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黒翼契約譚《レイヴン・クロニクル》 ~終わりを選び、未来を奪い返せ~  作者:
第三章:観測外領域 ― 選択の代償

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第4話:境界の外から来たもの

揺らぎが、静かに集まる。

風でもない。光でもない。

ただ――“形になる前の何か”。


クロエが目を細める。

「……来る」


セレナが構える。だが、その動きはわずかに遅い。


エルが解析する。

「対象――未定義」

「既知パターンとの一致率――低」


揺らぎが、収束する。


そこに――少女が立っていた。


薄い。だが、消えない。


「……久しぶり」


軽い声。変わらない調子。


クロエが息を吐く。

「ほんとにね」


セレナが低く問う。

「お前は、何だ」


少女は少し考える。


「……まだ、それ聞く?」


困ったように笑う。


エルが即座に割り込む。

「識別名:イブ」

「分類――不明」


イブが、そちらを見る。


「うん、それでいいよ」


あっさりと肯定する。


クロエが一歩前に出る。

「で、今回は何しに来たの」


イブは少しだけ首を傾ける。


「……見に来た」


視線が、三人を順に辿る。


「ちゃんと、“選んでるか”」


沈黙。


セレナが言う。

「選んでいる」


イブが頷く。

「うん、知ってる」


その言葉に、わずかな違和感が走る。


クロエが眉をひそめる。

「……知ってる?」


イブが笑う。


「だって、それ」


指をクロエに向ける。


「私が“置いた”やつだし」


空気が止まる。


エルが即座に反応する。

「発言の意味を要求」


イブは少しだけ考える。


「うーん……」


言葉を選ぶように。


「“きっかけ”かな」


クロエの胸に、あの“感覚”がよぎる。


それを指している。


「最初の一個」


セレナが低く言う。

「……誘導したのか」


イブは首を振る。


「違うよ」


少しだけ真面目な顔になる。


「“選べるようにした”だけ」


沈黙。


エルが解析する。

「外部介入により、選択分岐の可視化・顕在化を実施した可能性」


クロエが呟く。

「……つまり」


イブを見る。


「この世界、元からこうじゃなかった?」


イブが、ゆっくり頷く。


「うん」


「見えてなかっただけ」


風が揺れる。


セレナが問う。

「では、お前は何だ」


イブは空を見る。


何もない場所。


「……外」


短い答え。


クロエが苦笑する。

「雑だなぁ」


イブも笑う。


「でも、それしかない」


一歩、近づく。


「“観測されてない側”」


その言葉に、空間がわずかに軋む。


エルが即座に反応する。

「定義不能領域との接続を確認」


セレナが低く言う。

「……観測外の、更に外か」


イブは軽く肩をすくめる。


「そんな感じ」


クロエが目を細める。


「で?」


一歩、近づく。


「代償も、知ってるよね」


イブが止まる。


ほんの一瞬だけ。


その表情が揺れる。


「……うん」


小さく頷く。


クロエが続ける。


「これ、どこまでいくの?」


沈黙。


イブはすぐには答えない。


代わりにクロエの目を見る。


まっすぐに。


「どこまで“選ぶか”だよ」


その一言は軽く、そして重い。


セレナが言う。

「限界はないのか」


イブは少しだけ笑う。


「あるよ」


そして。


「なくなる」


沈黙。


エルが処理を止める。

「……意味不明」


イブが視線を逸らす。


「全部、選びきったら」


空を見る。


「“残り”がなくなるから」


クロエが呟く。

「……未選択が、消える?」


イブは首を振る。


「逆」


一瞬、空間が深く歪む。


「“選んだ側”が、消える」


静寂。


風が止まる。


セレナがわずかに動く。

「……どういうことだ」


イブは答えない。


ただ、少しだけ寂しそうに笑う。


「だから、ちゃんと選んでね」


クロエを見る。


「適当にやると、先に消えるよ」


その瞬間、輪郭が揺らぎ始める。


エルが反応する。

「存在密度、低下」


セレナが言う。

「また戻るのか」


イブが頷く。


「うん」


少しだけ名残惜しそうに。


「まだ、早いし」


クロエが小さく笑う。

「何が」


イブが答える。


「“終わるのが”」


その言葉を残して、消える。


何も残らない。


だが――空間の奥に、さらに深い揺らぎが残る。


クロエが静かに言う。


「……ヤバいね、これ」


セレナが頷く。

「ああ」


エルが記録する。

「消失リスク、確認」


クロエが空を見る。


歪んだ世界。まだ選べる世界。


だが、その先には――“選びすぎた先”がある。


クロエが小さく笑う。


「面白いじゃん」


その言葉は、ほんの少しだけ強がりだった。

読んでいただきありがとうございます!


少しでも面白いと思っていただけたら、

ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです!

引き続き「レイヴンクロニクル」をよろしくお願いします!

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