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黒翼契約譚《レイヴン・クロニクル》 ~終わりを選び、未来を奪い返せ~  作者:
第三章:観測外領域 ― 選択の代償

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第33話:こちら側へ来るもの

空が、軋む。


高次観測体。


その輪郭が、少しずつ定まっていく。


ノイズの塊だった存在が。


“人型”へ近づいていた。


頭部。


腕。


脚。


まだ曖昧だ。


だが。


確実に、こちら側へ適応している。


ノクスが顔をしかめる。


「最悪だな」


セレナ。


「適応しているのか……?」


ノクティスの観測線が、空間を覆う。


銀の光。


だが。


高次観測体は、それを“理解”していく。


観測線の動き。


空間固定。


座標制御。


全てを。


学習していた。


ノクティスの瞳が、初めて僅かに鋭くなる。


「……早い」


次の瞬間。


高次観測体が、腕を振る。


それだけ。


それだけで。


ノクティスの観測線が、一斉に断裂する。


轟音。


世界が揺れる。


クロエが目を見開く。


「嘘だろ……」


ノクティスが、後ろへ滑る。


初めて。


監視者が、押し返された。


ノクスが低く呟く。


「コピーしてやがる」


エルが反応する。


ノイズ混じりの声。


「観測学習能力、確認」


「接触時間に比例して、適応速度上昇」


クロエ。


「つまり!?」


エル。


「長引くほど不利」


沈黙。


クロエが、乾いた笑みを浮かべる。


「毎回それだな、おい」


その時。


高次観測体の顔が、ゆっくりこちらを向く。


まだ曖昧。


だが。


その輪郭が、ほんの少しだけ。


“エル”に似ていた。


クロエの表情が固まる。


「……は?」


セレナも息を呑む。


ノクティスの瞳が細まる。


「模倣を始めたか」


高次観測体の口が動く。


ぎこちない。


壊れた音声みたいに。


「――観測」


ノイズ。


「継続」


クロエが舌打ちする。


「エルの声使ってんじゃねぇ!!」


黒い羽が広がる。


クロエが飛び出す。


セレナ。


「待て!」


遅い。


クロエは加速する。


一直線。


拳を振るう。


だが。


高次観測体は避けない。


クロエの拳が、“触れた”。


その瞬間。


世界が反転する。


クロエの視界が、真っ白に染まる。


声が響く。


無数に。


重なって。


知らないはずなのに。


どこか、聞き覚えがある。


崩壊した街。


赤い月。


黒翼。


動かない誰か。


ノイズ。


別の空。


別の結末。


別の選択。


クロエの瞳が揺れる。


「……なんだ、これ」


そして。


白い世界の奥で。


巨大な瞳だけが、静かにこちらを見ていた。

読んでいただきありがとうございます!


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引き続き「レイヴンクロニクル」をよろしくお願いします!

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