第26話:外側からの干渉
止まった。
ほんの一瞬。
世界そのものが、息を止めたみたいに。
レグルスの固定空間。
そこへ。
“外側”のノイズが混ざる。
白い世界に、黒でもない、灰色の亀裂。
レグルスの瞳が揺れる。
「……干渉確認」
初めて。
その声に、明確な乱れが混ざった。
クロエが空を見上げる。
白銀の梟。
その羽が、静かに広がっている。
セレナが低く呟く。
「ノクティス……」
次の瞬間。
梟の輪郭が、ゆっくり崩れる。
羽。
光。
ノイズ。
そして。
“人”の姿が現れる。
長い銀髪。
白を基調にした外套。
静かな瞳。
冷たいほど整った輪郭。
ノクティス。
クロエが目を見開く。
「……は?」
ノクスが、面倒そうに笑う。
「やっと出てきたか」
ノクティスは答えない。
ただ。
レグルスを見ている。
その視線だけで、空間が軋む。
レグルスが言う。
「監視個体」
ノクティスが静かに返す。
「旧式固定システム」
感情が、ほとんど乗っていない声だった。
クロエが顔をしかめる。
「知り合いかよ……」
エルが解析を続ける。
「観測一致率上昇」
「ノクティス――」
ノイズ。
「秩序側監視個体」
クロエが固まる。
「は?」
視線が、ノクスへ向く。
黒。
終焉。
そして。
ノクティスへ。
白。
秩序。
セレナが小さく呟く。
「……対になっているのか」
ノクスが笑う。
「元は一緒だけどな」
空気が止まる。
クロエ。
「……は???」
ノクティスが、ようやく視線を向ける。
静かな瞳。
だが。
その奥には、底の見えない何かがある。
「分離は必要だった」
「終焉だけでは、世界は崩壊する」
「秩序だけでは、世界は停止する」
ノクスが続ける。
「だから半分ずつ持った」
クロエが頭を押さえる。
「待て待て待て」
「情報量!!」
その瞬間。
レグルスの固定空間が、再び拡大する。
「……排除対象増加」
白い固定が、ノクティスへ向かう。
だが。
ノクティスは動かない。
ただ。
指先を、わずかに動かす。
次の瞬間。
固定空間が、“観測できなくなる”。
クロエが息を呑む。
「……消えた?」
エルが即座に否定する。
「違う」
「座標認識そのものを、外側へ逸らしている」
レグルスの瞳が揺れる。
「……観測外処理」
ノクティスが静かに言う。
「お前は内側に偏りすぎた」
「だから止まる」
その瞬間。
世界全体が、大きく揺らぐ。
空。
街。
境界。
全部が軋む。
エルのノイズが、急激に強くなる。
「警告」
「観測限界接近」
クロエが叫ぶ。
「だから何が起きるんだよ!」
沈黙。
そして。
ノクティスが、初めてクロエを見る。
静かな瞳。
冷たいほど落ち着いた声。
「境界が消える」
その瞬間。
空が、完全に割れた。
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