第24話:観測者の外側
崩壊が、広がっていた。
空が割れる。
街がノイズになる。
固定された世界と、未確定の世界。
その境界が、完全に混ざり始めていた。
クロエが息を吐く。
「……派手に壊れてんなぁ」
ノクスが笑う。
「お前らが無茶した結果だろ」
クロエが睨む。
「手伝えよ!」
「見てただけじゃねぇか!」
ノクスは肩をすくめる。
「観測ってのは、簡単に触るもんじゃない」
その視線が、レグルスへ向く。
「特にな」
レグルスは動かない。
だが。
その周囲では、固定空間が激しく揺らいでいる。
ノイズ。
断裂。
矛盾。
レグルスの声が響く。
「……排除」
「観測外要素を確認」
ノクスが笑う。
「今さらかよ」
次の瞬間。
レグルスの周囲に、巨大な固定陣が展開される。
空間そのものが、停止し始める。
クロエが反応する。
「また来る!」
セレナが羽を広げる。
白と黒。
揺らぐ境界。
だが。
レグルスの固定は、以前より不安定だ。
エルが解析する。
「固定演算、破綻率上昇」
「現在、制御不能領域――」
ノイズ。
「拡大中」
その時。
ノクスが前へ出る。
クロエが目を見開く。
「お前、戦うのか?」
ノクスは、少しだけ笑う。
「あいつ、勘違いしてるからな」
黒いノイズが、足元から広がる。
まるで、世界のヒビと共鳴するみたいに。
レグルスが反応する。
「……終焉観測体」
空気が変わる。
クロエが呟く。
「終焉……?」
ノクスは振り返らない。
ただ。
静かに言う。
「止まるってのはな」
「終わる事と同じだ」
その瞬間。
ノクスの周囲で、黒い羽が舞う。
鴉の影。
ノイズ。
崩壊。
まるで、世界の“終わり”そのもの。
セレナが目を細める。
「……やはり」
エルが続ける。
「観測分類更新」
「ノクス――」
一瞬、処理が乱れる。
「終焉側監視個体」
クロエが顔をしかめる。
「いや説明!!」
ノクスが笑う。
「後でな」
次の瞬間。
レグルスが動く。
固定空間が、一気に圧縮される。
街が止まる。
風が止まる。
音が消える。
だが。
ノクスだけが、止まらない。
黒い羽が、停止した空間を切り裂く。
レグルスの瞳が揺れる。
「……なぜ」
ノクスが笑う。
少しだけ。
寂しそうに。
「終わりは、止まってくれないからだよ」
衝突。
黒と白。
固定と終焉。
その瞬間。
世界全体に、巨大な亀裂が走った。
遠く。
崩れた高層ビルの上。
白銀の梟が、静かにそれを見下ろしている。
ノクティス。
その瞳だけが、僅かに揺れた。
「……加速したか」
誰にも届かない声。
だが。
世界は、確実に終わりへ近づいていた。
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