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黒翼契約譚《レイヴン・クロニクル》 ~終わりを選び、未来を奪い返せ~  作者:
第三章:観測外領域 ― 選択の代償

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第32話:観測の外へ

ノイズが、揺れる。


エルの瞳。


その奥で。


確かに、“本人”がこちらを見ていた。


クロエの呼吸が止まる。


「……エル」


エルの指が、微かに動く。


掴み返す力。


弱い。


だが。


確実だった。


その瞬間。


巨大な瞳が、空で大きく脈動する。


世界全体が軋む。


ノクティスが即座に反応する。


「来る」


次の瞬間。


空間が裂ける。


黒でも白でもない、“何か”が落ちてくる。


形が定まらない。


人にも。


獣にも。


世界そのものにも見える。


ただ。


“観測の外側”。


それだけは分かった。


セレナが羽を広げる。


「総員、下がれ!」


白い光が展開される。


だが。


触れた瞬間。


障壁が、音もなく消滅する。


セレナの目が見開く。


「……なっ」


ノクスが笑みを消す。


「冗談だろ」


その存在は、ゆっくりこちらを見る。


視線だけで。


世界の法則が、ズレる。


地面が浮く。


瓦礫が逆再生する。


崩れたビルが、一瞬だけ元に戻る。


クロエが歯を食いしばる。


「なんだよ……コイツ」


エルが苦しそうに呟く。


「高次観測体」


ノイズ。


「世界修正権限、保有」


クロエ。


「は?」


ノクティスが静かに前へ出る。


銀の観測線が、空間へ走る。


「下がっていろ」


その声だけで、空気が変わる。


初めて。


ノクティスが、“監視者”として立っていた。


高次観測体が、ノクティスを見る。


一瞬。


空間が停止する。


ノクスが低く呟く。


「……始まるぞ」


次の瞬間。


空が、砕けた。


衝撃。


銀と黒のノイズが、世界中へ走る。


クロエは、エルを抱えながら後退する。


その腕の中で。


エルが、小さく目を開ける。


まだ不安定だ。


ノイズも消えていない。


それでも。


ほんの少しだけ、笑った。


「……まだ」


途切れる声。


クロエが顔を近づける。


エル。


「終わって、ない」


その瞬間。


前方で、凄まじい衝突音。


ノクティスの観測線が、初めて押し返される。


セレナが息を呑む。


「押されている……!?」


ノクスが舌打ちする。


「チッ……さすが外側だ」


そして。


高次観測体の輪郭が、ゆっくり“人型”へ近づいていく。


まるで。


こちら側へ、適応し始めるみたいに。

読んでいただきありがとうございます!


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引き続き「レイヴンクロニクル」をよろしくお願いします!

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