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冥府令嬢の天秤1〜三途の川からお嬢様女子大生へ!冥界エリートの華麗なる事件簿〜  作者: たくみふじ
第二章 キャンパスに潜む罪のにおい

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お嬢様たちのマウント合戦と圧倒的論破㈡

三途の川の『奪衣婆だつえば』、現世では可憐なお嬢様女子大生!?

「あなたの肌は今、過度なストレスと、他者を妬むという負の感情から来る内臓疲労によって、極端に黄ばんでくすんでいます。肝機能が低下している証拠ですわ。その土台にブルーベースのローズピンクを乗せれば、肌のくすみがより強調され、まるで泥水を被ったかのような薄汚い顔色になります。さらに……」


 エバは一歩、香々美へと近づき、彼女の顔を冷徹に覗き込んだ。


「あなたは幼い頃から、常に私や周囲の目を気にして、愛想笑いばかりを繰り返してきたのでしょう。その結果、あなたの顎の筋肉、咬筋(こうきん)が異常に発達し、噛み合わせが致命的に歪んでしまっています。笑うたびに右の口角だけが不自然に吊り上がり、あなたの内面に巣くう『狡猾さ』と『卑屈さ』をこれ以上ないほど雄弁に語ってしまっていますわ。そのような歪んだ顔で私に説教をするなど、美しさの欠片もなく、滑稽を通り越して哀れですらあります」


「な、何を……! 私の顔が歪んでいるですって!? この、小娘が!」


 香々美は顔を真っ赤、いや、エバの指摘通り泥水のようなドス黒い色に染め上げて激昂(げきこう)したが、周囲の令嬢たちが、香々美の口元をヒソヒソと見ながら囁き合っているのに気づき、ハッとして口元を手で隠した。エバの指摘は、あまりにも医学的で、そして残酷なまでに的確であったのだ。


「そして、忌部会長」


 エバの刃は、休むことなく次なる標的へと向けられた。


「あなたはご自分の権力と美貌に絶対の自信をお持ちのようですが、私の目から見れば、それは今にも崩れ落ちそうな砂上の楼閣(ろうかく)に過ぎませんわ」


「黙りなさい! 私に向かってそのような口が……!」


「あなたのその分厚い高級なファンデーション。それは、権力への執着と、他者を蹴落とすことによる慢性的な睡眠不足から来る、深刻な肌の炎症と吹き出物を隠すための苦肉の策ですね。塗れば塗るほど、あなたの毛穴は呼吸を止められ、肌は腐死(くされじに)していく。しかし、それ以上に問題なのは、あなたのその『姿勢』です」


 エバは、カウチソファに座る薫子の姿勢を、まるで標本を観察するように冷ややかに指差した。


「あなたは常に他人を見下そうとするあまり、顎が上がり、頸椎(けいつい)が不自然に前へと反り繰り返っています。その結果、首の後ろに余分な脂肪がつき、ストレートネックを引き起こしている。権力という重い鎧を着込んで威張っているように見えますが、骨格という人体の根本的な構造から見れば、あなたは自らの重みに耐えきれず、常に悲鳴を上げている非常に脆弱で不安定な状態なのですわ」


 薫子は、エバの言葉に図星を突かれたのか、思わず自分の首の後ろを手で押さえた。


「真の美しさとは、絶対的な調和と、内面から滲み出る揺るぎない自信から生まれるものです。あなた方のように、他者への嫉妬や、権力という名の虚飾で塗り固められた姿は、私の目には、三途の川で服を剥ぎ取られ、醜い罪の形を露わにして震える亡者たちよりも、はるかに見苦しく、そして醜悪に映りますわ」


 エバの言葉は、大広間に静かに、しかし絶対的な重さを持って響き渡った。

 天使養成校で徹底的に学んだ「完璧なる美の体現」という至高の概念と、奪衣婆として何万もの人間の肉体と魂を観察してきた圧倒的な知識。それらを武器に放たれるエバの言葉は、単なる悪口やマウントなどではない。相手の存在そのものを、物理的にも精神的にも完全に解体し、否定する「裁き」そのものであった。


「……っ! あなた、自分が何を言っているのか分かっているの!? 忌部家を、そして朱鳥会を敵に回して、ただで済むとでも思っているの!?」


 薫子が、もはや令嬢としての品格などかなぐり捨て、ヒステリックな声を上げて立ち上がった。しかし、その顔は恐怖と屈辱で引き攣り、自慢のドレスも、今や彼女の醜さを際立たせる痛々しい布切れにしか見えなかった。


「ええ、重々承知しておりますわ。むしろ、望むところです」


 エバは一切の感情を排した、氷河のように冷徹な瞳で薫子を見据えた。


「あなた方が束になってかかってこようと、私のこの『天秤』を揺るがすことなど絶対にできません。自らの醜い欲望に溺れ、他者の命や尊厳を平然と踏みにじる者には、必ずそれに相応しい報いが訪れる。……そのことを、どうかお忘れなきよう」

 エバがそう言って静かに微笑むと、周囲の空気が、物理的に数度下がったかのような凄まじい錯覚を全員が覚えた。

 エバの背後に、漆黒の外套に身を包んだ死神の影が、あるいは地獄の業火が燃え盛る幻影が見えたような気がして、薫子も香々美も、そして周囲の令嬢たちも、一歩たりとも動くことができず、ただ恐怖に顔を引き攣らせて息を呑むことしかできなかった。

 彼女たちの魂の衣は、すでにエバの言葉によって完全に剥ぎ取られ、その醜く重い罪の形を白日の下に晒されていたのである。


「本日のティーパーティー、大変有意義な時間でしたわ。ですが、出された紅茶の茶葉が古く、お湯の温度も低すぎて香りが完全に飛んでおりました。人を招くのであれば、もう少し基礎的な教養を身につけられることをお勧めいたします」


 エバは最後に、完璧なカーテシー(膝折礼)で優雅に一礼すると、声もなく震える令嬢たちを一瞥することなく、きびきびとした足取りで迎賓館を後にした。


 外に出ると、夕暮れの冷たい風が、エバの火照った頬を撫でた。

 見事なまでの圧倒的論破であった。忌部薫子と小嶽香々美のプライドは完全に粉砕され、二度とエバの前に立ちはだかることはできないだろう。しかし、エバの心は決して晴れやかではなかった。


(香々美の嫉妬と、薫子の傲慢。彼女たちの魂は確かに醜く、黒く淀んでいた。……でも、彼女たちが私を屋上から突き落とした真犯人かと言われれば、まだピースが足りないわ)


 エバは、迎賓館の重厚な扉を振り返り、鋭く目を細めた。

 あの二人には、自らの手を下してまで殺人を犯すほどの「胆力(たんりょく)」がない。彼女たちの罪は、あくまで見栄と虚栄心を満たすための、浅薄なマウントに過ぎないのだ。

 しかし、彼女たちが盲信している「朱鳥会」という組織。そして、その背後にいる学長の忌部義人や、菱倉家の財産を狙う勉叔父の存在。


(キャンパスに潜む罪のにおいは、もっと深く、もっと底知れぬ悪意に繋がっている。彼女たちは、巨大な悪意に踊らされている哀れな操り人形に過ぎないのかもしれないわね)


 エバは鞄の中から、スマートフォンという人間界の不可思議なアイテムを取り出し、油江颯の連絡先を画面に表示させた。

 彼女が人間界に降り立ってから、まだほんの数日。しかし、冥界のエリート奪衣婆の華麗なる事件簿は、単なる女子大生のマウント合戦を超え、大学と財閥の闇に潜む巨大な「強欲」の正体へと、着実に迫りつつあった。


「さあ、油江教授。あなたがどれほど有益な『情報』を提供してくれるのか、お手並み拝見と行かせていただきますわよ」


 エバは美しい唇に不敵な笑みを浮かべ、夕闇に包まれ始めたキャンパスを、黒塗りベンツの待つ正門へと向かって悠然と歩き出した。

X(Twitter)でも連載しています。

https://x.com/TakumiFuji2025

魅力的なキャラクターたちが躍動する物語をお楽しみください。

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