第38話:開かれた眼
空の奥。
亀裂の向こう側で。
“目”が開く。
巨大だった。
空そのものより、さらに大きい。
なのに。
誰も全体を認識できない。
見た瞬間。
脳が理解を拒絶する。
クロエが膝をついた。
「――っぁ……!」
頭痛。
視界ノイズ。
世界が何重にもズレる。
セレナも顔をしかめた。
「視認だけで……!」
エルの輪郭が激しく乱れる。
「認識汚染、発生」
「観測限界、超過」
ノクスが舌打ちする。
「見んな!! 意識持ってかれるぞ!」
だが。
遅い。
“目”は、既にこちらを見ていた。
その瞬間。
世界中へノイズが走る。
空。
海。
都市。
全ての境界が、一瞬だけ曖昧になる。
クロエの脳裏へ、知らない景色が流れ込む。
赤い空。
崩壊した月。
誰もいない街。
無数の“終わった世界”。
ノイズ。
叫び。
静寂。
クロエが叫ぶ。
「うるせぇ……!!」
黒い羽が、強制的に広がる。
観測ノイズが周囲へ噴き出した。
その時。
ノクティスがゆっくり手を上げる。
白い観測線。
空へ伸びる。
そして。
初めて。
“目”が、ノクティスを見る。
沈黙。
空気が凍る。
ノクスが目を細めた。
「……おい」
セレナも気づく。
「まさか」
ノクティスは静かに空を見上げたまま呟く。
「……まだ、こちらを覚えていたか」
クロエの呼吸が止まる。
「……は?」
その瞬間。
“目”の周囲に、巨大な波紋が広がった。
まるで。
反応した。
認識した。
そんな感じだった。
エルの瞳が揺れる。
「接続反応……?」
ノクティスが低く告げる。
「下がれ」
今までで、最も強い命令だった。
クロエ達が動くより早く。
“目”が、瞬きをする。
次の瞬間。
世界が消えた。
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