第25話:終焉は止まらない
衝撃が、世界を裂く。
黒い羽。
白い固定空間。
ぶつかるたびに、街の輪郭が崩れていく。
クロエが目を見開く。
「うわっ……!」
空間そのものが、軋んでいた。
レグルスの固定。
ノクスの終焉。
相反する力が、世界を引き裂いている。
セレナが低く言う。
「このままでは保たない」
エルが解析する。
「崩壊速度、増加」
「固定領域と未確定領域の衝突を確認」
クロエが顔をしかめる。
「つまり?」
エル。
「どちらかが先に壊れる」
沈黙。
クロエが乾いた笑みを浮かべる。
「毎回それだな……」
その瞬間。
レグルスの固定陣が、さらに拡大する。
空が止まる。
崩壊しかけたビルが、途中で静止する。
瓦礫も。
風も。
時間さえ。
レグルスが静かに言う。
「終焉は、不要だ」
「変化は、不要だ」
「停止こそ完全」
ノクスが笑う。
「だからお前、つまらないんだよ」
次の瞬間。
ノクスの背後に、巨大な鴉の影が広がる。
世界を覆うほどの、黒。
クロエが息を呑む。
「……なんだ、アレ」
セレナが目を細める。
「終焉そのものを、投影している……?」
ノクスが片手を上げる。
その瞬間。
停止していた瓦礫が、一斉に崩れ落ちる。
固定が破壊される。
レグルスの瞳が揺れる。
「……なぜ干渉可能だ」
ノクス。
「終わるものを、止められるわけないだろ」
衝突。
黒いノイズが、固定空間を侵食する。
ヒビ。
亀裂。
崩壊。
レグルスが、初めて明確に後退する。
クロエが叫ぶ。
「押してる!!」
だが。
その直後。
エルのノイズが、急激に増大する。
「警告」
「終焉観測の加速を確認」
ノクスが、わずかに眉をひそめる。
エル。
「現在、世界崩壊率――」
ノイズ。
「限界値接近」
クロエの表情が変わる。
「は?」
セレナが察する。
「……押し切っても、世界が耐えられないのか」
沈黙。
ノクスが小さく舌打ちする。
「面倒な構造してんな」
レグルスが、ゆっくり顔を上げる。
その瞳に、再び静かな光が戻る。
「理解した」
クロエが顔をしかめる。
「今度は何だよ」
レグルス。
「終焉もまた、破滅へ至る」
「故に」
空間が、静止する。
今までとは違う。
もっと深い。
“世界そのもの”へ触れる固定。
エルの声が揺れる。
「……危険」
「高次固定反応――」
その瞬間。
遠くの空。
白銀の梟が、初めて羽を広げる。
ノクティス。
静かな瞳。
だが。
その視線だけが、鋭くレグルスを見ていた。
そして。
空間の奥から、声が落ちる。
「そこまでか」
世界が、一瞬止まる。
クロエが目を見開く。
「……え」
次の瞬間。
レグルスの固定空間に、初めて“外側”からノイズが混ざった。
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