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第16話(第2章第3話):敵は身内にあり! 『義実家の突撃訪問』防衛戦

作戦開始時刻、日曜日午前1100(ヒトヒトマルマル)。


 買い物補給戦(初陣)を見事に完遂し、着々と家事能力を底上げしていた我が

『朝倉家共同司令部』。

しかしこの日、我が国は予期せぬ『外部最大級勢力』の

奇襲を受けることとなった。

ピンポーン!

静かなリビングに突如鳴り響いた、甲高いインターホン音。


「はーい……って、ええっ!?」


インターホンのモニターを確認した参謀(夫・ケンタ)が、驚きで素っ頓狂な声を上げた。

画面に映し出されていたのは、夫の実母――すなわち、我が国における隣国の女帝こと

『義母』の姿であった!


「ケンター! 葵さーん! 近くまで来たから寄ってみたわよー!」


「……な、事前通達一切なしの『突撃訪問(サプライズ急襲)』……!?」


私(葵)の背中に冷や汗が走る。

義母の突撃。

それは、主婦にとって最も恐ろしいイベントの一つだ。

リビングに散らかるおもちゃ、キッチンに置かれた洗ってないコップ、

さらには育児や家事のやり方に対する「チクリとした小言(内政干渉)」――。


「あ、葵! 玄関開けて! 義母さんが来ちゃったよ! どうしよう、部屋片付いてないのに……!」


狼狽ろうばいする参謀。


(……くっ、ここで追い返すわけにもいかない……!


迎撃態勢おもてなしを整える時間すら与えられないなんて……!)

カチャリと玄関の鍵が開けられ、義母が悠々と侵入エントリーしてきた。


「あらぁ〜、急に来てごめんなさいね。リクとメイの顔が見たくてさ…。

…あら? 葵さん、玄関に靴が少し散らかってるわね? ケンタ、ちゃんとお掃除手伝ってるの?」


開口一番、鋭い検分チェックの眼光を光らせる義母!

リビングへ通された義母は、ソファに腰掛けつつ、お部屋の隅々へ目線を

走らせる。


「あら、このテレビの裏、少しホコリが溜まってるんじゃない?


葵さん、二人のお世話で大変だから手が回らないのかしら?

ケンタ、男は外で仕事だけじゃなくて、もっと家を支えてあげなきゃ……」

遠回しながらも、我が国の内政に対する小言(干渉)が開始された!

いつもなら、私が「すみません、行き届いていなくて……」と苦笑いで耐え忍び、

夫は「まあまあ」と事無かれ主義で静観する場面。

しかし! 覚醒した参謀(夫・ケンタ)は違った!

バシッ!!


「――母さん! そこまでだ!」


参謀が毅然とした態度で、私と義母の間に割って入った(防御陣形展開)!


「な、なに? ケンタ……?」


驚く義母。


「我が家の掃除も育児も、葵と俺で二人で役割分担して計画的にやってるんだ!

今テレビ裏のホコリを言ったけど、それは今日午後から俺が掃除機をかける予定の

エリアなんだよ!」


「え……ケンタが掃除を……?」


「それだけじゃない!

葵は毎日、俺には想像もつかないような細やかな家事(名もなき家事)

を完璧に回してくれてるんだ。

玄関の靴だって、子どもたちが今さっき帰ってきたばかりだからだよ。

葵の家事や育児に、母さんが口を出す必要はない!」


毅然とした声。一切の揺らぎもない強い眼差し。


「我が国の内政に、外から勝手に介入しないでくれ!!」


リビングに静寂が訪れる。


(……さ……参謀……!!)


私の胸に、熱い衝撃が走った。

かつては実母の言葉にヘラヘラと笑って受け流すだけだった夫が、

今や妻の盾となり、自国の防衛線となって親からの内政干渉を

完璧に弾き返したのだ!


 義母は呆気にとられたように目を丸くしていたが、やがてふっと表情を緩めた。


「……あら……。ケンタがそんな風にハッキリ葵さんを庇うなんてね……。

……ごめんなさいね、葵さん。私、つい昔の感覚で余計な口を出してしまったわ」


「い、いいえ、お義母様……! お心遣いありがとうございます」


「ケンタがこんなにしっかり『当事者』として家事や家族に向き合っているなら、

私が心配することなんて何もなかったわね。……ふふ、良い夫婦になったわね」


義母の検分モードが解除され、柔らかな笑みが戻った。

その後、義母は買ってきたお菓子を要人たち(子どもたち)に渡し、楽しくおしゃべりをした後、


「また連絡してから来るわね」


と満足そうに帰路についたのだった。


1500(ヒトゴーマルマル)。

嵐が去った後のリビング。


「……見事な防衛戦だったわ、参謀」


私は今日一番の感謝を込めて、夫に淹れたてのコーヒーを差し出した。


「ふっ……当たり前だろ。俺は朝倉家共同司令部の参謀だからな。

君を一人で戦わせたり、理不尽な攻撃に晒したりさせないよ」


コーヒーを一口すする夫の横顔は、実に頼もしく、格好良かった。

義実家の急襲をも跳ね返す、揺るぎない夫婦のチームワーク。

朝倉家共同司令部は、また一つ大きな成長を遂げたのだった――。



(第2章 第3話 終わり)

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