21話 二人目の従魔
本日の料理はシンプルに素麺!
あまり予算も無いというのもあるが、耐熱装備を付けているので暑さに耐えられるとはいえ、この火山窟の中で温かい食べ物を食べたいとは思えない。
素麺を湯がき、その間にボウルに用意した大量の水を冷却ハンディファンで急速冷却!
冷却ハンディファンは大きなひびが入り、凍結付与が使える冷却モードに切り替えることが出来なくなっていた。
でも通常の冷却は出来るので料理を冷やすにはこれで十部使える。むしろ凍結付与は危険なので普段使いのアイテムとしては、事故の心配がない今の状態の方が好ましい。
使い切りで壊れるとはいえ、獄炎龍の本気ブレスを凍らせる機能は流石にヤバすぎる。
茹でた素麺を冷水で洗い、綺麗な氷水を入れた大きめのガラス皿に入れた物をライアを除いた人数分用意する。
そしてクーラーボックスで事前に冷やしておいたガラス製の取り皿に麺つゆを注ぎ、水で割る。
付け合わせにはワサビとショウガ、それとカボスだ。
さっぱりとした食事だが暑い中で食べる素麺は皆に大好評だった。
「うめぇ!いくらでも食えそうだ!」
「んん~!つるつるでのど越し最高!」
「この酸味がある果実の香りが、さっぱりした味を更に爽やかにしてくれますね♪」
「うむ!」
「ほう?これはなかなか。人の世の食事はこれほどまでに発展していたとは!」
うん。獄炎龍さん。
これは【ふるさと納税】で購入した日本の食事です。
俺が出す食事をこの世界の基本と思わないでね?
ライアにはやめた方がいいよ?って言ったけど、カボスを食べるといって聞かないので、余ったカボスを与えると、とてもすっぱそうな顔をしつつも1つずつカボスを頬張っていた。
一応満足してるみたい?
ライアは果物だったら味は問わないのかな?
さて、食事もそれなりに進んだところで、獄炎龍さんお待ちかねのお酒を提供するとしますか。
今回は無難にビールと、追加で日本酒!
なんとなく獄炎龍さんは見た目的に日本酒が好きそうだなぁって思ったから、有名な日本酒の2本セットを1つだけ購入してみた。
というよりももう金貨の残りは20枚を切ったのでこれ以上高価なお酒は無理!
帰りの道中で使える金貨がなくなっちゃう。
事前にクーラーボックスに入れてキンキンに冷やしたビールを早速配ってゆく。
「くぅ~!!これこれ!」
「はぁ~。やっぱスズヤさんの出すお酒は別格!」
「やはり、町で飲むエールとは段違いですね♪」
「うむ!」
「むむっ!なんだこのキレとのど越しは!?これが現代のエールなのか!?信じられん!これほど美味いエールを今の人種は飲んでおるのか」
いや、飲んだことあるのは人種のほんの一握りです。
ってかどれもこれも返礼で付与効果が付いちゃうから、簡単に世に流せません。
日本酒の瓶も開けてグラスに注いでいく。
冷やさなければ火山窟の熱で自然といい感じの熱燗になるので、冷却ハンディファンで冷やした冷酒と熱燗の両方をまずは獄炎龍さんに提供。
「むっ!!鼻から抜ける芳醇な香りとほのかな甘み。先ほどのエールと比べるとかなり酒精は増すにも関わらず、優しくまろやかな口当たり、素晴らしいな!!おおっ!冷やすとまた違った味わいで実に美味い!!美味いぞ!!」
「お、俺も!俺にもくれ!」
「私も!私は冷酒で!」
「私は両方いただきます♪」
「うむ!」
皆日本酒を飲んで満足げな表情でとろけていた。
うんうん。わかるよ。
日本酒おいしいよね。
それからちょっとしたおつまみセットも購入し、用意した酒が空になるまで飲みふけり。
数時間後。
獄炎龍さんを交えた簡素な酒宴はお開きとなった。
酒宴の最中に、俺たちがここに来た本来の目的も獄炎龍さんには伝えてある。
「さて、極上の酒を馳走になった礼に、主らの目的を我が代わりに果たしてやるかの」
そういうと獄炎龍が再び龍の姿に戻り、大きな翼を広げると、通路の奥にある溶岩だまりの上空に飛び上がった。
翼を羽ばたさせながら空中でホバリングしつつ、口を開くと、例の青白い本気ブレスを構える。
そのままじっと溶岩だまりを見つめつつ、何かに狙いを定めるかのように標的を見定めに、獄炎龍は青白いブレスを放った。
衝撃で周囲に溶岩が飛び散るも、ライアがツタでガードしてくれて事なきを得た。
「あの、獄炎龍さん?今のはいったい?」
『見ておれ』
獄炎龍が地面に居り、溶岩だまりを見つめたままそういうので一同は、獄炎龍が見つめる先に視線を集める。
すると暫くして大きな影が溶岩の底から浮かび上がってきた。
プカリと浮かび上がってきたのは体長だけなら獄炎龍よりも大きな、25mプールですら収まり切れなそうな岩のような体表をした巨大な魚型の魔物だった。
その魚の頭部には丸い大きな穴が開いている。
溶岩の中の魚をブレスの狙い撃ちで一撃って……。
そもそもどうやって、見えない魚を感知して狙い撃ちにしたの?
『こやつがお主らのいう地震の原因で間違いなかろう』
「溶岩の中に住む魚の魔物ってまさか……」
マリアはこの魔物に心当たりがあるようだ。
『たしか、人の世ではラーヴァピスキスとかいうておったか?1000年程前はこの魚を目当てにやってくる人種もおったのだがな。これほど巨大になるまで放置されておるということは、今はもう需要がないのか?』
「マリアさん知ってるの?」
「ええ。溶岩魚ラーヴァピスキス。SSランクの魔物です。そもそも溶岩の中に生息しているので邂逅することすら難しい上に、岩よりも頑強な体表でほとんどの攻撃を弾くと言われています。傭兵ギルドの記録によると、最後に確認されたのは1000年程前かと……」
ってことは獄炎龍さんが以前眠る前に交流があった人種が狩りに来てたのが最後ってことか。
『ふむ。我が眠っている間、誰も狩りに来ぬからここまで巨大に成長した個体が生まれたやも知れぬな。この魚は堅い頭部で大地を削り生息域を広げようとする生態があってな。これほど巨大な個体なら大地を揺り動かすのも当然よ。おかげでうるさくて寝付けなくての』
それでイライラしてたところに俺らが来たから八つ当たりされたのか。
とんだとばっちりで殺されかけたのか……。
「こいつが地震の原因ってことは、これで依頼達成か?」
「よかったですね。アレクさん。これで帰って報告したら依頼は完了ですね」
『む。もう帰るのか?』
「ええ。ここには地震の原因調査と可能であれば原因排除してほしいという依頼を受けてきましたので」
『そうか……』
獄炎龍さん、何だか少し寂しそうだな。
ずっと一人でこんなとこで過ごしていたなら、話し相手が欲しくなったとかかな?
『もうあの酒が飲めなくなるとは……。寂しいのう』
違った。
酒が飲めなくて寂しいのか。
「あの酒はスズヤさんしか取り扱ってないぞ」
『なぬっ!?』
「たぶん、人の世の酒は獄炎龍さんの知ってるエールからそれほど発展してないんじゃないか?俺らもスズヤさんの出す酒を初めて飲んだときは美味しすぎて感動したからな。スズヤさんの出す酒だけが特別なんだよ」
『むむむ……!?』
何やらすごく葛藤してるみたいだけど、流石にこんなとこまで定期的にお酒を運んでくるとか勘弁だぞ?
あ、竜の牙に運搬だけ頼めばいけなくもないか?
流石にこの過酷な環境に宅配を頼める人なんてそうそう居ないよね。
そんなことを考えていると、獄炎龍は再び人化し俺の前に立っていた。
「お主、スズヤといったか」
「はい?」
「我のブレスをも防ぐほどの膨大な魔力を持つドライアドをも従える男なら不足はないな」
まって、何だが不穏な言い回し。
その先をあまり聞きたくないんだけど!?
不足あります!!
俺は色々不足してるからその先を口に出すのは勘弁してください!!
「我と契約せぬか?」
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