいですか?」


事前にエン爺とライアにも希望を確認したところ。

エン爺は特になし。

ライアは植物を育てたり、光合成が出来る庭が欲しいとのことだった。

俺の希望としては、そこそこのキッチンさえあればあとは普通でいい。

毎日本格的な料理をするつもりもないしね。

理想を言えば風呂も欲しいけど、エクレール公爵は入浴の習慣があまりないといってたし、あるのかな?


「庭付き一戸建てでそこそこ大きなキッチンと、出来れば風呂もあると嬉しいのですが」


「お風呂ですか……。少々お待ちください」


そういって受付の男性は奥へ入っていった。


うーん。お風呂は流石に一般家庭にないのかなぁ。



受付の男性職員が戻ってくるのをカウンターで待っていると、後ろから急に声がかかる。


「そこのお前!やっと見つけたぞ!」


ん?なんだ?


振り返るとそこには、いつものように護衛を二人連れたラーサンがこちらを指さして立っていた。


うわっ。めんどくさい。


「なんだそのあからさまに嫌そうな顔は!!」


あ、顔に出てた?

嫌そうじゃなくて嫌なんだよ。

絶対めんどくさいじゃん。


「お前!ボードゲームの開発者らしいな!」


「そうですけど。それが何か?」


「俺と一緒にこい!」


「え?嫌です」


「いいから来い!!これは命令だ!!」


ほんとにこいつ何様のつもりだよ。

どこぞの糞王を思い出す。


「今忙しいんで帰ってくれませんか」


「うるさい!これはヘイゼル侯爵の命令だぞ!?お前は侯爵様の命に刃向かうのか!?」


「ヘイゼル侯爵様がどなたが存じませんが、私はこの国の民ですらありませんので、この国の貴族の方の指示に従う義務はありません。お引き取りください」


「ぐぬぬぬ!いいから来いといっているだろう!!お前たち!こいつは公爵様の命に背く不敬者だ!連行しろ!!」


ラーサンが護衛の二人に指示を出し、護衛の一人が俺の腕を掴もうとしたそのとき。

エン爺が護衛の腕をつかみ、俺に触れようとした護衛を制止した。


「スズヤ殿に無礼を働く者は、何人たりとも容赦いたしません」


俺は小声でエン爺に「ケガはさせないようにね」とだけ伝えると、エン爺は小さくうなづいた。


「くっ!なんだこのジジイの力は!?」


護衛の男はエン爺に掴まれた腕を引きはがそうとするも、エン爺に掴まれた腕は微動だにせず、うろたえ始めた。


「おい!どうしたんだ!貴様は元Bランク傭兵だろ!こんなジジイさっさと振り払ってしまえ!」


「それが……こいつ、凄まじい力でびくとも……!おい!加勢してくれ!!」


もう一人の護衛もエン爺の腕を引き剥がすのに加勢に加わる。

しかし二人がかりでもエン爺に掴まれた腕を振り払うことは叶わなかった。


「はぁ。二人がかりでこの程度ですか。アレク殿たちと比べるとまるで足元にも及びませんな」


そういってエン爺は掴んだ腕をパッと手放し、ラーサンの護衛を解放した。

急に手を離されたことで、勢い余って二人は後ろに大きく転倒してしまう。


いやまぁ……。

龍の牙の人らは現役Bランクだし、俺の出す食材で永続バフも大量に得てるから普通の傭兵と比べると身体能力は頭抜けてるからね?

そんな彼らと比べるのは流石にかわいそうだと思うよ。


「何している貴様ら!老人一人にてこずりやがって!高い護衛料を支払ってるんだぞ!!!」


いや、護衛って守るために雇うものであって、他者を害するために雇うものではないでしょうに。

金を払って他者を害する者を雇ってたら、それはもう野盗か暗殺者だよ。


「見ての通り、俺を力ずくで連れていこうとするならエン爺が黙ってませんよ。何の目的があって俺を連れていこうとしているかは分かりませんけど、お引き取りください」


「くそっ!俺にたてついたことを後悔させてやるからな!!行くぞ貴様ら!!」


捨て台詞を吐いてドカドカと大きな足音を立てながらラーサンは護衛を引き連れて商業ギルドを出ていった。


まったく、何だって言うんだいったい。




「あのー、大丈夫ですか?」


騒動を静観していたのか、いつのまにか受付に戻って来ていた男性職員が不安そうに俺に声をかけてきた。


「ん?ああ、大丈夫ですよ。うちの護衛は優秀なので」


エン爺がいてどうにかなることはまずない。

いざとなれば、今はロビーの椅子に座り、市場で購入した果物を齧ってのんびりしているけどライアもいる。

この二人を跳ねのけられるような存在はまずいない、と思う。



「それならいいのですが、ラーサンさんは商業ギルド内でも良くない噂が絶えませんので、重々お気を付けください。先代はまじめで立派な方だったんですけどね……」


やっぱ二代目のボンボンは残念なのかな。

いや、トルネみたく立派な考えを持った人もいるし、何代目とか関係なくラーサンがダメダメなんだろうな。


「ご心配ありがとうございます。それで、いい物件はありますか?」


「いえ、それなのですが。王都内の一般区画には希望に沿える住宅の空きはありませんでした。貴族街にはあるのですが……」


貴族街かぁ。

どれもこれもでっかい屋敷だったし、流石に3人で暮らすには広すぎて持て余すから無理だなぁ。

いちおう価格だけ聞いておこうかな。


「ちなみにお値段は?」


「いま紹介できるのは物件は1か月金貨120枚の物件と、250枚の物件になりますね」


高いよ!!月数百万円の家賃って!!

東京の一等地の高級マンションかよ!?

ん?王都の貴族街に建つ豪邸の使用料って考えると、庭付きで部屋数もかなりあるだろうから、意外と安いのか?

いやいや!そうだとしても俺には有り余るし、やっぱ高いよ!


「流石に予算的に厳しいですね。それに3人で過ごすには貴族街の住宅は流石に広すぎて持て余すので遠慮しておきます」


「あはは、そうですよね」




一つ気になることがあるので、俺はロビーの椅子で林檎を齧りながら待機していたライアに耳打ちした。


「――ってね?――とかできそう?」


「ん。いける」


ライアはサムズアップで答えてくれた。



※  ※  ※



ラーサンはスズヤを無理やりにでも連れてこようとしたが、護衛の老人に阻まれ失敗したことをヘイゼル侯爵に報告にきていた。


「はぁ。どうして穏便に話をできかった……」


私は無理やり連れてこいとは言ってないんだが……。


「ヘイゼル侯爵の名前を出したにもかかわらず、あいつは国民じゃないので従う義務はないと言い訳をし、こちらの要求を断ったのです!不敬にも貴族であるヘイゼル侯爵様の要求を跳ねのけようとしたので、私は不敬者を連行しようとしただけです!」


何が言い訳だ。

私の名前を出して強行に走るとは……。

これでは接触するのは絶望的か。

真に恐れるべきは有能な敵ではなく無能な味方だというが、正にその通りだな……。

グエル商会と関わるのはそろそろやめるべきか?


それにしても元Bランクの傭兵二人をあっさり跳ねのける護衛まで連れているというのか。

こちらでもボードゲーム開発者スズヤの情報を調べてみたが、Bランク傭兵と共に龍の巣の調査に赴いたという話は眉唾物だと思っていた。

しかし、それほどの護衛を従えているのならあり得ぬ話ではなさそうだな。

老兵というのであれば引退した元Aランク冒険者あたりを囲い込んでいるのか?

だがその程度で商人のスズヤが禁足地に同行することを、果たして堅物として有名な傭兵ギルドのマスターが許可を出すだろうか?

聞き知る以上に得体の知れない男のようだな。

であれば、こちらに取り込む方が得策か?


「それで?スズヤは商業ギルドで何をしていたのです?新たな商品の登録ですか?」


「いえ、住宅を探しているようでした。風呂付の住宅を探していたかと」


風呂付?

ということはスズヤは北方のトネリ王国から流れてきた商人か?

かの国は温泉が有名で、一般家庭にも風呂が広く普及していると聞く。


「風呂か。この国の者であれば欲するのは珍しいが、商人であれば珍しくもなかろう?」



ボードゲームに関しては妨害も篭絡も厳しいな。

こいつが私の名前を既に出している以上、警戒されているはず。

ボードゲームの件は諦めて、スズヤに近づいて味方になった方が私にとって利があるのでは?


しかし、バカが私の名を勝手に使い不興を買った状況で一体どうすれば?

金には執着していなそうだし、名声を求めている風でもない。

とすれば弱点があるとすると女か?

確か少女を連れているらしいな。


「ラーサン。スズヤの付き人に女性はいたか?」


「ええ、赤髪の少女が一人。12~13才程度だと思います。見た目は見ても似つきませんので実子ではなさそうです。私がスズヤを連れていこうとしたときも、一切動揺することもなく、こちらのことは無視して何かを食べておりました」


ふむ。伝え聞く人物像だと潔癖かと思っていたが、やはり少女を連れ歩いているのか?

スズヤに危機が迫っても動揺を見せずに無視していたのであれば、その少女は親族や従業員、同業者の線は薄いか。

近しい者であれば少なからず動揺を見せるはず。

同行しているにも関わらず、スズヤに一切の関心を持たぬ存在となると、やはり奴隷か?


「ふむ……。スズヤは意外と少女が趣味なのか?」


ヘイゼル侯爵は窓の外の庭園を何気なく見つめつつ、なんとも言えない表情でつぶやいた。




所持金 金貨5189枚 銀貨9枚 黄銅貨2枚 青銅貨8枚

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