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第12話:決戦! 家族全員インフルエンザ同時発症

作戦開始時刻、冬某日午前0600(マルロクマルマル)。


 我が『朝倉家司令部』を、 過去最大級のパンデミック

(アウトブレイク)が襲撃した。


 前夜から異変を訴えていた要人二人(5歳長男&3歳長女)に続き、


「あ、頭が割れるように痛い……」


と呻き声を上げたのは、我が軍の副官(夫)。


 体温計の警告音が、リビングと寝室で鳴り響く。


『38.8℃』 『39.1℃』 『38.5℃』


全ライン、壊滅(全滅)――!


「……家族全員、インフルエンザA型同時発症を確認……!」


 防衛線は一瞬にして崩壊した。

普段は威勢のいい副官も、元気いっぱいの要人たちも、

高熱にうなされて布団の中で虫の息となっている。


 そう、我が国において動ける人間は、 奇跡的に無症状(陰性)を保っている私―

―司令官ただ一人!


「……孤立無援。だが、全前線をたった一人で死守(維持)する!」


 自分まで倒れれば、我が国は完全に機能停止(崩壊)する。

私はマスクを二重に装着し、アルコールスプレーを腰のホルスターに装着。

一人きりの孤独な『野戦病院・前線維持作戦』が始まった!



 第一ミッション――『物資(兵糧・水分)の分配』!

高熱にうなされる患者たちに必要なのは、徹底した水分補給と栄養摂取だ。

私はキッチンでポカリスエットを大量に召喚(希釈)し、 冷やすタイプと

常温タイプを交互に配給。

さらに消化の良い特製のお粥(兵糧)を炊き上げ、各ベッドへ巡回配給ラウンド


「あおい……ごめん……俺、なんにもできなくて……」


弱り切った副官が、うわごとのように呟く。


「喋らないで副官! 体力を温存し、ウイルスとの戦闘に集中しなさい!」



 第二ミッション――『氷嚢アイシングと服薬コントロール』!

解熱剤、タミフル、咳止め、鼻水留め――。

3人分の処方薬の服用時間と用法を、ノートへミリ単位で記録トラッキング


「リクは熱冷ましを服薬、メイは粉薬をアイスに混ぜて投与、

副官は食後にカプセルを3錠……!」


一人でも投薬タイミングを間違えれば症状が悪化する。

まるでICU(集中治療室)の看護師のような精密さで、薬の投薬管理を実行していく。

だが、本当の地獄はここからだった。


 全員が高熱で機嫌が悪く、うわごとを繰り返しながら夜通し吐き気や悪寒を訴える。


「ママ、お水ー……」 「ママ、寒いよー……」 「アオイ……吐き気が……」


「了解したわ! 直ちに向かう!」


あっちで嘔吐の処理をすれば、こっちで氷嚢の交換。

洗面所と寝室を何百往復したか分からない。

睡眠時間はゼロ。

自身の体温を何度も測定し、

「頼むから熱よ出ないでくれ」と 祈るような気持ちでアルコール消毒を全身に噴霧し続ける。


「……負けない……! 司令官が倒れたら、この家は誰が守るというの……!?」


極限状態の集中力ゾーンに入った私は、 眠気も疲労も超越した

パフォーマンスで3人の病人を完璧に看護し続けた。


作戦開始から48時間後。

投薬と懸命な看護が功を奏し、 要人たちと副官の熱が、少しずつ下がり始めた。


「……ママ……お腹すいた……」


長男が、久しぶりに自分の足で起きてきて、小さな声でそう言った。


「……! 了解したわ要人。すぐに温かいおうどんを作るわね」


熱が下がり、穏やかな表情を取り戻した家族の姿を見て、 私の緊張の糸がふっと緩んだ。

全員罹患という絶体絶命の危機。 誰も代わりのいない極限の戦いを、一人で走り抜いたのだ。

自分の手を見つめると、頻繁な手洗いと消毒でカサカサに荒れていた。


「……ふふっ。今回も我が国の防衛に成功したわね」


 ボロボロになりながらも、一人で前線を死守し切った司令官の胸には、

孤高の勝利の誇りが満ちあふれていたのだった――。



(第1章 第12話 終わり)

お読みいただき、ありがとうございます。

今回は、家庭内で最も恐ろしい事件の一つである

「自分以外の家族全員が同時に感染症で全滅する」

という大ピンチです。

 自分だけは絶対に倒れられないという極限の緊張感の中、

看病・家事・投薬管理をたった一人でこなす孤独な奮闘。

共感する方がいらっしゃるシチュエーションではないでしょうか


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