第20話(第2章第7話):情報戦(マウント)を打破せよ!『夫の会社・イクメンアピール問題』
作戦開始時刻、平日2130(フタヒトサンマル)。
要人たち(リク5歳長男&メイ3歳長女)が無事に就寝し、
我が『朝倉家共同司令部』に束の間の平穏が訪れていた。
リビングで温かいお茶を飲みながら、参謀(夫・ケンタ)が
満足そうにスマホの画面を眺めている。
「ふぅ……今日も無事に全タスク完了だな。
いやあ、最近俺、かなり家事育児こなせてるんじゃないか?」
「ええ。名もなき家事を含めて完璧だし、
子どものお風呂や寝かしつけも手慣れたものよ。
本当に助かっているわ」
私が素直に称賛を送ると、夫は「だろ?」と鼻を高くし、
得意気に言葉を続けた。
「だよね!実はさ、今日会社の同僚や後輩たちにも話したんだよ。
『俺、最近家事めっちゃ手伝ってるんだよね。
昨日の夜も食器洗って子ども風呂に入れたし』
って。
そしたら後輩女子から
『ケンタさんすごーい!理想の旦那さんですね!』
って絶賛されちゃってさ〜!」
「………………」
夫のその一言を聞いた瞬間、
私の手の中のお茶が一瞬で冷却された。
周囲にドカンと落ちる、見えない冷気(氷点下の空気)。
「……葵……?どうした……?」
異様な殺気を察知した夫が、ピクリと肩を震わせる。
私はゆっくりとお茶のカップをテーブルに置き、
静かに、しかし冷徹な眼差しで夫(参謀)を射抜いた。
「……参謀。今、何と言ったかしら?」
「え……?
『家事めっちゃ手伝ってる』
って……」
「――そこよ」
バン!と軽くテーブルを叩く音。
「『手伝う』……ですって……!?」
「ひっ……!?」
私は立ち上がり、夫に向かって
冷徹なロジック砲(主砲)を全弾発射した!
「いいこと?
あなたはこの朝倉家司令部の『参謀』であり、
家庭経営の『共同事業者』のはずよ!
それなのに
『手伝っている』
という言葉が出るということは、
あなたの中で
『家事・育児の主担当はあくまで妻であり、
自分はそれを手助けしてあげている親切なゲスト』
という甘い認識が根底に残っている証拠よ!」
「ぐ……っ!いや、そんなつもりじゃ……!」
「自分の家の仕事をやって
『手伝っている』
とアピールし、外で
『イクメン』の勲章
をもらって満足するなんて、
我が国の共同参謀としてあるまじき思想的慢心(油断)よ!
自分の会社の仕事をやって
『俺、今日自分の会社の仕事手伝ったんだよね』
って言う人がいるかしら!?」
「い、言いません……!自分の仕事だからです……!」
完全論破。
夫は自身の認識の甘さを突きつけられ、
ぐうの音も出ずに頭を垂れた。
「……すまない、葵。
俺、どこかで調子に乗っていた……。
『手伝う』じゃなく、
俺自身の当然の責任としてやってるのに……」
しょんぼりと肩を落とす夫の姿に、
私は少し表情を緩め、彼の隣に腰掛けた。
「……分かればいいのよ。
あなたが日々どれだけ努力して、
我が国に貢献してくれているかは
私が一番よく知っているわ。
だからこそ、外で安易な
『お手伝いイクメン』
として扱われてほしくないの」
「葵……」
「あなたは『お手伝い兵士』じゃない。
私と対等にこの国を守る
『当事者(共同経営者)』
なのよ」
その言葉に、夫の目に再び力強い光が宿った。
「……そうだな。
俺は『手伝う』んじゃない。
当事者として、葵と一緒にこの家を守るんだ!」
意識の完全覚醒。
夫は「お手伝い参謀」から、
真の「共同経営者」へと
完全なる昇華を果たしたのだった。
「よし!明日会社で
『手伝ってるんじゃない、当事者としてやってるんだ』
って言い直してくる!」
「ふふ、そこまで極端にならなくていいけれど
……期待しているわよ、パートナー」
夜の静けさの中、二人の絆と意識は、
また一つ上のステージへと引き上げられたのだった――。
(第2章第7話終わり)
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