第7話:無慈悲なる地雷原――レゴブロック撤去ミッション
作戦開始時刻、水曜日2230(フタフタサンマル)。
要人二人(5歳&3歳)をベッドへ収容し、 我が『朝倉家司令部』は
完全なる消灯を迎えた。
一日の激戦を終え、疲れ果てた私は 2階の寝室で横になっていた。
だがその時、乾いた喉が水分補給(水分補給)を訴え始めた。
(……喉が渇いたわね。1階のキッチンへ向かいましょう)
電気をつけて子どもを起こすわけにはいかない。
私は静かにベッドを抜け出し、暗闇に包まれた階段を 音もなく降りていった。
月明かりだけがわずかに差し込む、深夜のリビング。
静寂に包まれた空間へ、 私が裸足で踏み出した、その第一歩目であった。
――ギュリッ。
「―――――ッ!??!???」
足の裏(特にかかとのやや内側)に、 落雷のような殺人的激痛が突き抜けた!!
声にならない悲鳴(絶叫)が喉の奥で押し殺される。
膝から崩れ落ちそうになるのを、気力だけで必死に踏みとどまった。
(な……なに!? この殺傷能力の高い物体は……!?)
痛みで涙目になりながら、足裏の接地ポイントを指で探る。
指先に触れたのは、硬質プラスチックの角ばった感触、 そして
上部に並ぶ複数の突起。
(……レゴブロック……!!)
そう、それは子どものおもちゃ界における最凶の兵器。
暗闇に身を潜め、無防備な親の足を破壊する『プラスチック地雷』であった!
「……やられたわ。
昼間、要人たちに 『おもちゃを片付けなさい』と命令を出したはずなのに……!」
甘かった。
要人たちの「片付けたよー!」という報告を 鵜呑みにして
検品(最終チェック)を怠った司令官の痛恨のミス!
私は息を整え、目を凝らして暗闇の床を見つめた。
月明かりに照らし出されたリビングの床には、 赤、青、黄色、
そして透明の極小ブロックたちが、 広範囲にわたって無数に散乱していたのだ。
まさに、一歩足を踏み外せば即死の『無慈悲なる地雷原』!
「……これより、深夜の地雷撤去(お片付け)作戦を開始する」
このまま放置すれば、深夜にトイレに起きてくる副官(夫)や、
明日の朝一番に跳ね回る子どもたちが被害に遭う。
司令官として、この危険地帯を放置することは許されない!
道具(掃除機やライト)は使えない。
音が立てば要人たちが目を覚まし、深夜の覚醒モードへと突入してしまうからだ。
頼れるのは、暗視能力(目を慣らした視界)と、
足裏の微細な感覚(気配探知)のみ!
忍者のように腰を落とし、重心を落とした姿勢(ステルス歩行)をとる。
「……そーっと……そーっと……」
右足をミリ単位で滑らせるように前へ出す。
サワッ……。
「知覚……! 2時の方角に4×2ポッチの長方形ブロック!」
指先で素早く摘み取り、回収用のバケツ(バケツ)へ静かに格納。
カチャッ……。
「くっ……音を立ててはダメよ葵……!」
続いて左足を慎重に踏み出す。 だがその瞬間、足の指の間に違和感が!
(な……なに!? このギザギザした立体物は……!?)
「――レゴの『特殊パーツ(ドラゴンの羽)』!!」
鋭利な角が足の甲に刺さる! 激痛に耐えながら、 声を出さずに顔を歪め、
歯を食いしばる!
「くぅぅぅぅ……! 負けない……! 我が家の平和のために……っ!」
激痛に耐えながらの地雷撤去作業。
一個、また一個と、暗闇の中に散らばる凶器たちを拾い集めていく。
赤の基本ブロック、青の屋根パーツ、 そして最も発見が困難な『透明パーツ』まで、
長年の勘と手探りだけで完璧に回収!
作業開始から約20分。
作戦終了時刻、2250(フタフタゴーマル)。
「……ふぅ……地雷撤去、完了……!」
バケツの中には、回収された数十個のレゴブロックが静かに収まっていた。
リビングの床は、再び安全な歩行ゾーンへと復元されたのだ。
私はキッチンにたどり着き、冷えた麦茶を喉に流し込んだ。
誰に褒められることもない、深夜の孤独な特殊ミッション。
足の裏に残る鈍い痛みを抱えながらも、
我が家を事故から守り抜いた司令官の胸には、
深い達成感が満ちていたのだった――。
(第1章 第7話 終わり)
お読みいただき、ありがとうございます。
・・数字の読み方(発音)について
自衛隊における数字の読み方(発音)、陸海空で少し異なるようです
数字という情報は絶対です。正確に伝えなければいけません。
そのため、口頭で伝える際には聞き間違いのないよう発音するのですが、
「2」の発音を海自では「フタ」、陸空では「ニィ」とするようです。
本作品では「フタ」としました
ヒト・フタ・サン・ヨン・ゴー・ロク・ナナ・ハチ・キュウ・マル
これで表記していこうと思います




