14話 チートスキル
「主。起きて?」
俺はライアに体をゆすられて目を覚ます。
頭がガンガンする。
あぁ。
久々の二日酔いだ……。
テントを出ると龍の牙の面々は既に出立の準備を始めていた。
「うぅ。おはようみんな」
「あぁ。おはよう……」
ぼんやりした顔で黙々とテントを畳んでいるアレクだが、いつもの覇気が無く、若干顔色が悪い。
心なしかいつもより元気が無く見える。
周りを見渡すと、ライアとガイ以外の3人はどうやら俺と同じく二日酔いらしく青白いゾンビのような顔をしている。
俺やアレクはともかく、女性陣のゾンビ姿は見たくなかったな……。
こんなときはあれだな……。
【ふるさと納税】を開いてリストのある飲み物をポチる。
二日酔いに聞くウコンのドリンク!!
さっそく、見るからに二日酔い仲間の3人に配り4人で並んで一気に飲み干した。
すると、先ほどまでの気持ち悪さが嘘のように一瞬で体調が改善した。
あまりの効果に驚き、恐る恐る残っているドリンクを鑑定してみる。
・ウコンドリンク
避けられない飲み会や二日酔いに是非!
【酩酊・宿酔・泥酔即時回復】
【アルコール耐性付与】8時間
なるほど?
つまりどんなにアルコールを飲んでも一瞬で酔いを醒ます上に、8時間耐性をつけると。
職場にいた面倒な絡み酒をしてくる上司にこれを飲ませたかった!!
これって酒癖悪い人の矯正とか、逆に酒を飲むのを避けられない人に対してめっちゃ有用なのでは!?
これまで色々購入して来て分かってきたけど、飲食物は即時効果や一定時間の制限付きバフを得られて、アイテムは用途に合った付与効果が付いてるのかな?
あっ!!そういえば……。
林檎は永続効果とか持ってたけど、肉とか野菜ももしかして……?
昨日は【ふるさと納税】で購入した食材を椀飯振舞しちゃったけど、大丈夫だよね……?
試しに自分を鑑定してみればいいのかな?
恐る恐る自分の能力値のみを鑑定してみる。
スズヤミナト 35歳
レベル18
HP 128(+227) MP 56(+246)
力 27(+53)
耐久 23(+29)
魔力 18(+112)
敏捷 27(+42)
器用さ 40(+39)
ん?レベルが上がってる?
俺一度も戦ってないよ?
って、まって!?
なんか色々おかしい!!
基礎の能力値よりも、追加された能力値の方が凄いことになってるんだけど!??
魔法とか一切知らないのに魔力が異常に伸びてる!!
「ん?どうしたんだスズヤさん?青白い顔して。まだ二日酔い治ってないのか?」
アレクが不思議そうな顔をして話しかけてきた。
これは流石に言わないわけにはいかないな……。
「すみません。皆さんに大事なお話があります」
「どうしたんだ?急に改まって?」
「ずっと黙っていたんですが、実は――」
フリーゲル王国の聖女召喚で何故かこの世界に召喚されたこと。
そして【ふるさと納税】という不可思議なスキルを持っていること。
【ふるさと納税】で購入した商品は不思議な効果を持つこと。
飲食物は即時効果やバフを、食材類は永続バフを得ることを包み隠さずに白状した。
「まじかよ。ん?聖女召喚でなんで男のスズヤさんが……?」
うん。俺もそこはよくわからない。
「えっ!?ってことはスズヤさんの出す食事を食べ続けたらもっともっと強くなれるってこと!?」
ん?エレナさんは意外と受け入れて喜んでくれてる?
「なるほど。ってことはアーティファクト級の魔道具を格安で入手できるということですね♪」
あれ?マリアさんも?
「うむ。強くなれるに越したことはない」
ガイさんまで?
「あの、皆さんよく分からない効果付きの物を、これまで食べさせてしまっていたのに怒らないんですか?」
「ん?なんでだ?スズヤさんの出すものはどれも美味いし、美味い物を食ったうえに強くなれるんならいいことづくめじゃね?」
「そうそう!能力上昇系の秘薬なんてダンジョンでも滅多に手に入らないくらい超希少だし!」
あ、そういう秘薬ってこの世界には既にあるものなんだ。
だから意外とすんなり受け入れられたのかな?
ってかダンジョンあるの?この世界?
「ですが、永続の能力上昇効果の食材に、無数のアーティファクト級の魔道具、そして強力なバフ効果や即時効果のポーション。それらを金貨数枚から数十枚で制限なく購入できると知られると、どの国からも追手を掛けられそうですね……」
マリアは深刻な顔をしてそう告げる。
「……うむ」
ガイも同じく難しい顔でマリアの意見に同意していた。
「ひぃっ!?」
確かに、俺を召喚したフリーゲル王国のあの糞王様に知られたら無理やりにでも連れ戻されて飼い殺しにされかねない。
「たしかに。どれも効果が規格外すぎるよな」
「あのー。このことは――」
「言わねぇよ!ってか言っても誰も信じねぇって!!」
「そうそう!永続バフの果物を金貨一枚で十数個購入できるとか言ったところで誰も信じないよ~」
「特大容量のマジックバッグが金貨数枚で手に入るなんて言われたところで、新手の詐欺と思われるのが関の山でしょうねぇ」
「うむ」
そりゃそうか。
飲むだけで強くなれます!とか、これを食べるだけであなたもムキムキに!とか言われても、どう考えても悪徳セールスか誇大広告の詐欺商品としか思えないか。
「まぁ俺らは絶対口外しないから安心してくれ!でもこの情報を俺らだけの秘密にするってのもな」
「そうですね。出来ればどこか信頼のおける権力者の後ろ盾を得られれば、スズヤさんの身の安全も保障されるのでしょうけれど」
「うーん。確かに権力者の後ろ盾があった方がいいかもしれないけどさ、ライアちゃんの護衛を突破できる戦力ってそうそういなくない?ただでさえ強いライアちゃんがスズヤさんと寝食をずっと共にしてたら、もっともっと強くなるってことでしょ?」
「うむ」
「確かに」
「ふふっ♪数年後には世界最強の従魔になっていそうですね♪」
「龍の牙のみんなは急に強くなって戦闘に違和感が出るとか、目立って困ることとかはないの?」
「まぁ目立つかもしれないけど、俺らは元々Sランク傭兵を目指してパーティを組んでるからな。パーティ名前の由来も伝説の八龍をいつか討伐して、その牙で武器を作れるくらい強くなろうぜ!ってことでつけた名前だし、強くなれるなら大歓迎だぜっ!」
「伝説の八龍。そんなヤバソウな存在がこの世界には居るのか。ん?龍?龍といえば――」
「ああ。そうだぜ。これから向かう龍の巣に眠るとされている獄炎龍も八龍の一角らしい。まぁ伝承だからどこまでほんとか分からないけどな」
「ふふっ♪アレクは子供の頃から『獄炎龍を討伐してドラゴンスレイヤーに俺はなる!』っていってましたからね♪」
「なっ!?マリア!!」
「あー、言ってた言ってた!!」
「うむ。懐かしい」
「お前らなぁ!!」
アレクは顔を真っ赤にして恥ずかしがっている。
普段オラオラしてるアレクが照れてる姿、めっちゃほほえましいな!
「まぁ獄炎龍を倒すってのはただの夢って言うか、追い続ける理想ってところだけどな。実際、伝承によると、獄炎龍は自分から人類に敵対することはない温厚な龍らしいから。仮に目覚めていて遭遇したとしても戦闘になる可能性は限りなく低いと思うぞ」
「意外と龍って温厚なんだ」
「いや、霊峰の頂上に住む凍獄龍は近づくものは誰であろうと容赦しないと言われてるし、聖光龍と暗黒龍は有名なおとぎ話に出てくるんだが。世界を二分した聖戦で人類と魔族を率いて対立して、地上の生物の大半を死滅させたとされてるから。全部の龍が温厚って訳じゃないと思うぞ」
前言撤回。
いや、龍やばすぎだろ。
スケールがでかすぎて怖さがわからなくなるけど、一般人が関わっちゃダメな存在じゃん。
獄炎龍はおとなしいみたいだけど、不安だなぁ……。
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