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第24話(第2章第11話):最後の試練―『妻の突発的高熱』と単独防衛

作戦開始時刻、水曜日0630(マルロクサンマル)。


朝日が差し込む寝室で、私は強烈な身体の重さと

頭痛によって目を覚ました。


(……な、なにこれ……体が動かない……)


 体温計を脇に挟み、電子音が鳴るのを待つ。

表示された数値は――【38.8℃】。


「な……っ……!」


 我が『朝倉家共同司令部』の最高指揮官(司令官・葵)が、

突発的な高熱によって完全機能停止ダウン

 これまで数々の家庭内の危機をロジックと指揮権で

打開してきた私だったが、物理的な体調不良には勝てなかった。


(ダメ……今日に限ってこんな……

子どもたちの保育園の準備も、朝食も、

夕方の習い事のお迎えも……

全部私が見なきゃいけないのに……!)


 視界がクラクラと揺れ、絶望感が脳裏をよぎる。

その時、寝室のドアが静かに開いた。


「葵?朝だぞー……って、顔が真っ赤じゃないか!?」


起きてきた参謀(夫・ケンタ)が、私の異常に即座に気づき、

駆け寄ってきた。

体温計の数値を見た参謀の顔が引き締まる。


「38.8℃!?すぐに横になってろ!

無理して動いちゃダメだ!」


「で、でも参謀……

今日のスケジュールが……

子どもたちの連絡帳も書かなきゃいけないし、

朝ごはんのパンのストックが……」


 熱で朦朧とする頭でパニックになりかける私。

しかし、私の肩を優しく、しかし力強く叩いたのは、

他でもない参謀の手だった。


「――司令官。指示は不要だ」


「え……?」


 参謀は私の額に冷やしタオルを優しく乗せ、

真っ直ぐな目で私を見つめた。


「今まで俺たちは何のために『家事育児の構造化』

をやってきたと思ってるんだ?

あなたが一人で抱え込むためじゃないだろ。

司令官、本日の全権を俺(参謀)に委譲しろ。

朝倉家共同司令部・単独防衛作戦を開始する!」


 その言葉には、かつて

「家事をお手伝いする兵士」

だった頃の頼りなさは一切なかった。


「……了解……全権を……委譲するわ……」


 私は意識を失うように、深い眠りへと落ちていった。



そして――参謀による『完全単独防衛ミッション』が始まった!

 まずは要人たち(リク5歳長男 & メイ3歳長女)の起床と対応。


「リク、メイ、おはよう。

今日はママがお熱でねんねしてるから、

パパと一緒に頑張るぞ。静かにできるか?」


「うん!ママお熱?お熱かわいそう……」

「メイちゃん、しずかにする!」


子どもたちへの迅速な状況説明(情報共有)と協力要請。

続いて朝食の準備。

時短家電とストック食材をフル活用し、

5分で朝食をセット。

食後は食洗機へ食器をセットし、ロボット掃除機を出撃させる。

保育園の登園準備では、アプリによる連絡帳の記入、

体温測定、着替えのパッキングを完璧なフローで完遂!


0830(マルハチサンマル)。

子どもたちを車に乗せ、無事に保育園へと送り届けた参謀は、

そのまま仕事の調整(有給休暇の取得)を素早く済ませ、

ドラッグストアへ急行。


 解熱鎮痛剤、スポーツドリンク、冷却シート、

消化に良いゼリーやうどん

を大量に補給(物資調達)して帰還した。


1300(ヒトサンマルマル)。

ふと目を覚ますと、枕元に新しい冷やしタオルと、

スポーツドリンク、そして参謀が手書きで残したメモが置かれていた。


作戦状況報告メモ

・子どもたち:無事に登園完了

・病院予約:14時30分に発熱外来を確保(車で送迎します)

・家事:洗濯〜乾燥完了、畳んで収納済み

・夕飯:子ども用はうどん、葵用はおかゆを仕込み中

・司令官は一切の心配不要。休むことに集中されたし!


「……嘘……でしょ……」


メモを見た瞬間、私の目からボロボロと涙がこぼれ落ちた。


 私が何も指示を出さなくても、どこに何があるかを把握し、

何をすべきかを判断し、優先順位をつけて完璧に実行している。


 彼はいまや、私の指示を待つだけの「参謀」ではない。

私がいなくても我が国を完璧に守り抜くことができる、

本物の『共同経営者』になっていたのだ。



1430(ヒトヨンサンマル)。

 参謀の運転で病院へ向かい、診察と薬の処方を終えて帰宅。

夕方には子どもたちを保育園へお迎えに行き、

ご飯を食べさせ、お風呂に入れ、

絵本を読んで寝かしつけるまで――

すべての工程が、何一つ滞ることなく完璧に遂行された。


2100(フタヒトマルマル)。

熱が少し下がり、リビングへ顔を出した私を、

参謀が温かい笑顔で迎えてくれた。


「葵!起きて大丈夫か?おかゆ温めるよ」


ピカピカに片付いたキッチン。静まり返ったリビング。


「……ケンタ……ありがとう……。

私……感動しちゃった……」


「へへっ、どうだ?俺の『単独防衛』。完璧だっただろ?」


参謀は誇らしげに胸を張った。


「……完璧以上よ。

あなたがいてくれて、本当に良かった……」


 妻の危機を夫が完璧な当事者意識で守り抜いたこの日、

我が朝倉家共同司令部は、いかなる困難も乗り越えられる

「最強の絆」を手に入れたのだった――。



(第2章第11話 終わり)

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