25話 街おこし計画
エクレール公爵親子の新領地経営に協力することとなったわけだが。
俺はぶっちゃけ領地の運営なんてやったこともないし、クラリス嬢よりも素人の自信がある。
そんな俺に何ができるか考える。
【ふるさと納税】は物を購入できるだけで領地の運営に関しては直接役に立つとは流石に思えない。
となると俺に出来ることと言えば、地球で得た知識や経験から伝えられる案を出すことくらいだ。
「まずは、森林地帯はともかくとして、岩石地帯の有効活用方法ですよね」
「ああ、こちらを見て欲しい」
そういってテーブルに広げられたのは、今回エクレール公爵家が得た禁足域近辺の地図。
うーん。8割ほどが禁足域の岩石地帯かぁ……。
「石材を加工して出荷するとかは?」
「国内であれば多少は需要があるが、国外までとなると、石材の需要は少ないね。それにあまり遠方まで運ぶとなると運送費用が掛かりすぎて利益が見込めるかどうか……」
そうか。
あっちの感覚で話してたけど、この世界は基本的に馬車での運搬だった。
石材なんて重たいものは量を運べないから割に合わないのか。
御影石とか大理石が採れるなら、高級石材として利益が出せるかもしれないけど、ろくにサスペンションなどもついてない馬車では運送中に割れるリスクも考えると高級石材としての売り出しも地産の目玉として扱うのは流石に厳しいか。
そもそも先日通過するときに見た限りでは、岩石地帯でそれらしい石材は見当たらなかったしなぁ。
「そうですね。そもそもの話、火山が近いというのも色々難しいものがありますね。先日通過したときは過去に火砕流が発生と思われる形跡も確認したので、火山の噴火対策も必要でしょうし、何よりロックイーターやストーンゴーレムの対応も必要でしょう」
「噴火が起きなければいいのか?それなら我がどうとでも出来るぞ」
「魔物が来なければいい?なら簡単。魔物を捕らえる木を生やす」
「む?二人ともそんなこと出来るのか?」
エン爺もライアも軽く頷いた。
「というわけで、火山と魔物の対処は問題なさそうです」
「そ、そうか。頼もしい限りだよ」
斜め上の方法であっという間に大きな問題が解決したことに、流石のエクレール公爵も若干動揺を見せていた。
二人に協力してもらえば街を作ること自体には特に問題なさそうだね。
あとは産業か。岩石地帯……。
どう考えても農業は厳しいし、石材をある程度売り出すとしてもそれだけだと弱いよなぁ。
んんー。建材として売り出すにしてもレンガの方が軽くて丈夫だろうしなぁ。
ん?そういえば?
岩石地帯って時折風に乗って硫黄の匂いがしたし、間欠泉があったよな?
「あっ!!温泉ですよ温泉!!」
「温泉?確かに他国では温泉で有名な都市もあると聞くけど。ファーランド王国の民は基本沐浴で、あまり入浴の習慣がないからねぇ。それにこの場所に人を呼び込むのは厳しいんじゃないかな?王都からも馬車でも2~3日と、そこそこの距離があるし、観光地にするにしても周辺が岩石だらけの土地では保養地としても弱いように思えるけれど」
「物は考えようですよ。周りに何もないってことは露天風呂を作れば、視界を遮るものが何も無い満天の星空を眺めながら入浴ができます」
「ふむ。私も温泉については詳しくないが、露天風呂か。いいかもしれないね。では人足については?流石にこれまで禁足地だった場所では、温泉があるというだけで人を呼び込むのは難しそうだけども」
「それは宣伝の仕方次第かと!禁足地だったからこそ1000年ぶりに解禁された土地を観光できることを謡ってみるとか、ロックイーターやストーンゴーレムがいることも宣伝に使って傭兵を呼び込んでもいいですし」
「なるほど。危険な魔物の存在を逆手にとって、逆に傭兵を集める山車に使うのか」
まぁこれは安全が確保されたうえでしか使えない手段だから、ライアの力で都市防衛ありきになるだろうけども。
「それと街起こしのイベントを開催しましょう!!」
「イベント……?」
「はい!ボードゲームの公式大会を開くんです!!」
「ほう?それは実に興味深いね。しかしボードゲームは君とフランゼ商会で独占販売の契約を結んでいると伺っているが、いいのかい?」
「ええ、フランゼ商会会頭のトルネも、ボードゲームの販促のために大会を開くといえば喜んで協力してくれると思います。いっそエクレール公爵家の名前を使って、公爵家主催の公式ボードゲーム大会を開きましょう!」
「いや、それは流石に我が家に都合が良すぎるというか……。フランゼ商会を敵に回す気がするのだが」
「公爵家には大会運営とスポンサーになってもらって、フランゼ商会に会場設営とボードゲームの用意をしてもらえばいいんです。ボードゲームの権利は確かに私とフランゼ商会にありますが、大々的に大会を開くとなると予算と人手は我々だけでは足りません」
「なるほど、販売の独占契約は結んでいるが、それ以外は自由ということか」
「その通りです」
「しかし、一度そんな事例を一度作ってしまうと、各地で勝手にボードゲームのイベントを開かれるようになると思うのだが、いいのかい?」
「ボードゲームの宣伝を勝手にやってくれるなら歓迎ですよ。神聖契約しているので盗作は不可能ですし、私もフランゼ商会もボードゲームが知れ渡ればそれだけ利益に繋がりますし、ただで宣伝を請け負ってくれるなら万々歳です」
「はは。なるほどね。たいていの商人は利権を独占して規制しようとするものだけど。勝手にイベントを起こされた方が商品の宣伝になる……か。すごい考え方だね。温泉とボードゲームの大会か。うん。街の呼び込みにはこれ以上ないかもしれない。クラリス。どう思う?」
「はい。私は入浴するのも好きですし、多くの方にお風呂の良さを知ってもらえるのは嬉しいです♪スズヤ様が考案されたボードゲームもとても面白いので、多くの方を招いての大会開催というのも心躍ります♪」
「ふむ。ひとまず大方の方針は定まったようだね。1000年ぶりに禁足地の開放ということもあり、街作りには王宮からも人手が貸し出されることになっているし、我が領からも街に必要になるであろう人材を募集しておくよ。予算の方はエクレール公爵家が持つからスズヤ殿はクラリスの傍について、色々と案を出してもらえるかな?クラリス、私も助言はするし偶に確認に来るけど、スズヤ殿と相談しながら進めて見なさい」
クラリス嬢は15歳にしては落ち着いてるし大人びてるとは思うけど、いきなり代官の少女に新設する街作りを先頭に立って指揮をさせるの?
エクレール公爵様は優しい人だと思ってたけど、流石に娘に厳しすぎない?
この世界の貴族ってこれが普通なのかな?
「わかりました。立派な温泉の街を作り上げて見せます。スズヤ様。それとエン爺様。ライア様。どうか協力よろしくお願いいたします」
「うむ。良い気概だ。クラリスよ」
「ん。主様が手伝うなら私も手伝う」
「よろしくおねがいします」
俺はクラリスと握手を交わした。
その後、ヴァンスさんにフランゼ商会まで馬車で送ってもらい、事後報告となってしまったが、トルネにエクレール公爵家で話した内容を説明した。
一応対外的にはまだ禁足地の開放は口外されていないので、街作りに着手する用意が整って、国から発表されるまでは公にはできないということも伝える。
「えぇ!?エクレール公爵家が禁足地で新たに温泉街を!?そこに公爵家がスポンサーになってボードゲームの公式大会ですか!?やります!是非ともやらせてください!!!」
「お、おう。事後報告になってすまないね」
「何を言っているんですか!!こんな大チャンス持ってきていただけて感謝こそすれど、スズヤさんが謝る必要なんて一つもありませんよ!むしろ感謝します!!あぁ……♪生産と販売が軌道に乗り始めた矢先に、公爵家と縁を持てた上に、禁足地の新たな街で大々的なボードゲームの布教と宣伝を兼ねた公式イベントまで任せてもらえるなんて♪借金で絶望していたのが嘘みたい♪」
「おーい。感慨に浸ってないで、戻って来てくれー」
「はっ!すみません!それで、いつ頃イベントは開催予定なのですか!?」
「んー。最低限、街が形になるには着工開始から半年くらいかかるって話だったね。来月当たりに国から禁足地の開放について御触れは出すらしいから、イベント会場の設営でフランゼ商会が乗り込めるようになるのはそれからかな?エクレール公爵家のクラリス嬢が代官として取り仕切る予定だから、俺らはクラリス嬢と打ち合わせをしつつ話を進めて行く形になると思う」
「クラリス様!!クラリス様といえば清楚でありながら、魔法の才にも優れる文武両道の令嬢として有名なお方!あぁ♪社交界の薔薇とも称されるクラリス様とも縁が結べるなんて♪スズヤさん!本当に感謝します!!」
クラリス嬢ってそんなに有名だったの?
魔法にも優れてるのか。
ってか社交界の薔薇ってなに?
綺麗な顔して棘があるってこと?
まさかね。
「後日、顔合わせとしてトルネさんにもエクレール公爵家の王都邸に出向いてほしいってことだけど、大丈夫そう?」
「もちろんです!!いつでもお伺いします!」
「ってことなので、ヴァンスさん。よろしくお願いします」
「畏まりました。お嬢様に報告しておきます」
「よろしくおねがいしまします」
「あ、そうだ。これから色々と入用になるだろうからトルネにこれを渡しておくよ」
そういって俺は肩さげの大きな革製の鞄を3つ差し出した。
「こ、これってまさか!?」
「うん。俺が使ってるのと同じものだよ」
「ふぉぉぉ~!!アーティファクト級のマジックバッグが3つも!?こんな貴重なものをお借りしてもいいんですか!?」
「貸すというかあげるよ」
「えぇぇぇぇぇ!?そ、そんな!?こんな貴重な物!流石にいただけません!!スズヤさん!これにどれくらいの価値があるか理解しているのですか!?1つ金貨1000枚!いえ1500枚は下りませんよ!!そんなものをポンと差し出すなんて!ほんとに商人なんですか!?バカなんですか!??」
いや確かに俺はこの国に来てから商人らしいことを何一つやってないエセ商人だから、そこを突かれると痛いんだけど……。
って、おい。今バカって言ったか?
有能な味方に有能なアイテムを渡して支援しておけば、俺が目立たないし。
トルネさんなら上手く使ってくれるだろうと思ってのことなんだけども。
「これから街作りで忙しくなるし、トルネさんというかフランゼ商会には色々と頑張ってもらう必要があるから物資の用意だけでも楽になればと思ってね。輸送の手間が減らせるだけでもかなり楽になるでしょ?俺からの事前報酬ってことで」
「……わかりました!!全力で仕事に当たらせていただきます!!」
「ただし、くれぐれもマジックバッグだとバレないようにね。ラーサンだっけ?あいつに目を付けられたらめんどそうだから」
「もちろんです!我が商会もいくつかマジックバッグを使用してますが、上手くカモフラージュして活用してますので、その点は抜かりありません!」
「ならよし」
話がまとまったところで、部屋の外がガヤガヤと騒がしくなっているのに気が付いた。
ん?なんだか店の方が騒がしいな?
所持金 金貨5198枚 銀貨6枚 黄銅貨2枚 青銅貨8枚
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