第8話:外圧の脅威! 『ママ友公園外交』と公園の縄張り争い
作戦開始時刻、木曜日午前1015(ヒトマルヒトゴー)。
晴れ渡る秋空のもと、我が軍の要人(3歳長女)を伴い、
私は地域の中立地帯――『第一街区公園』へと降り立った。
午前中の公園。
そこは未就園児を抱える各国の司令官が集う、
極めて高度な多国間外交(情報戦)の最前線であった。
「……周囲警戒。中立地帯へ進入する」
私は動きやすさを最優先した軽装で
公園のベンチ付近へとアプローチを開始した。
公園という戦場において、無防備な立ち振る舞いは命取り(マウントの標的)となる。
かといって警戒心を剥き出しにすれば、孤立(情報網からの排除)を招く。
自然体でありながら、スキを見せない『外交的スタンス』が求められるのだ。
「あら~! メイちゃんママ、おはようございます!」
声をかけてきたのは、近所に住む『高橋国』の司令官(ママ友)。
情報収集能力に長け、他国の内情に詳しいベテラン外交官だ。
「高橋さん、おはようございます。今日もいい天気ですね」
笑顔で挨拶を交わしつつ、ベンチでの『公園外交』がスタートする。
「ねえねえ、噂で聞いたんだけど…… 来年の習い事、もう何か決めた?
あそこの〇〇スイミング、もうキャンセル待ちなんですって!」
(……来たわね! 習い事マウントを兼ねた情報探り……!)
私は表情一つ変えず、静かに茶をすする。
「うちはまだ検討段階ですね。 本人の適性(興味)を見極めつつ、
焦らず展開(捜索)しようかと」
「あらぁ~、余裕ねぇ! うちは英語とピアノを早期投入(早期教育)
させちゃったから~!」
軽やかに放たれるマウント弾。
だが、熟練の司令官はこれしきの射撃で揺らぐことはない。
「素晴らしい決断力ですね。高橋さんのお子さんなら きっと
グローバルに活躍されますよ」
適度に相手の自尊心を充填(褒める)し、攻撃を完全無効化!
これぞ我が国の『平和的外交手段(かわし術)』である。
しかし、大人の外交戦線が平穏を保っていたその時、
現場(砂場)から緊急警報が発令された!
「それ、メイちゃんのー!」
「ぼくがさきにつかってたんだもんー!」
砂場中央にて、長女(3歳)と高橋国の要人(3歳男児)による
『スコップの所有権を巡る領土紛争』が勃発したのだ!
お互いに赤いスコップの柄を掴み、顔を真っ赤にして引っ張り合っている。
「……現場で領土問題(争い)が発生!」
高橋ママと私の間に、走電のような緊張感が走る。
子ども同士の喧嘩における最悪のシナリオは、 親同士の感情的な対立へと発展し、
外交関係が破綻することだ!
「メイちゃん、ごめんねぇ! うちの子が意地悪しちゃって!」
高橋ママが素早く介入(介入)を試みる。
だが、ここで相手だけに謝罪させれば、我が国の外交的優位が損なわれる。
迅速かつ対等な手打ち(停戦協定)が必要だ!
「いいえ高橋さん! こちらこそ申し訳ありません! うちの要人も主張が激しくて……!」
私は速やかに砂場へと向かい、長女の目線まで腰を落とした。
「メイ、交渉の基本は『相互譲歩』よ。
あなたには青いバケツという強力な資産があるでしょう?」
「……あおいバケツ……?」
「ええ。そのスコップで砂をすくい、 お友達のバケツへ補給してあげなさい。
共同作業の構築よ!」
長女は少し考えた後、スコップを相手に譲り、 代わりに青いバケツを差し出した。
「……いっしょに、こうえんのお山つくる?」
「うん! つくるー!」
一瞬で解消される緊張状態。
要人たちは笑顔で泥だらけになりながら、共同で巨大人造物(砂の山)
の建設を開始した!
「まあ! 朝倉さん、教え方がお見事ね!」
高橋ママの称賛の笑み。
「いいえ、子どもたちの柔軟な外交能力に助けられました」
1130(ヒトヒトサンマル)。
無事に協定を結び、他国との良好な関係を維持したまま、
私は長女の手を引いて帰路についた。
大人の世渡りと、子どもの社会性。
公園という小さな戦場で繰り広げられる外交戦を制し、
主婦の知恵は本日も、我が国の平和を静かに守り抜いたのだった――。
(第1章 第8話 終わり)
お読みいただき、ありがとうございます。
公園という中立地帯で繰り広げられるママ友同士の
「情報戦・習い事マウントのかわし方」と、
砂場で勃発する「子ども同士のおもちゃの奪い合いに対する平和的停戦協定」
を描いてみました。
親同士の人間関係を壊さずに子どもたちのトラブルを収めるという緊張感と
絶妙なバランス感覚が要求される日常、これって「我が家」を「国家」に見立てると、
日常における「外交戦」ではないでしょうか。
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